赤子・幼女編

第6話 魔女疑惑~えっ? 前世ですか?~

 ごくごくごく。 ぷはーっ。


 水袋の革臭さが気にならない位、喉ごしが最高だぜ!

 喉が渇き過ぎてて、味が分からないけど。


「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ。 毒抜きした魔物の血で、正解だった様なのじゃ」


 ぶふぉっ。

 このトロッとした喉ごしって、血だったのかよ!


「ふぅん。 その反応は、やっぱり言語を理解しておる様じゃのう。 じゃが安心するのじゃ。 もともと乳は、血をろ過した様なもんじゃ。 死にゃあせんのじゃ」


 そういや、そんな話もあったなぁ。 だから血にニコチンなどが混じるとヤバいとか。


 助けて下さって、有り難うございます。

 首が座ってないから、お辞儀じぎすら出来ないけど。


 せめてつぶらなひとみでの、キラキラ視線で我慢がまんして下さい。


「いや、マジでキモいわ。 別に黒目黒髪はどうでも良いとしても、乳幼児のキラキラ視線はないな」


 うをっ。 言葉が素に戻ってますよ!


 そんなにショックだった?


 でも聴いて! 私は誰かにびないと生きていけないし、今までロクな扱いを受けていないのよ!


「しかし、面白いのじゃ。 そなた、前世の記憶があるのか? それとも魔導士なのど転生体か?」


 ぎくぅぅぅ。 前世の記憶はあるけど、魔導士なのど転生体ではないわっ!


「ドラゴンの威圧を真似てまとう技術。 さては賢者あたりか?」


 かっ、顔が怖いよ! ロリババア設定がくずれてるよ!


「ワシか? ワシは『魔の森の魔女』と呼ばれておるのじゃ」


 あっ、いや、ドヤ顔を有難う御座います?


「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ。 まあ良い。 まずは話が出来るまでは、保護する予定なのじゃ。 安心するのじゃ」


 あれっ? コレって賢者設定を作っておかないと、詰むパターン?


 いや、でもアカシック先生を利用すれば、道が開ける?


 うーむ、そうなるとアカシック先生の検索魔術を構築する必要があるな。


 会話に詰まると、ボロが出そうだし。


 そうなると、会話をしながら検索する必要がある訳だから、思考を分裂させる必要もあるのか。


 あとは、保険としての脳を冷却する魔術も。


 検索魔術と並列思考、無理の無い思考加速。 タイムリミットは最大でも、乳歯が生え揃うまでか。


 時間にして3年弱。 声帯が完成する時期なんて知らないぞ。


 くっ、こんなことを考えていたら眠気が…げぷっ。


 あっ、そう言えば乳幼児だったわ。 開発なんて出来るのか?


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 なーんて、深刻に考えている時期が、私にもありました。


 いや、すげえな。 乳幼児の魅力。


 最初の雰囲気ふんいきが何だったんだってレベルで、ロリババアがデレています。


「はーい、ご飯のお時間でちゅよ~。 でろでろばぁ」


 この様に『のじゃ』設定を忘れて、今では完全に骨抜きです。


「ばーぶっ」

「はーい、新鮮な血ですよ~」

「んぐっ、んぐっ、んぐっ。 ぷはぁ」

「は~い、ゲップしますかぁ、それとも、お代わりでちゅかぁ~」

「だぁーうっ」


 今の気分は、すっかり吸血鬼です。


 しかもこの乳幼児の体、思いの外ハイスペックでして、ちゃーんと開発も進行中。

 もちろん、こっそりとだけどね。


 アレだよアレ。 生まれたてのトカゲが自律出来る様に、ブラックドラゴンの因子も、しっかり仕事をしている様だ。


 ホント、0才児から血を飲んで思考実験まで出来る体って、人間なのかな。

 人間で良いんだよね。 こらっ、ソコ。 目をらさない!


 まあ便利っちゃあ便利だけど。


 でもね、開発って想定以上に難航しているんだよね。


 そりゃそっか。 ビッグデータを扱う場合でも、もともとツールとかもあったワケだし、ディープラーニングって理論すら知らないし。


 なんとかデータベースで代用しているけど、こりゃライフワークになりそうだわ。


 あっ、並列思考だけど、TSS(Time Sharing System:時分割方式)とオーバークロックで代用しました。

 並列思考って言うより単なる並列処理になってしまった。


 まあそれでも、実証済の手法だから信頼性はバッチリだけどね。 脳を分割できない以上、仕方が無いのだけれども。


 量子コンピュータの真似事まねごととか出来ないかな。 脳ってそっち寄りだって言うし。


 はぁ、先は長いわ。








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