第11話 思わぬ売上効果
「あくまってほんとに悪魔とも限らないからなあ…」
うーん、とコルネさんはまだ悩んでいた。ちなみにいまは二人でお店の準備をしている。
ここは金曜日だけ広場が自由市場になって、机や椅子日よけに簡易タープテントなんかも安価で借りられる。
とりあえず全部借りて設営中。
「子供が言うことだからね…。あそこには子供がたくさんいるし…どの子かと仲が悪いのかも…」
「まあその可能性が一番高いよね」
「そうだよね…」
正直シンク神父もフロスト神父もすごくいい人だし、あそこに悪魔がいるとか考え難い。
ただ教会自体にではなく、よく来る人って線もある。
「まあ念のためエドたちにも話しておくよ。関係ないとは思うけどね」
「うん」
ギンくんも何やら気にしていたし、その方がいいのかも?
「これで設置完了かな~。売れるの楽しみだね」
商品を並べ終わるとコルネさんがワクワクしている。
私も楽しみではあるけれど、いつも売れても半分無くなれば良い方だ。
「いつもそんなに売れないよ。でもぬいぐるみがちょっとだけ人気かな…」
「やっぱり?上手だもんね」
「そうかな…」
あんまり褒められると恥ずかしいなあ。
コルネさんの言葉は嘘がないのですっと心に入ってくる。
「エルちゃんは偉いね。お店設置するのも大変だし、ぬいぐるみや洋服作るのだって大変でしょ?工夫して一人で頑張ってきたんだね」
「そ、そんなことないよ…」
でも急に褒め殺してくるのはやめて欲しい。
「実家からの仕送りとかはないの?」
「あ…、ううん、来てたんだけど私のせいでお父さん大変だしお金とか全部送り返して…要らないって言ったの」
実家も魔物の被害に遭って、領地にまで被害が出た。
私のせいだってばれて噂が立って多少評判だって落ちて、お兄様も私の呪いの影響を受けてしまった。
母も魔物の瘴気で身体を悪くして、全部私のせいで…苦労させてしまった。
「あんまり迷惑かけられないから…」
「エルちゃん…」
心配そうな様子でコルネさんがじっと私を見つめる。
「エルちゃんはもうちょっと。他人に甘えていいと思うよ?例えば、えーと…僕のことお兄ちゃんだと思っていいし」
「ふふっ、なにそれ」
思わず笑うとコルネさんはあれ?本気なんだけどなぁだめかなと首を傾げて不思議そうな顔をしている。
冗談を言って笑わせようとしてくれた訳では無かったらしい。
でも、コルネさんがお兄ちゃんか…それはそれで楽しそうだけど。
「お兄さん、このぬいぐるみひとつくださいな」
近づいてきたおばあちゃんがうさぎのぬいぐるみを指差して、声をかけてくれた。
コルネさんが素早くそれに反応する。
「あ、はい、お孫さんにプレゼントですか?」
コルネさんがお客さんににこっと笑うと、おばあちゃんは嬉しそうに頷いた。
コルネさん、普段の笑顔もいいけど営業スマイルはなんか破壊力がある…。
「うふふ、そうなのよ。誕生日なの」
「そうなんですか?素敵な誕生日になるといいですね」
「ありがとうねえ」
「また来てくださいね」
おばあさんはにこにこしながら去って行く。コルネさん接客上手だなあ。
「接客初めてだから緊張したー!エルちゃんどうかな?上手にできてた?」
コルネさんがばっとこちらを向いた。
褒めて欲しい!ってオーラが出ていてまるで大型犬みたい。かわいい。
「うん。バッチリだよ。初めてじゃないみたい」
「よかった」
私の言葉にコルネさんが安心してふにゃっと笑う。破壊力すごい。
「あ、あのわたしもこのぬいぐるみください!」
「わ、私も!」
「あ、はい!」
あれ?女の子たちが話しかけてきたと思ったら、気がついたら列が出来てる。女の子ばっかり。
こんなの初めてなんだけれど…。
「ありがとうございます。また来てくださいね」
コルネさんにこっ。女の子たち、きゃー!
「は、はひぃ!ま、また来ます!!」
女の子の目がハートになっている…!気がする…!
こ、これはまさかコルネさん効果…!?
女の子たち完全にコルネさんの悩殺スマイルにやられてしまっている。
そして列が出来てるから気になってくる人もいて、今までにないくらい人が集まってきてる。
すごい驚きの
それから一時間半くらいすると持って来ていた商品は全部売り切れてしまった。
「やっぱり、エルちゃんの作ったもの人気だね。上手だし頑張って作ったの分かるのかな?」
全部売り切れてコルネさんがすごく嬉しそうにしてる。
完全にコルネさんのおかげだけど水を差すみたいだから余計なことは言わないでおこう。
それにしてもコルネさんの顔が良いのが思わぬ形で証明されてしまった。
「時間が余っちゃったね、どうする?」
帰ってもいいけど……。
「たまには市場を見て回りたいかも…」
「ふふ、そうだね。面白そうだし、見て回ろうか。行こ」
そう言って、コルネさんはすっと私に手を差し出した。
私は不思議に思って首を傾げる。これは、なんの手?
「?見て回るならはぐれると危ないから手を繋ごう?人が多いから」
「え、あ、ハイ…」
コルネさんがあまり普通のように言うので思わず手を取ってしまった。
確かに人が多いからはぐれたらあぶない。もっともだ。もっともだけど……。
やっぱり帰ったほうが良かったかも…!
緊張して、手のひらに汗をかいていないか気になって仕方がなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます