第一章 背の高い女の子は嫌いですか?

地下鉄の長いエスカレーターを昇っていると。

一組のカップルが隣のレーンの上の方から、降りてくるのが見えた。


女が上にいて、男が1段下にいた。

二人、見つめ合っている。


まぁ、良いけどさ。

私は別に、いじけていたわけではない。


ただ、女のジト目がちょっと、何だかなぁと思っただけ。


男は背が高いのか。

それとも、女が背が低いのか。


たぶん、両方だとは思うけど。

1段分の高さで、丁度合う目線。


この空間に、二人以外は存在しないような。

まるで異世界のダンジョンの中での勇者とヒロイン。


たった数秒なのに。

そこまで読み取る自分も嫌だった。


ええ、そうですとも。

少し、嫉妬してました。


私と真逆の女の子だもの。

小さくて可愛い。


一般的な日本人の男子が好む女子。

歩いていて、肩を抱きしめられるバランス。


私が到底、望めない身長なのだ。

そう、私は背が高い。


身長175㎝の大女です。

年齢25歳。


社内ではハンサムウーマンと仇名されている。

日本風だと、男前。


結局、可愛くは思われていない。

女子には人気あるけど。


男にはヒールを履くと、見上げざるを得ない女子は。

NGか、ネクストタイムなのだ。


数秒のエスカレーターの旅の中。

私の思考はグルグル廻り。


結局はアイツの顔を思い出していた。

私の大好きなサル顔。


眉毛の濃い。

小さな男の子。


十年前のアイツの顔を。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る