第6話 プレゼント
それから数日後。
夜のブラッシングを終えてふにゃふにゃになっているあたしに、柳都がこう言ったの。
「今日、あなたにこれをあげようかと思いまして」
彼が手のひらの上に乗せて見せてくれたのは、きらきらと輝いた首輪だった。首輪というより首飾りに近い。
それは、あたしの首の周りに優しく巻かれ、鏡に映してみると、輝く首飾りを着けた自分がこちらを覗いてきたの。
「みゃあっ!?」
これがあたしなの!?
黒目が大きく丸くなっているわ。
小さいけど青くてすっごく綺麗なものが一緒に映ってる!
「とても良く似合っていますよ」
柳都ったら、あたしの頭を手で優しくなでてくれるものだから、つい顔をその手にすりすりしてしまう。
「飼い猫なのに首輪一つなかったら身元が分かりませんからね。私としたことが、うっかりしてました」
あたしが前足で首にぶら下がった青いきらきらした石をいじっていると、彼はあたしを膝の上に乗せてくれた。
「アクアマリンのついた首輪にしてみました。あなたの左眼は空というより、海のように美しいサンタマリア・アクアマリンの色に似ています。それは月の女神、ディアナの石と言われているのです。実は、あなたの名前はそこからもじりました」
何か良く分からないけど、すごいことを言われている気がする。
お尻が妙にムズがゆくなってきた。
先の曲がったしっぽをぶんぶん動かしてみる。
「首輪を着けたらすてきなお嬢様になりましたね。あまり遠くへと行かないで下さい。さらわれたら大変ですから」
あたしの目を眼鏡越しで見つめてくる優しい榛色の瞳。なんだか背中までムズムズしてきた!
「なーごぉ……!?」
ねぇ。あたし、柳都とずっと一緒にいていいということかしら!? そうとっても良いよね!?
うれしくなったあたしは彼の整った鼻に、自分の小さな鼻をくっつけた。今回は銀縁眼鏡とはち合わせしなくてすんだわ。彼は微笑んで、そんなあたしを優しく抱き締めてくれた。
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