第2章 教徒の章(コルネルート)
第1部
第8話 コルネを護衛に
「…コルネさんがいいな…」
「ぇえ!?僕!?」
コルネさんが驚いた声をあげた。心から自分が選ばれるなんて思ってなかったみたいだ。
コルネさんが大きな声を出すからエリックくんがびくりと肩を震わせた。
「ええ、いや、僕じゃ頼りないかもしれないよ…?」
コルネさんがそう言うと何故かエドガーくんがむっとした。そしてじとっとコルネさんを睨む。
「んなことないだろ。コルネおまえ謙遜しすぎなんだよ」
どうやらコルネさんが自分を卑下するようなのが気に入らなかったらしい。
「…まあ、妥当なところだろう」
ギンくんは納得して呟いた。エリックくんはコルネさんを見てからコルネさんにすすすーっと近づいて腕に掴まる。
「コルネ先輩が嫌なら僕変わりますよぉ?」
「え、嫌とかじゃないよ…」
自分を指差しながら可愛くアピールするエリックくんに困りつつ、コルネさんが私のほうをちらりと見た。
思わずじっと見つめると目を逸らされてしまった。
「んん、分かった。僕が提案したことだしエルちゃんが僕が良いって言うなら…」
コルネさんは立ち上がるとエリックくんがわ、と掴んでいた手を離す。
そして、私の近くまで来てひざまづくコルネさん、私の手を取ると…
「命に代えても君を守るよ。魔物からも悪魔からも……」
そう言いながら、私の目をじっと見つめた。
彼の真剣な瞳に、騎士のような仕草に、ドキッとした。
「よろしくね…」
にこっと微笑むコルネさんはなんだか王子様みたいだった。
「コルネ!!!ソレやめろって言っただろうが!!!」
どぎまぎしていると、エドガーくんがガタンッと立ち上がる。それを見てコルネさんが慌てて私から離れた。
「あ、ごめんね」
「い、いえ」
触られた手が熱い…。
きゅっと触られた方の右手を左手で握った。コルネさんの真剣な表情が脳に焼きついて離れない。
「じゃあ、えっと、みんな異論はないかな…?」
「まあ残念ですけど仕方ないですねえ…コルネ先輩なら…」
エリックくんがふうとため息を吐く一方でギンくんは文句はない、と頷いた。
「まあ賢い選択だと思うぞ」
「いい機会だ。コルネおまえ少しは自分に自信つけろ」
エドガーくんがコルネさんを指差した。それに対してコルネさんは笑いながら困った顔をする。
「あはは…そうだね…」
「僕は実家に帰って呪いについて詳しく調べますよ。資料がたくさんありますから…悪魔を倒さなくてもとりあえず呪いが解ける方法あるかもしれませんし…」
エリックくんはそう言うと、エドガーくんがその言葉に分かったと答えてから続ける。
「まあそうしたらクロードがしたみたいに封印だけで済むかもしんないな?」
「そのほうがいいかもね…クロードがそうしたのにも何か理由がありそうだしね…」
コルネさんが同意して頷く。
「俺はあの教会について色々ひっかかるから調べたい。ついでに街に聞き込みに行く。いいな?」
「ああ、うん。分かった。…じゃあ、とりあえずじゃあ二人はそれでお願いしようかな…?エドは?」
そう言ってコルネさんはギンくんからエドガーくんに視線をスライドさせた。
「俺も一旦実家に戻る夜には帰るが。資料室でクロードの封印した悪魔について調べる。関係ないかもしんねーけど」
「うん、分かった。よろしくね」
「今日の夜番はコルネか…。俺が代わろう。その代わり昼はしっかり頼むぞ」
「ギンくんありがとう。任せて」
話がトントン拍子で進んでいく、すごくなんて言うか、みんなすごく考えてくれてるんだなあ…。
私が感心していると、エリックくんがんんーと唸った。
「昼がずっとコルネ先輩ならあとの三人で回すようにしないとですね~」
「まあ適当でいいだろう」
几帳面そうなギンくんから適当という言葉が出たのに私は少しだけびっくりする。
意外とおおざっぱなのかもしれない。
「そうだなー、ま、今日は寝ようぜ。エルも疲れたろ?」
「え、あ、うん」
突然話を振られて驚き混じりに返事をした。
でも、確かに今日も今日で色々あって疲れたかも…。
言葉にされて言われてみればどっと疲れが出たような気がする。
「じゃあ今日はお開きだね~」
コルネさんのその一言でその日はそれで話し合いが終わった。
じゃあ、明日コルネさん以外はみんないないのか。
そういえば街に売りに行くものが溜まってたなあ。
私は週末の自由市場で作ったものを売ることで生計を立てている。明日は丁度週末だ。
明日行きたいけど、コルネさんに相談してみようかな?
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