第8話 助けを呼ぶ声

大地震の時、私は自室にいました。

体調が良くなかった私は学校を休むことを母に伝えベッドで寝転んでいました。


巨大な揺れは最初いきなり、床が一メートルくらい沈みました。

その後一瞬で二メートルぐらい床が上昇し、体が強く打ち付けられ、意識を失ってしまいました。

気が付いたら、部屋はぐちゃぐちゃ、天井がブイの字になって落ちています。

崩れた壁の隙間から外を見ると、鎧を着た男達が剣で避難民を切りつけています。

「ぎゃーー、やめてくれーー」避難民の断末魔の声がします。

私は、恐怖に身がすくみ息を殺し、見つからないように神に祈りました。


私の目の前まで鎧を着た男が来ましたが、ベッドの下に潜り込み、息を潜めていたら運良く、気付かれませんでした。

逃げだそうと立ち上がろうとしましたが両足が折れているようで、痛くて立つことも出来ません。

肋骨も左手も痛くて動きません。

飲まず食わずで二日間、お腹も空いて、何より喉が渇いています。



痛みからか意識が遠のき、目覚めたらすっかり暗くなっていました。

闇の中で、「さがせー、近くにいるはずだ-」そんな声がきこえて来ます。

その時うちの屋根に足音が聞こえてきて、天井から砂埃が落ちてきました。

誰かが、うちの屋根を歩いています。

鎧の音は聞こえません。


どうしよう、どうしよう。

助けを呼ぼうかしら、でも鎧の人の仲間だったら。

どうしよう。

どうしよう……。


「た、たすけてーー」


私は助けを呼ぶことに決めました。

久しぶりに出した声はかすれて誰にも聞き取れないでしょう。

だから今度は大きな声で


「たすけてーーーー!!」


「おい聞こえたか、スライムの声だー!」


「あっちだ徹底的にさがせー。あいつの仲間かもしれない。絶対探して殺すんだーーー!!」


私はついていないのかもしれません。

松明の光でしょうか、オレンジ色の光が、沢山うごめいています。

その光がどんどん大きくなります。

助けでは無く、殺人鬼を呼んでしまいました。


「この辺だった筈だ」

「この家じゃ無いのか」

「おお、ここに隙間がある」


松明の光が私の部屋を照らします。

もう駄目です、鎧男の足が見えます。

だれかーたすけてーー。

声を出さず心でさけびます。


「見つけたぞ、こんな所にいたのか」


殺人鬼がベッドの下の隙間をのぞき込みます。

殺人鬼の目と私の目が合いました。

殺人鬼がうれしそうに、ニタリと笑います。

松明の光に照らされた顔はとても不気味で、私は恐怖で体が硬直して失神寸前です。






「ぐああーー」

「げぼおおーー」

「ぐはあーー」


「やめろおーー」

「ぐはあ」

「がはっ」


「ばかめ、群れから出れば、松明はただの目印だぜ。くそ勇者!!」


「あ、あのー」


私は声が聞こえた所に話しかけて見ました。


「おーやっぱり誰か生きていたのか。無事かーー?」


「は、はい。た、助けて下……」


ほっとして、嬉しくて、涙が出てきて、声がでなくなりました。

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