詩、詰め合わせ4

  『手紙』



伝えたい 


言葉ばかりが浮かんできて


伝わらない 


思いは空回りし続ける



白と黒の羽を 

水色の封筒に入れて


宛先も書かないまま 

ポストへ入れた



********************



  『優等生』



何でも知っている優等生


周りからそう思われていた子は

サボり方を知らなかっただけ



何でもできる優等生


周りからそう思われていた子は

助けを求めることを知らなかった




********************


  『現実逃避』



ちょうどホームに入ってきた電車に乗り込んだ


「日常」から逃げ出したかった


乗り継いで、流れ着いた駅

周りには開けた土地

本当に同じ国なのか

自分の育った場所に似ても似つかない

歩いているうちにサイレンを耳にした

長く、遠くまで聞こえるように鳴り続け


 途切れた。






私にとっての「非日常」は

誰かにとっての「日常」だった。



********************


  真冬




 吐いた息が白く色付き、宙に浮いては消える。

 冬。この国は色を失う。

 道標さえ白に埋もれて、道を見失えば命に関わる。その為人々は彩り鮮やかな着物を身につけている。

 私には、出来ない。

 今は、とても。

 白い着物、白い髪、白い肌。雪に触れる素足は霜焼けで赤い。手も。

 もし本当に鬼の子なら、もし本当に雪女なら、きっとこの雪原を抜けられると。

 じいやが言った。

 ばあやが言った。

 ととさまが言った。

 かかさまが言った。

 あねさまが言った。

 ちびたちは見てた。


 真冬の一番吹雪く晩、冬の鬼達による成人の儀。

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