ハルジオン

@tanoshikukaku333

第1話 期待に反して

かすかに予感していた。


もしかしたらあなたは私の前から

居なくなるのではないか。


でもこの予感は気のせいだろうとあまり気にしなかった。


クリスマスの日を私は心の底から楽しみにしていた。


あなたがその特別な日に担当になってくれるのではないか。


クリスマス当日、

私は病院と薬局に行くだけだというのに

お気に入りの洋服を選び、念入りにメイクした。


私を少しでも可愛いって思って欲しいと感じた。

ただの患者かもしれない。でも患者の中でも

私のことをみて欲しくて、自分磨きを頑張ることができた。



でもその日貴方の姿はなかった。



優しそうな他の薬剤師の男性に尋ねてみた。



いつも担当してくださっている薬剤師さん

今日はいらっしゃらないんですか?



実は異動してしまったんですよ。



え・・・



私は声が詰まった。


嘘だ 嫌だ そんなことって


ショックで涙を堪えるのに必死で

精一杯笑顔を作った。


そうなんですね


あの、もしその薬剤師さんと連絡をする機会があったら、

親身に色々相談に乗っていただき

救われた患者がいたとお伝えください。

本当に感謝していますと。


私よく言えた。


はい。

きちんと伝えますね。


男性の薬剤師さんは真剣な表情で頷いてくれた。




薬局を出た瞬間、堪えていた涙が

止めどなく溢れ、すぐに嗚咽に変わった。




お兄さん あなたにはもう会えないのですか。




今日好きな人に会えると期待して

高鳴っていた私の心は


あまりのショックと悲しさで

壊れてしまいそうだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る