スーパーロボットに乗ってドラゴン殴ったら、なぜか双子の美少女プリンセスにモテモテに!?~野生動物の分際で人間様に逆らってんじゃねえ、科学の力でブチのめす!両手に花で魔王軍壊滅させて世界とか救っちゃうぜ
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第1章 激震!!新たなる世界編!
第1話 衝撃と激闘の新天地
『――きて。起きてくだ――海斗。海斗!』
「んあ……?」
無機質な電子音声に名前を呼ばれて、
眠っていたというより、単に気絶していたようだが。
頭が割れ鐘のようにずきずき痛む。
重くダルく、鈍くてキモい、憂鬱な気分が一気にのしかかってくる。
こんなに
頭を振ってあたりを見回した。
ここは――海斗の愛機、人型巨大兵器『エックス』のコックピットだ。
慣れ親しんだシートではあるが、寝心地は最悪だった。
窮屈なのは仕方ないとしても、作戦によっては何時間も座ったままいるのだから、背もたれぐらい高品質の天然皮革にしろよと何度も言ったのだが。
あいにくとこの機体の設計者も、整備班も、そんなせいぜいが常識的な要求を聞き入れる人物はひとりもいなかった。
舌打ちしてうめく。
呼びかけたのは、さっきからやかましく海斗にまくし立てているAIにだ。
「クオ……おい、うるさいぞクオ! 一回黙れ!
『目を覚ましましたか海斗。よかった』
「よくねえよ。死んだほうがマシって気分だ。あーもう、くそったれ、AIのお澄まし声で目を覚ますハメになるなんてのは……」
美女の囁きとまで言わないにせよ、せめて起き抜けに聞かされるなら、朝鳥の鳴き声ぐらいにしてほしい。
エックスに搭載されたナビゲーター兼戦闘補助AI、クオは有能だが、だいたいいつもウザい。
そのウザい声で、毎度毎回面倒な厄ネタばかり告げられるせいで、海斗は電子機械類にうんざり気味だ。
ロボット乗りのくせに――と自分で突っ込みながら、続くクオの言葉を聞いた。
『非常事態です、海斗。つまり……非常にまずい状況です』
「なんで2回言った? 内容を言え、内容を」
『落ちています』
「ああん?」
正面のコンソールをやぶ睨みして、聞き返す。
別にAIの声はそこから響いているのではないが、ともかくクオが告げる。
『本機、特殊人型機動兵器エックスは現在、高高度から自由落下しています』
「自由……なんだ、墜落だと? なんで?」
『飛べないからですかね』
「当たり前だろ、ボケてる場合か! どうして落ちてるのか聞いてるんだよ俺はァ!」
エックスは飛行動力も、単体での空中航行機能も備えていない。
それは仕方ないにせよ、そもそも飛ばないのなら、空から落ちるはずだってないのだが。
しかし、今は細かいことを考えるのはなしだ。
現状を把握した瞬間に、腹の奥に感じる重い振動と衝撃を自覚する。
そんな錯覚。
無重力めいた落下感。
それを意地できっぱり無視して声を鋭く、海斗は叫んだ。
「状況は!」
『悪いです。直前の戦闘行動で機体各部が損壊、伝達系に故障と異常多数、出力は60%まで低下。特に各センサー・モニターの破損障害が激しく、詳細不明ですが、分かる範囲では地表まで200――』
「全スラスター吹かせっ、地面とキスするまでの時間を稼ぐんだよ!」
『やっていますが、姿勢制御だけでやっとで』
「もっと気張りやがれポンコツ! 気合い入れろー!」
無茶振りしつつ、海斗自身も操縦席内の各モニターをチェックする。
クオが言うように半分の画面がブラックアウト、残り半分も灰色のノイズだらけで、状況はさっぱり。
それでも地表の山林らしき影を見つけて、その位置と角度から大雑把な現在の高度と、機体状況を把握した。
おそらく激突まで残り5秒もない。
野生めいた勘と勢いで、海斗は即断した。
「エクスブラスター、行けるか!?」
『かろうじて。しかし、エネルギー残量的に50%の出力が限度で、しかもおそらく放った後は――』
「マイナス材料は聞いてねえ、とにかく、てめえと心中するのだけはごめんだ! 仮想誘導砲門展開! 射出角垂直直下、タイミング合わせろっ」
叫び、両手それぞれで内蔵武装レバーを掴んで、引き絞りながら。
「
『発射』
機体装甲の胸部が展開し、真紅の輝きが十字に膨れ上がると同時、間近に迫った大地へと超高密度の熱衝撃波が突き刺さる!
膨大な熱と運動エネルギーが、山の中腹に炸裂して木々を薙ぎ払う――土砂を巻き上げ、吹き飛ばす。
それは副次的な威力に過ぎないが、ともあれ、撃ち出した分の反動だけ落下速度は低減した。
「ぐぅおおおっ……!」
急制動でのしかかった衝撃力のせいで、ただでさえ座り心地の悪いパイロットシートが軋んで尻に食い込む。
ビービーとやかましい警報を止めることもできず、舌を噛まないように海斗は歯を食いしばった。
無論、本来はこんな使い方をする兵器ではない。
咄嗟に簡易ブースターとして吹かしたが、落下エネルギーを完全に相殺しきれないことは分かっていた。
再びの落下感を味わいながら、どころか姿勢制御が狂って上下左右の感覚もゴチャ混ぜにされながら、海斗は激突の衝撃と瞬間を待った。
聞いてもいないのに、クオの声がそれを告げた。
『落着――衝撃、来ます』
嫌味に感じるほどその通りになった。
右の肩口から、だろう。傷だらけの黒い巨体が山の斜面にぶち当たり、そのまま坂を転がり落ちる。
当然、機体内の海斗にも
パイロットシートに固定しているはずの身体が、見えない壁の中で跳ね返るようにあちこちぶつかり、打ちつけ、軋んで弾けて、いたぶられる。
不快な衝動に神経がねじ曲がり、内臓まで裏返りそうだった。
棺桶にこもるような心地で、痛みと悲鳴をこらえながら、永遠にも思える十数秒をひたすらに耐える……
そしてどうにかこうにか、耐えているつもりでいるうちに、激動の時間は終わってくれた。
なにがどう止まったものやら、気づけば海斗の身体(と忌々しいシート)は、天井からずり下がるように逆さまの格好になっていたが。
息をつく。
口を開いた。
「……おい。おい、クオ」
『なんでしょうか海斗』
平静に訊ねてくるウザいAIに、海斗は吐き捨てた。
「お前これ、上下逆さまで止まってるの、わざとやっただろ」
『私の
「嘘つけ! 絶対わざとだ! 山を転がり落ちてこんなきっちり180度逆転して止まるわけねえだろ!」
叫んだところで、ちょうど各種モニターと制御コンソールが復活した。
「…………」
試しにマニュアルで操縦して、ひっくり返っていた機体を起き上がらせる。
レバーもペダルも異常なく連動して動き、動力と伝達系を通して腕に、足に、指のマニピュレータに指示が行き渡った。
ゴゥ、ン――と唸るような音を立てて、エックスの両脚部が地を踏みしめ、黒鉄の巨人が大地に立つ。
再起動した各部センサーとカメラが周囲の様子を捉え、シート前面の大型モニターに映し出した。
『これはひどい』
と、今度はクオが先んじて言ってきた。
復帰したコンソールの隅、声に合わせて『Q』の文字の平たいアバターがピコピコ点滅する。
打った首をひねってゴキゴキ言わせながら、海斗は答えた。
「他人事みたいに言うなよ。俺たちがやったんだから」
『それはそうですが。ひどいものはひどい。なにひとつスマートじゃない――それに、むやみな自然破壊は推奨できませんね』
まあ、ひどい有り様なのは事実だった。
光熱波を受けた山肌は抉れ、転げ回った斜面はズタズタ、風圧で木々はへし折れ、散った葉と土砂がぱらぱらと降り注ぎ、もうもうと立ち込める土煙で景色は曇る……
とにかく惨状だ。大事故である。
ここまで来ると、とりあえずでも機体とコックピットが無事なのが不思議なぐらいだった。
それでもちょっと理屈に合わない気はする。
少なくとも数百メートルを落下して、爆風のクッションもあったとはいえ、これだけの被害を出した当人たちがぺしゃんこになっていないとは。
エックスも、中に乗っている海斗も、あと、搭載されたクオの
クオのチップ――
はっと思い出して、海斗は
「あの最後の戦いは! ……Dr.ゼロのジジイは、どうなった?」
『不明です。敵要塞基地を破壊した際の大爆発で、私の機能も一時停止していましたから』
「
『確認――主観・客観の両時間において、あの決戦から5分と経っていません』
「ンな馬鹿な。他の
突然の高空落下に続き、意味不明な状況の連続に、疑問ばかりが増えていく。
しばしの間を置いてから、クオが答えを出した。
『∞チップの特異反応、周囲1500メートル以内にはなし。当機体、エックスの“X”と、私の“Q”のチップ以外には』
「吹っ飛んだのか……? それとも、消し飛んで壊れたか。だったらなんでお前は残ってんだよ。一緒に消えてなきゃおかしいだろ」
『私がいなければ、あなたとエックスは状況が分からないまま“地面と熱烈にキス”して、仲良くミンチとスクラップだったはずですが?』
「いや、そりゃそうなんだけど……なんだかなあ」
釈然としないが、曖昧にうなずいておく。
わけが分からない。どうすればいいのかも。
なんであれ、まずは基地に帰還するしかなさそうではあった。
指示を出す。
「まあいいや。クオ、GPSを出してくれ。とりあえず、ここがどこなのかくらい分からないと、さすがにどうしようもないし」
『――エラー。GPS、機能しません』
「はあ?」
露骨に声から間が抜ける。
その声音のまま続けた。
「冗談言ってる場合かよ。一番基礎的なシステムだぞ? 故障するわけねえ」
『故障ではありません。エラーです。作動はしますが、機能が働かない。もっと言うなら、軍の衛星システム自体が
「待て待て。俺が悪かった。確かに衝突を回避できたのはお前のおかげだよ、クオ。でもお前だって、超科学エキスパート研究所に帰れないままじゃ困るだろ――」
『海斗』
と。
AIにはあるまじき神妙さで、クオは言った。
それは唐突なようでいて――後で分かるのだが、結局、一番重要になったのであろう、ふたつの事柄を。
『いい知らせと悪い知らせがあります。ひとつは、800メートルほど先の地点に人の生活拠点を発見――規模からすると、大きめの町ですね』
「もうひとつは?」
『反対側、本機の背後から、巨大な生体反応が近づいてきます』
「生体……って」
奇妙な言い回しに、海斗は首を傾げた。
「巨大生物? 象かなにかか? それはいい知らせと悪い知らせのどっちだ?」
『ただの動物ではありません。もっと大きい。本機と――
「なんだそりゃ。そんな生き物がいるかよ、恐竜でも湧いて出てきたのか? さもなきゃ、Dr.ゼロの征服ロボの生き残りと見間違えたか――」
『エラーではありません。間違いなく生命体です』
「いや、だって、さすがにそんなわけは」
それでも一応、エックスを振り返らせて後ろを向いた。
なんであれ脅威になる存在なら、さすがに無視できない。
その次の瞬間だった。
「な――」
山の陰から。つまりは、さっきエックスが滑り落ちて、更地同然になったはげ山を回り込むように。
ぬうっと現れたのは、それこそ恐竜をも超えるようなサイズの巨大なナニカだった。
面構えも恐竜っぽい。
馬鹿でかいワニかトカゲというか、突き出した口と鼻先、口腔内部からのぞく恐ろしげな
さらには天を衝く巨大な黒い二本角まで生やして、なんというか、ゲームや怪獣映画で見る『いかにも』なモンスターのようではある。
血で染まったように赤い巨体、体表を覆う岩のようなウロコ、野太い四つ足――
一歩踏み出すだけでズシンと大気が震え、まだ残っていた木々をバキバキと押しのけて、鋭い岩のような爪が地に食い込んだ。
背中には翼もある。
禍々しい、コウモリ
この巨体では物理的に空を飛べるはずがないが、理屈はともかくいきなり羽ばたきだしてもおかしくなさそうな、えも言われぬ迫力と凄みがある。
怪獣は、グルルルル……と、獰猛な唸り声を発している。
ぶしゅー、ぶしゅーという荒い吐息と鼻息まで機体の音域センサーが拾って、思わず海斗は頬を引きつらせた。
どう見ても話の通じない相手だ――というか、全力で威嚇されている。
ガン飛ばされて、メンチ切られている。
喧嘩を売ってるのだ、こいつは。
海斗は口を開いて、クオに訊ねた。
「クオ。こいつは……なんだ?」
『はい。いいえ海斗、おそらくですが、地球上にこのような生物は存在しません』
「じゃあなんなんだ、どういう状況だよこれ!」
『思うに、いわゆる“ドラゴン”という、幻想上の怪物と遭遇してしまったのかと』
「見りゃーーーー分かることを、わざわざご説明ありがとうよ! で!? こういう時の非常対応マニュアルとか、気の利いたアドバイスはねえのか!」
『エラー。海斗、ぶっちゃけこれ、完全に想定外の事態です』
あてにならない補助AIの声はともかく。
「ゴォオアァァアアア――――ッ!」
猛々しく天に響く咆哮とともに、巨体と尻尾を揺らして突進してくる“ドラゴン”の敵意は、分かりすぎるぐらい分かりやすかった。
災害を思わせる巨大すぎる威圧感。
Dr.ゼロの繰り出す征服ロボたちとはまた違う、かつて経験したどんな窮地とも別種の、まったく未知の脅威が襲い掛かる!
クオがさらっと告げた。
『海斗。大気組成の細かな差異や天候と天体の運行など、現在の状況を多角的な視点から分析すると、我々がいるここは地球ではなく……つまり、推測ですが“異世界転移”をしてしまったのではないでしょうか』
それもだいたい、すぐに想像つきそうな話ではあるが。
毒づいた。
「マジで死んでたほうがマシだったかもな。が、細かい話は後だ。やるぞクオ!」
『
操縦レバーを強く握り込み、突っ込んでくる赤竜を迎え撃つように、エックスの巨躯を前進させる。
漆黒のマシンが
ここがどこであれ、あの怪物がなんであろうと、関係ねえよ知ったことか――
「売られた喧嘩は買うだけだ、意地と道理で推して参るッ! きっちりカタ
これが
掟破りの大一番――
スーパーロボットVSドラゴン、ここに開幕。
お代は見てのお帰りだ。
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