第7話 良い知らせと悪い知らせ
「ガド、首尾はどうじゃった」
勇者のたまり場から十分距離をとり、休んでいると、小さいばあさんから声をかけられた。
「上々かな」
「そうか、悪い知らせと良い知らせがあるのじゃが、どちらから聞きたい?」
「良い方からかな」
「うむ、良い方は、裂け目から遠い九州の方は被害が少ない。電気も水道も使える。おそらく今回の地震は、裂け目の為に起きた地震ということじゃろう」
「そうか、わかった」
「次は悪い方じゃ。わしはこの世界に生き返り禁止魔法をかけた。そしたら、魔力が九割無くなってしまって、ずっと回復しない。この世界は、魔力が少ないようじゃ。わしは魔力がゼロになると死んでしまう」
「た、大変じゃねえか」
「うむ、でも安心しろ。わしが死ねば、魔女の契約者も死ぬ。ぜんぜん、さみしくないじゃろ」
「だーー馬鹿じゃねーのか。大変じゃねーか。魔力を使わねーようにしねーと」
「まあそういう事じゃ」
俺の透明生活が確定されてしまった。
だが、ここで苦労している人達は、九州に避難すれば助かるって事か。
希望が少し見えてきたじゃねえか。
明るくなって、勇者が動き出したら、勇者を倒しながら、避難民に九州へ行くように伝えた。
まあ、こんな所から九州まで歩くのは大変だろうけど、ここにいても死ぬだけだしな、しょうが無いだろう。
昨日俺が勇者を倒しまくったからか、今日は極端に勇者が少ない。
空いた時間に物資の補給をしようとしている人に手を貸した。
何も無いところから声をかけられて大抵の人が驚いていた。
今の俺は、ばあさんの魔法の御陰で怪力の持ち主で、結構役に立っていたと思う。
「なあ、あんたが有名な透明人間さんだろ」
「有名かどうかは知らんけど、ご覧の通り透明ですね」
「一目姿を見せてもらえないだろうか」
「あー、素っ裸だから無理です」
こんなやりとりも何度したことか。
こうして昼間は避難民を助けた。
日が暮れればいよいよ狩りの時間だ。
最初に飛ばされたビルの上で勇者様の様子を確認する。
今日の勇者は、昨日と様子が違う。
かがり火が焚かれ、周囲が昼間のように明るい。
俺には返って見やすくなるだけで、あいつらにとって不利になっているだけだと
思うのだが。
見張りが大勢配置されているが、透明人間を想定していないようで簡単に侵入できた。
おれは、眠っている奴だけ剣で突き刺し、バレる前に逃げ出した。
俺が、ビルの上に登ると、勇者のたまりばが大騒ぎになっている。
「またやられている。さがせーー、まだ近くにいるはずだーーー」
けっ、もう遠くに逃げているぜ。
「た、助けて」
どこかで助けを呼ぶ声がする。
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