第20話 悪い知らせ
赤い鎧の勇者達は、三百人程が広場に集まっていた。
土の地面は、少しでこぼこしているが、瓦礫の中よりも随分過ごしやすい。
そこに細長い机を用意して、誰でも食べられるように牛丼を準備している。
皆、好きに机から牛丼を取り、座り込み食べている。
中には二杯食べる者がいたり、涙ぐんで食べている奴までいる。
そんなにうまいのかと思ってこっそり一杯盗み食いしてみた。
でら、うまかった。
普通の牛丼屋の牛丼にはしっかり歯ごたえのある部分があるが、あいの牛丼は全体がふわっとしていて、肉全体が均一に柔らかい、そこにワインだろうか、ほどよい風味で肉の獣臭さが消えている。
「うまい!!」
「でしょうー、魔法ってすごいのー。私が食べたい味で再現できるの。お肉はねー、和牛のちょー霜降りでーす。脂身だか赤身だかわからない感じー、柔らかいでしょー」
あいが嬉しそうな顔をして、声を頼りに近づいてきた。
これが、あいの魔法創作料理だとすれば、あいは魔法料理の天才だろう。
「すげーうまい」
「盗み食いの罰金は千円」
「ちょっと待て」
俺はズボンのポケットを探した。
あるわけがねえ。
スッポンポンだ。
ずっと裸でいるとそれが普通になり、服を着ているときとかわらねえ。
慣れっておそろしい。
「あーおれ、今裸だから金持ってねー」
「裸のままで近づくなー変態!!」
「ちぇ、透明だから、どっちでも変わらんだろー。大体、近づいて来たのそっちだろー」
ぶつくさ言いながら、丼をもって食いながら歩いて見ていると、勇者共もまるで人間と変わらねえ。
こいつらが、昨日までスライムと言いながら、同胞を殺しまくっていた奴らかと思うと複雑な心境になる。
あー、丼を持っているが、持っている丼も消えているので、全体が透明で丼だけが、宙を浮いているような感じにはなっていない。
「ガド、どこにいる」
ばあさんが俺を探している。
「ああ、ここにいるよ」
「うむ、悪い知らせと良い知らせがあるじゃが、どっちから聞きたい?」
ぎゃーー、又来た、この質問。
「じゃ、じゃあ悪い方から」
「うむ、あの亀裂じゃが、他に三つ発見した。中から、うじゃうじゃ、鎧の勇者が出て来て、スライム狩りをしておる」
「な、なにーー、大変じゃねーか」
「だが心配するな、相当向こうじゃ。海を越えた向こう」
「外国って事か。でも、ばあさんどうやって、そんな事がわかるんだ」
「あーそれか」
そう言うとばあさんが、大量の小っさいばあさんの分身を出した。
「この分身を、消して飛ばしたのじゃ」
「へーー、こっちで言う偵察ドローン見てえなもんか。まだそっちは、黒いのは出てねえんだな」
「そうじゃな」
「じゃあ、良い方は?」
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