〈間奏曲〉78年前のとある研究所の会話

 今から78年前、アメリカ合衆国カリフォルニア州のとある研究所。

「ロバート、君が先日提出した計画案についてだが。」

「博士、見てくれましたか?どうですか、私のアイデアは。」

「……ロバート、君は学生の頃から優秀だし、実績も残している。だが、今回の提案はその……あれではまるでマッドサイエンティストだよ。ダメだ。」

「なぜですか!知っての通り、人工知能の進化は既に頭打ちです。壁を突破するには常識を超えた発想が必要な時です。」

「確かに、我々が特に力を入れてきた人工知能の自己対戦による強化学習手法も、最近は壁にぶつかっている。だが……」

「人工知能の複数の判断を数値で評価し、より優れたものを採ることを繰り返す強化学習―――これでは柔軟性や発想力に限界があるのです。だからこそ、人工知能をと競争させて学習させるのです。人工知能が生体脳の柔軟性を学習出来れば、きっと壁を超えられます。生体脳の処理速度の遅さは遺伝子改良を加えて強化すれば良い。そうだ、神経系の機械サイボーグ化技術も応用すれば……」

「まったく、想像するだけで気分が悪くなってきた。君のアイデアは興味深いが、人間の脳を使うというのは、さすがに無理だろう。まさに狂気だ。」

「……しかしこのまま倫理だとか権利だとか言っているうちに、他の国に先を越されます。画期的な結果が伴えば、過程は世間に認められます。いえ、認めざるを得なくなる。」

「ふむ……だが極秘裏にやるにしても、さすがに人の脳はな。リスクが高すぎる。」

「はあ。ではなら良いのですか?効率は落ちるでしょうが。」

「例えば?」

「まずは猿などの類人猿、あとは……イルカでしょうか。」

「では、その方向で案を修正してみたまえ。」

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