第10章 呪いの館を手に入れてみた
第85話 娯楽を考えてみた
本日、漫画4巻発売! 「お前の全てを否定してやる」ポーズのローナが目印です!
◇これまでのあらすじ
追放されてインターネットが覚醒 → 冒険者になる → エルフの隠れ里・港町アクアス・海底王国アトランを救う → 王都で屋台コンテストする → 伝説の黄金郷を観光し、邪神と崇められる → 邪神テーラの封印を解いて地上につれてくる → 王位簒奪する → なんか王都の危機を救ったことになる
◇ローナ・ハーミット
インターネットが大好きな普通の女の子。
趣味はスロットとソシャゲ。
◇ドールランド商会
王都随一の大商会。
最近は商会長のメルチェの主導で、インターネットにあるものを再現している。
元スパイのコノハも所属している。
――――――――――――――――――――
「――えっちこんろ点火? えちちちちちち?」
とある日の王都にて。
ローナによって邪神テーラによる危機が去り、街全体がお祝いムードに包まれている中――。
「……薩摩ほぐわーつ? 人間火薬樽? 連鎖あばだけだぶら? ――わぁっ、綺麗! 私もやってみたい!」
ドールランド商会の応接間には、光の画面(他人には見えない)をつんつんしながら、ぶつぶつと独り言を呟いているローナの姿があった。
傍から見ていると、すごく不審であった。
「……えっとさ、ローナ? いつも以上に不審だけど、さっきからなにしてるの?」
ローナがなにかやらかさないか見守っていた友達のコノハ(元スパイ&現ドールランド商会従業員)が、たまらずといったように声をかけると。
「え? ああ、これは――インターネットで“本当の世の中”について勉強してるんです!」
「本当の世の中」
と、そんなパワーワードが返ってきた。
「というのも、私……実はあまり世の中の常識とかにくわしくなくて」
「そうだね(即答)」
「最近まで、“詫び石”や“エクストリーム土下座”という当然のマナーも知らなかったぐらいで」
「そりゃ、最近ローナが爆発的に流行らせたものだからね」
「そんなわけで、もっとインターネットで“真実”を知って、私もいつか立派な“情強”になりたいなって思ったんです!」
「…………なるほど」
そう、最近のローナは、滅びかけていた町や国を救ったり、神話の大怪物と戦ったり、真の邪神の座をかけて決闘したり……と、さまざまな事件に巻きこまれがちだが。
つい1か月ほど前に家を追い出されるまでは、実家に引きこもっているような身だったのだ。
そんな世間知らずのローナが今、こうして自由に楽しく生きていられるのも、全てインターネットのおかげにほかならない。
なぜなら――インターネットとは、いわば神々の書架。
そこに書かれているのは、みんな正しい情報なのだから。
と、そこで。
「……ま、たしかにインターネットほどのスキルを持ってるなら、活用しないのは宝の持ち腐れね」
そう言って、書類仕事をしていた商会長のメルチェも話に加わってきた。
「……ちなみに、ローナ? そのインターネットで、“屋内でできる娯楽”なんかは調べられる?」
「屋内でできる娯楽、ですか?」
「……ええ。今度、王城で英雄エリミナ・マナフレイムを歓待するパーティーがあるんだけど、その企画と運営をうちの商会が任されてて」
「えっ、エリミナさんのパーティー!?」
――エリミナ・マナフレイム。
それは、『焼滅』の異名を持ち、炎を自在に操る高潔なる魔女の名だ。
聖女のような気高さや慈愛を持ち、神々の間でも薄い
そして、旅に出たばかりのローナを優しく導いてくれた、ローナの大恩人にして憧れの女性である。
「で、でも、私……パーティーのこととか、くわしくないですよ? それも王城でやるようなパーティーなんて――」
「……むしろ、それがいいのよ」
「え?」
「んまー、普通にパーティーするだけなら問題はなかったんだけどね。ただ、あたしのデータによると、最近のお祝いムードでパーティーがマンネリ化してるみたいでさー」
「……退屈だなんて思われたら、うちの商会の沽券に関わるわ。なんとしてでも目新しい要素を入れて、パーティーを成功させたいの……そこで、インターネットの力を借りられたらなって」
「なるほど、それはたしかにインターネットの出番ですね……わかりました! エリミナさんのためにも、ナウなヤングにバカウケする“ちょべりぐ”なパーティーを考えてみます!」
「なぜだろう。すごく不安になってきた」
というわけで、さっそくインターネットで“屋内でできる娯楽”について調べてみることに。
エリミナのパーティーを成功させたいというのは、ローナも同じ思いだが……。
(うーん、そういえば……神様たちの娯楽って、“そしゃげ”ぐらいしか調べたことなかったな。ただ、それだと私しか遊べないし――ん?)
と、インターネットを操作すること、しばし。
ローナはたまたま検索結果に出てきた“それ”を見つけ――。
「――こ、これだっ!!」
と、思わず叫んだ。
「も、もうなんか見つかったの?」
「はい! 神様たちに大人気の娯楽で、しかもパーティーにも使えるみたいでして……とりあえず、これを見てください!」
「「……こ、これは!?」」
それは、情報通のメルチェとコノハをもってしても見たことのないものだった。
いや……おそらくは、この世界にない娯楽なのだろう。
どうやって遊ぶのか、この場にいる誰もわからない。
それなのに…………わかる。
ただ見ただけで理解してしまう。
まるで、魂に直接語りかけられるように――。
――“これ”は絶対に楽しいやつだ、と。
「……ローナ、これはいったい?」
「はい、この娯楽の名は――」
そして、ローナはついにその名を告げた。
「――“任○堂Sw○tch”です!」
…………却下された。
(うーん、ほかに神様たちに人気の娯楽は……ばとるどぉむ? ちゃくら宙返り? ぽんくらっしゅぱっぱっぱ? わぁっ、どれも楽しそう! ……だけど、やっぱり再現が難しそうかなぁ……って、あれ? そういえば――)
そこで、ローナはふと呟いた。
「そもそも、神様たちってどういうパーティーをやってるんだろ?」
「あっ、たしかに、それは気になるかな」
「……なるほど。ローナは既存の『パーティー』という枠組みにとらわれず、『パーティーの形そのものを変えよう』と言いたいのね。さすが、ローナ……」
「? よくわかりませんが、とりあえず調べてみますね!」
そう言って、ローナはインターネットでふたたび検索をし――。
そして、知る――神々のパーティーを。
「……ぱりぴ? やりらふぃー? 諸葛孔明?」
ローナはしばらく、インターネット画面を見つめたあと。
「――こ、これだっ!!」
と、ふたたび背筋に電流が走るのを感じたのだった。
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