悪魔に呪われた令嬢は祓魔師様に溺愛されました 《本題・祓魔の聖騎士》

加賀見 美怜

プロローグ

私は悪魔に呪われているらしい。


私は毎晩夢を見る。

小さいころから毎日見る同じ夢。


私はいつも暗くてほとんど何も見えない場所にいる。

そこでひとつだけ私の視界に入るものは紫の髪の知らない男の人だった。


最初はそこに立っているだけで私のことを彼はただ見つめていた。

成長するたびに私は気づいた。

彼はただの人間…いや、人じゃなかった。


暗闇に紛れていた漆黒の翼………


彼は悪魔だ。


本物を見たことはないけれど、私はそう確信を持った。

彼が私を呪った悪魔なんだ。


そして彼は私にある日こう言った


『君は私の花嫁だ…。次の誕生日に君を迎えに行くよ』


「っ…!」


私は思わず飛び起きた。


「まただ、またあの夢だ……」


冷や汗をかいている。


毎日見る、悪魔の夢。彼は私の言葉に答えてくれることがなければ、私言うことを聞いてくれることも無い。


……そして私は今現在、町から離れた丘の上にひとりで暮らしている。


それは昔から私の周りで不可解なことばかり起こったから…


この国には“魔物”が多数存在する。


魔物は意思も思考もないけれど、人に危害を加え、人に不幸をもたらし、人に病気をもたらす忌み嫌われる存在。


私はそんな魔物に好かれる体質なのだ。


私のせいで、母が病気になり、仲良くなった相手は怪我をして、裕福だった家も没落した。


魔物に好かれるのはきっとー…


「あの悪魔…そしてこの…」


悪魔の呪い。


私は肩にある痣をぎゅっと掴む。

私の肩には生まれたころからずっと不可思議な痣がある。

悪魔の呪いには膨大な魔力が込められていて、そしてその魔力をエサにする魔物が寄り集まってくる。

私がウチに不幸が起こるのはきっと私のせいだから私が出て行くと言ったときに父が教えてくれた。


本当は全て分かっていたと…

私の痣が呪いであることも、それが悪魔がかけたものであることも……

それでも父は私が見捨てられなくて、私を手放したくなくて、周りに全てを黙っていたらしい。


父からその話を聞いたとき私は余計に決心をした。


やっぱり私は家から出てひとりで暮らそうと…


そして今に至るという訳で……


「あと、半年……」


私は着替えながらポツリと呟いた。

夢の悪魔は次の誕生日に迎えに行くと言っていた。


次の誕生日は半年後…


悪魔が来たらどうなる?本当に来るの?何で私なんだろう?これからどうしたらいいの?

思考がぐるぐる回る。

私は誰にも迷惑をかけたくなくて、ひとりでここにいる。

話すもの近くの教会の神父さんとたまにか、買い物の時か生活のために作ったものを町に売りに行く時…それでも最小限に会話を抑えていて、数日間他人と話さないこともある。


大丈夫、何とかなるってずっと思って来たけれど、時が近くなって行くたびにに不安ばかりが募っていく。

本当は寂しい。


「…ううん!大丈夫!もう周りに迷惑はかけないって決めたんだから!たとえ死んだってそれが私の運命だもの!!それまでひとりでも楽しく生きるって決めたのよ!」


ペシペシと自分の頬を叩いて気合いを入れた。


弱気になってる場合じゃない!

残された時間も楽しく過ごす!


「頑張るぞー!!!」


と、おー!と手を振り上げたとき、


ドォーーーーーン!!!!!


背後でなんか爆発音がした。


「えっ」


ばっと振り返ると、


ドアが大破している。


だけじゃなくて、私の部屋めちゃくちゃじゃん???えっ、何魔物?魔物の襲撃???

頑張るぞって意気込んだ瞬間まさかのジ・エンド?


「いってぇ!おい何やってんだよクソチビ!」


めちゃくちゃになった部屋の中の瓦礫から男の人の声がして私はびくりとした。


「あいてて…、だってクソ八重…先輩が魔法で一瞬で移動しろとか無茶振り言ったんじゃないですかぁ!」


「だからってミサイルみたいにぶっ飛ぶとか思わねえじゃん!???瞬間移動的なの想像するじゃん!??」


「はあ!?あんたの想像なんて知らないですよ!」


がらがらと音を立てて瓦礫から立ち上がって来たのは二人の男の人だった。


1人は少し吊り上がった翡翠色の目にサラサラ金髪の男の人で神父様の様な服装。大きく開けた口には八重歯が見えた。

もう1人も同じような服装をしていて、1人目よりは背が低くて、はねた髪にプラチナブロンドのクリクリの青い目が特徴的な可愛い男の子。


が、何だかすごく言い争ってる。

というかだんだんただの悪口の言い合いになってきている。


いや、私はどうすればいいの?大体これは何?


「あちゃー…やっちゃったねえ…」


ドアだったところからひょこっと背の高い男の人が顔をだした。

その人も神父服を着ていて、茶色の髪に青いタレ目。髪は少し長くて後ろで括っていて、優しそうな雰囲気だ。


「だからバカなことはやめろと言っただろう。馬鹿共」


その人の後から顔を出したのは黒髪に紫の瞳の冷たい雰囲気の男の人。同じような神父服だけれど服に似合わない剣のような何かを持っている。


ん?ん????処理し切れないぞ???


「はあ!?馬鹿ってなんだよ!!?」


八重歯の子が黒髪に突っかかる。


「馬鹿は馬鹿だろう」


「あぁん!?表出ろ!!」


「ちょっともー!ケンカしないの!!!」


「あ、あの…!!!」


私は勇気を振り絞って声を出した。


「あなたたち、誰ですか…!!」


私がそういうと4人はぴたりと止まってお互いの顔を見合わせた。

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