第114話 追い剥ぎに襲われた
* * *
「いい買い物をしたね。何処かでオリュポナイトを見かけたら仕入れて来いってシャルから言われてたんだ」
ガベートの街門から出たラビィは凧を畳んだ
「そろそろ喋っても良いな。なぁ、ラビィ、今日は野宿か?」
ガベートの街にいる間中、ずっと喋らなかった俺に対して、ラビィがずっと一人で喋っていた。
「ああ、ガベートの街はあまりいい噂を聞かないからね。あの武具屋も主人は純粋な商売人みたいだけど、その回りがそうでもなさそうだし」
「ん? そんな情報いつ掴んだんだ?」
俺はずっとラビィと一緒にいたが、そんな話は聞こえてこなかったし、その情報を聞き回ってもない。
「ほら、親父は忘れてるのかい? ボクは異常に目と耳が良いってさ」
俺には全く聞こえてこなかった会話がラビィには聞こえていたということか。
「そうなのか?」
「そうさ。殺すだの奪うだの、酷いもんさ」
「じゃあ、門を出る前あたりからずっと付いてきているあいつらの狙いは……」
俺たちから大分離れているが、冒険者らしき三人が付いてきている。弓使い、クロスボウを背負っている剣使いに、槍使いの男どもだ。
「ボクらしいよ。貴重な武器を持っていたり、役に立たない金属を道楽で買える財力を持っていると思われてるね。だから手持ちの金を奪うもよし、他の貴重品を奪うもよし、身元が割れれば誘拐して身代金を請求するもよしだって。泳がせてみて仲間が居ないようだったら軽く襲ってみようってさ。弱いようだったらカモる気らしい」
「どうする?」
「うーん、このまま逃げても良いけど、飛んでいくのを見られたくは無いな。それとちょっと話をしてみたいな」
俺は三人のうち一番強そうな男を鑑定してみた。
弓を手にした冒険者風の男。
攻撃 4
技 4
速度 3
防御 2
回避 2
「弓を持っているやつが一番強い。こいつ一人でゴブリン三匹をソロで狩れるぐらいの強さだな」
「ありがとう親父。どいつが一番強いかを知りたかったんだ。やっぱりリーダーが一番強いんだね」
背負子を地面に降ろしながらラビィが言った。
「リーダーは弓使いって知ってたのか?」
「ああ、他の二人に
遠くで三人が何か喋っている。最後の方は笑い合っていた。
「あいつら、なんて言ってる?」
「めんどうだから、矢で射て動きを止めてみたらどうだろうって話になってるね。最悪当たりどころが悪くて死んでも、物品を回収したら良いだろうってさ。むしろ仕事を早く切り上げて酒を飲みに行けるから最悪でもないな、とも言ってる。さてと」
荷物を降ろし身軽になったラビィは軽くストレッチをして、三人が向かってくる方に向かって正対した。
「大丈夫か?」
「姉貴との死闘よりこっち、タイマンで負けたことはないよ」
「お前の武器はマチェットガンだけか?」
「遠距離ではね。近接戦闘なら無手だよ」
無手のラビィ。
攻撃 2
技 3
速度 4
防御 2
回避 6
俺の剣聖の力を使った鑑定では、鑑定対象が能力を使った場合の数値は見積もれない。
「不安だな」
「大丈夫さ。どうしようもなくなったら脱兎のごとく荷物を捨てて飛んで逃げるからね。ボクがこんなに余裕に振る舞えるのは親父が教えてくれた飛行能力のおかげだよ」
三人はしばらくこちらに気づかない振りをしながら歩く速度を変えずに近づいてきた。ラビィも動かず左手を腰に、右手をだらりと下げて待ち構えている。
奴らがゆっくりとこちらに近づいてきて、その表情が詳しく見える距離になったと思った瞬間、クロスボウを背負っていた男がそれを構えラビィに向かって矢を放った。弓使いも矢を番えている。槍使いはこっちに向かって駆け始めた。
クロスボウの矢はラビィの左腕の数センチ外側を飛んでいった。ラビィはそれでも微動だにしない。すぐさま弓使いが矢を放つと、ラビィは一歩右にずれる。直後に元々ラビィがいた左太腿あたりを矢が素通りしていった。
ラビィはだらりと下げた右手でマチェットガンを掴みホルスターから抜いた瞬間、火薬が炸裂する音がした。腰だめに水平に構えられたマチェットガンの銃口から薄っすらと煙が上がってる。
「ぐわっ!!」
弓使いが弓を落とし、左手で右肩を押さえた。槍使いは真っ直ぐこっちに突っ込んできている。クロスボウを捨てた剣使いは弓使いの異変に気づいた。
左手で腰の後ろの細長いケースから長い棒を取り出したラビィ。それをマチェットガンの先端から素早く押し込み、すぐに引き抜く。そしてマチェットガンの先端を槍使いに向け、撃った。
槍使いが槍を放り出して地面に倒れこんだ。ラビィが二番目に的として選んだのは槍使いだった。その様子を見ていた剣使いは柄に手を置いたまま動けなくなっていた。
「やばい! ずらかるぞ!」
剣使いが叫ぶ。
ラビィは再び腰の後ろの細長いケースから取り出した棒を、マチェットガンの先端から押し込み引き抜いた。先込め式のマチェットガンに弾を装填しているのだ。棒の先端は弾を掴める様になっているのだろう。
槍使いは素早く立ち上がりこちらに背を向け走り始めた。大した怪我はしていない様だ。剣使いはすでに逃げ出しており十数メートル分向こうに離れている。弓使いは右肩に左手を当てたままラビィを睨んだ後、こちらに背を向け逃げ始めた。
「全員逃げるみたいだぞ?」
「話をするなら、やっぱりリーダーが良いよな?」
ラビィは革でカバーされているマチェットガンの刃の部分を左手で下支えし、スナイパーの如く狙いを定めた。
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