第74話 ラビィの事を知ろうとした

「じゃあ、私はモモと話してくるから、あなた達は……、まぁ、適当にやっておいてね」


 そう言ってパイラは歩みを早めて先行しているモモとシャルのところに行った。


「なぁエコー。ボクは君をなんて呼んだら良いんだい?」

「エコーで良いだろ。あと、そろそろ離してくれ」

「う~ん。それだと普通なんだよな。さっきの話によるとエコーはボクの命の恩人でもあるわけだし」

「好きなように呼んだら良いさ。だから、そろそろ離してくれ。あと、頬ずりするのは止めてくれ」

「あ、そうだ。親父おやじってのはどうだろう。親っさんって感じじゃないしな」

「おい、よせ! お前は親父とキスをしようとするのか!?」

「え? やだなぁ。親父には唇は無いじゃないか。嘴はあるけどさ」

「ラビィ! 人の話を聞けよ」

「親父は人じゃないけど言うことは聞くぞ? で、何だい?」

「離せ」

「……。分かったよ」


 ラビィはようやく俺を離してくれたので、荷車の縁に飛び移った。


「あ、そうだ。親父にはこれを渡しておきたいんだ」


 そう言うとラビィは俺が渡した貝殻を取り出した。


「貴重な魔法装備アーティファクトだろ? 良いのか?」

魔法装備アーティファクトが重要じゃないんだ。親父と繋がっていると実感できることが重要なんだ。この魔法装備アーティファクトはボクのものとついなのさ」


 そう言うと、ラビィは前襟から上着の中に手を突っ込んで紐が通った巻き貝を取り出した。


「な? 同じだろ?」


 確かに同じものに見える。


 取り出した巻き貝を上着の内側に仕舞うと、ラビィは俺の方に寄って来て巻き貝に通った紐を俺の首に緩く括った。


「相手に音声を飛ばすには、『シェルオープン』って合言葉を言うんだ。止めたい場合は『シェルクローズ』だ」

「なんだよ、その変な合言葉は」

「知らないよ。そう決まってるんだから仕方ないのさ――」


 そう言ったラビィは突然振り返り、モモとパイラが居る方を見た。


「どうした?」

「姉貴がボクの名前を呼んだみたいだ」

「モモが何か言ったのが聞こえたのか?」


 俺は聞こえなかったが。


「ああ。ボクは耳と目がかなり良いからね。ほら見てみなよ。ボクが振り返ったのに気付いた姉貴が、ボクの事を地獄耳って言ってるだろ?」


 ラビィの視線の先で、モモがこっちを指さしていたが、すぐにパイラを自分に引き寄せヒソヒソ話をし始めた。


「二人は何を話していたんだ?」

「さっきまで親父と話してたから、全部は聞こえなかったさ。ただ、パイラ姉さんがモモの姉貴に何か指示しているみたいだ」

「そうか……。あ、そうだ。モモと言えば、お前はモモをどう思ってるんだ? まさか恨みとか有ったりするのか?」

「姉貴の事かい? うーん。越えるべき壁……、かな?」

「壁? モモはお前を邪魔しているのか?」

「いやいやいや、そうじゃないんだ。モモの姉貴はお袋やミナールの兄貴に認められてるだろ? ボクもそうなりたいのさ」

「そんなにモモはバーバラから認められているのか?」

「だってさ、お袋は手元に姉貴を残してボクをミナールの兄貴の元に引き渡したし、兄貴も姉貴が旅に出たと知ったら手の届く範囲に連れ戻そうとしたんだ。あと姉貴は剣術に長けているのにボクは格闘がそんなに得意じゃない。能力だって姉貴のは恐ろしく強力なんだけどボクのは使いにくいんだ。パイラ姉さんも親父を姉貴に預けたんだろ? ボクが親父を見初みそめる前に……」


 モモが皆に認められているってのはラビィの勘違いじゃないか? 努力は惜しまないし腕は確かだが、自分勝手だしモモはそんなに贔屓ひいきする対象じゃない気がするが……。


 まぁ、モモというやつは世話をするには大変なやつだが、憧れたり目指したりするには丁度良いのかも知れない。ただ、同じ土俵で勝負しようってのが間違いなんだ。あの努力を惜しまない戦闘バカはあまりにも強大だろうに。


「お前はそれをモモに言ったことが有るのか?」

「もちろん無いさ。それをやってしまったら乗り越えられないだろ?」

「でもモモを殺そうとしてたぞ。乗り越えられない壁なら壊してしまえと言う勢いで」


 ラビィはモモを倒す為に自爆する勢いだったし……。


「う~ん、それはよく覚えてないや」


 我を忘れてってやつか?


「でも、今は親父はボクの面倒を見てくれるんだろ? 姉さんとの約束がある様だし。まず、どんな事をしてくれるんだい」

「おい! どうして唇を尖らせて両目を閉じてるんだ!」

「え?! 違うの?」

「何がどう違うかも分からんわ! ……それはさておきだ。取り敢えずお前の能力を教えてくれ」

「ボクの能力?」

「ああ、爆発する物質を生成できるって事は知っている。詳細を教えてくれ」

「もちろん良いとも。でもとても使いにくいんだ」

「その使いにくさも教えてくれ」

「分かった。ボクの能力は爆発する球体を空中に生成できるというものだ。そこに何かあったら、例えば壁があったら生成できない。水中だと水があるから生成できないぞ。そして、生成する際に爆発する威力と爆発する時間を設定できる。生成後にその設定は変更出来ないんだけれどね。そしてその設定は距離に応じて制約がある。肌に近ければ、爆発する時間をゼロから三秒後に設定できるし、威力もほぼゼロから超強力な程まで設定できる。もちろん超強力な威力がどのくらいか試したことはない。ボク自身が吹き飛んでしまうからね」

「肌からの距離は人差し指のちょっと先も、足の裏のちょっと先も同じなのか?」

「そうだよ」

「肌からの距離が遠くなるとどうなる?」

「爆発物質を発生させる距離が遠くなると、瞬時に爆発させられなくなるんだ。あと、設定できる最大威力がかなり低くなってしまうね」

「最大距離はどのくらいだ?」

「20メートルぐらいだね。でもそのくらいの距離になると三秒後にパチンと音がなるぐらいだ。三秒より短く爆発する様に設定はできない。」

「半分の10メートルだとどうなる?」

「三秒弱でパンって音がなるぐらいかな」

「なるほどね、性能が距離に反比例してるのか」

「反比例?」

「ああ、気にするな。肌の近くで三秒後に最大出力爆発するやつを作ってそこから離れたらどうなるんだ?」

「時間の変更は出来ないけど、威力はボクからの距離に応じて弱くなってしまうぞ」

「なるほど……。爆破物質の形状は選べるのか? あと一度に幾つ作れる。連続で作れるのか?」

「小さな球で大きさも一定さ」


 親指と人差指で一センチぐらいの球を発生させて、それを見せながらラビィは言った。その直後にそれはパチンと弾けた。


「無理しないで呼び出せる数は二個ぐらいだ。爆発させてしまえば次の爆破物質を瞬時に作れるぞ。お袋からは三個以上同時に呼び出すなって言われてたな……。そういう能力なんだよボクのはね。……な? 使いにくいだろだろ?」


 そのまま使うんだったらな。


「ところでお前、トンファーを使ってたな」

「アーケロンが勧めてくれたんだ。接近しなければ高威力の爆破を使えないし、素手で接近したら怪しまられるし、防御に使えるからって言ってたぞ。あれ? ボクのトンファーが無い」


 ラビィは自分の腰の周りを手で探りながら言った。


「モモと戦闘しているときに、お前の爆破能力で形を残すこともなく吹き飛んでしまったぞ」

「……そうなんだ」

「ふむ……」

「どうしたのさ、考え込んで。ボクのトンファーに何か思うところがあるのかい?」

「う~ん。そうだな。結論から言うとお前は接近戦では永久にモモに勝てないな」

「ええ~。どうするんだよぉ、親父ぃ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る