第2話 吾輩と画家

 吾輩は猫である


「淡黄色に黒い斑入りの皮膚を持つ猫である。この家の主人が吾輩の主だ。主人はいつも吾輩を構ってくれる。毛を梳いてくれるわ飯をくれるわ、甲斐甲斐しく世話を焼いてくれるのだ。


 その代わり、吾輩は屡々モデルというものをせねばならぬ。主人は画家を生業としている故、常に絵を書かねばならぬ宿命だからだ。これは大層大義なもので、主人が鉛筆を動かしている最中は身動き一つ取れぬ。欠伸一つ許されぬ。しかし、吾輩の面倒を見てくれるのだから、多少窮屈さを感じていても、我慢せねばなるまい。


 吾輩が此処に居着いてかれこれ一年近く経つ。何故だか理由は分からぬが」


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