第14話 バイト

 先輩の一件の方針は固まり、とりあえずGWも始まるので様子見となった。

 そして明日学校に行けばGWになると言うところで、俺達はとりあえず渋谷に放課後、遊びに来ていた。


「悪い、俺今日バイトあるからあと30分で行くわ」


「一条君バイトしてるんだ…私も見つけないとなぁ」


 浅田さんならメイド喫茶とかイけそうですねぇはい。

 決して下心は無い…ごめんなさいあります。


「佳奈先輩ってバイトしてるんですか?」


「一応喫茶店でやってるよ」


「俺はステーキ屋のバイトしてるっす。そう言えば一条お前何のバイトしてんだ?」


「あー、言ってなかったね。俺はちょっと特殊なバイトで…」


 むしろバイトと言うか仕事みたいな感じに見えないこともない。


「龍太君のバイト先どんな感じか見てみたいなぁ」


 先輩が上目遣いで頼んできた。

 この人最近ちょっとあざとくなってきてるんだよなぁ。

 ちくしょう!あざといのは分かっている!なのに何故だ!?可愛いから許しちゃう!


「まあ、見学ってことならいいですよ…て言うか今から見に来ます?」


『行きます』


 満場一致、俺らは東京駅に向かった。

 東京駅の近くに防衛部隊の基地がある。

 この防衛部隊は能力社会において所謂いわゆるヒーロー的な感じになっており、犯罪の抑止力と人々に安心をさせるための役割を担っている。

 そして何故今そこを紹介したのかと言うと…。


「実は俺…ここの指導員なんだ…」


『…え?』


 全員が驚いた顔と言うか…何回か見てきた、状況を理解出来ていない顔をしていた。

 そうなるよね…うん。


「お疲れ様で〜す」


 そう言いながら俺は事務室に皆を引き連れて入って行った。


「お、一条君おはよう。そちらの方々は?」


 上司の佐藤さんが話しかけてきた。

 佐藤さんは柔術の大ベテランであり、能力無しならこの人に勝てる人はそうそういない。

 まだまだ現役の72歳の超パワー系ジジイなのだ。


「僕の高校の友達です、見学をしたいと言うので連れて来ました」


「社会見学的なやつかね、それだったら是非見ていってくだされ」


『はーい!』


「とりあえずここで待ってて、着替えてくるから」


 俺はそう言うと更衣室に向かった。

 自分用のロッカーの中に荷物を入れ、バッグの中に入ってた道着に着替える。

 帯をグッと縛り、カンフーシューズに履き替えて終わりっと。


「ふぃ、おまたせ」


「あれ?一条君道着なの?」


「うん。動きやすいし、それに俺の原点だからね…」


 俺の師匠、もとい親父から貰った道着と靴は割と大事にしてたりする。


「なんか風格出てんなぁ…」


 ビリ男が俺の姿を見るなり少し輝いた目で見てくる。

 分かるよ、男の子は皆一度くらい道着を着てみたいものだよね。


「うん、すごくカッコイイよ!」


「ありがとうございます先輩、是非お付き合いを前提に結婚してください」


「順序が逆だよ?龍太君、そう言うのはちゃんと段階を踏んでからにしないとダメだよ?」


「はーい」


「はぁ、浅田…お前もそろそろツッコミ側に回るべきじゃないのか?」


「そうだね…南さんがいる時は私もボケれるんだけど…佳奈先輩がいるとどうも天然ボケでツッコまなきゃいけなくなるみたい…」


 浅田さんはこの日、ツッコミ件ボケに昇進した。

 ところで先輩、順序守ればOKなんですか?

 是非突き合いたッ!

 そんな事を考えてたら浅田さんにド突かれた。


「痛ッ!急に何すんのさ!」


「なんか変なこと考えてそうだからついつい…」


「何故バレたァァ!?」


「考えてたのかよ…」


 閑話休題。

 とにかく、俺達は訓練場に足を運んだ。

 今日のメニューは基礎と打ち込みだ。


「では皆さん、まず柔軟からやりましょう」


 俺は前に立って指導する。

 柔軟体操はまずしっかりやらせる。柔軟性があればあるほど、様々な角度から攻撃が打てるからだ。

 あと、体がつっちゃわない様にね!?


「それじゃあ今回やっていただくのは基本です、基本と言っても技術的な基本です」


 俺は突きと蹴りの技術の基本、肩甲骨と股関節の意識を教えた。

 これを意識するだけで攻撃の威力がかなり違ってくる。

 それはどんな能力者でも共通して言える、人体の構造とも言っておくべきだな。

 脱力なんて肩甲骨と股関節を意識すれば勝手に出来てくるようになる。


「一条君、ちゃんと先生してるね」


「あぁ、いつものボケからは想像出来ない程に完璧な指導力…」


「今度龍太君に色々教えてもらお」


 そして時は流れ3時間後。


「はい、それでは皆さん終了です」


 兵隊はもう疲れ果てていた。

 大の男が高校生の練習メニューでヘロヘロになって地面に座り込んでいるなかなかに異様な光景である。


「何が凄いって一条も一緒にやってんのに一切呼吸を乱してないところだよな」


「正直異常だよ…一条君…」


 しかし何故か3人とも、龍太の強さの理由が分かってスッキリした顔をしていた。


「明日終わったらGWだけど何する?」


 そう浅田さんがハンバーガーを食べながら言った。

 バイトも着替えも終わり、東京駅の前のハンバーガー屋でこれからの予定を相談していた。


「せっかくだし、BBQでもすっか?俺コンロ持ってるぞ?」


「おお、やるなビリ男」


「ビリ男言うなっつてんだろ!?」


「BBQかぁ、うん!やってみたい!」


 喜ぶ先輩が可愛い…なんだろうねこの小動物感。

 あと俺に顔を近づけるのやめてください、ちゅーしますよ?


「それじゃあ5月4日とかどう?俺その日はバイトも無いし…なんなら琴美ちゃんも呼べるよ?」


 琴美ちゃん連れてくと色々便利だよね…火起こしとか。ビリ男でもいけるかな?

 でもまあ、火ならワンチャン指パッチンでいけるかも…。


「「「お願いします!」」」


 おお、返事早いなみんな…。

 結構な圧力を感じるぞ…。

 という事でGWはBBQする事になりました…え?もしかして俺達陽キャ?

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