第84話 閑話・カジノでリベンジしてみた


※5/9、漫画4巻発売!

ちなみに、漫画は「マガポケ」「ニコニコ漫画」「月マガ基地」などで連載もしてますので、ぜひこちらも!

――――――――――――――――――――




「――よーし、今日こそリベンジするぞぉっ!」


 というわけで、ローナはいつものようにカジノにやって来ていた。


 ローナの目の前に広がっているのは、きらびやかな金世界。

 最初に入ったときは、『ば、場違いじゃないかな……?』とおろおろさせられた光景だが、今のローナには第2の実家とも言えるような安心感さえある光景だった。


(うん、私も成長したってことだね!)


 といっても、最近はその第2の実家に、金をしぼり取られてばかりだったが……。


 しかし、今日のローナは一味違った。



(――ふふん! 今回はインターネットでちゃんと“勉強”してきたもんね!)



 インターネットによると、このカジノには『誰も知らない必勝法』があるらしく、それを特別に教えてくれている親切な神々がいたのだ。

 

 さらに今回は、この道にくわしい港町アクアスのアリエスからも、勝つための秘訣を伝授してもらっている。



『――いい、ローナちゃん? 賭け事っていうのは勝とうとしちゃダメなの。いかに負けないかが大事なの。それを、けっして忘れちゃダメよ?』



 そう微笑んで、杖を質屋に持っていったアリエスの仇を討つためにも――。

 今日ここで、長きにわたるカジノとの因縁に決着をつけなければならない。


 というわけで、ローナはむんっと気合いを入れると、さっそく受付のバニーガールのもとへと向かった。


「こんにちはー!」


「いらっしゃいませ! いつもお越しいただきありがとうございます、ローナ・ハーミット様! 本日もカジノコインを買っていきますか?」


「はい!」


 ローナはそう返事をして。


 ――どんっ! と。

 アイテムボックスから金貨がつまった袋を取り出した。



「――このお金を、全部カジノコインに換えてください!」



「…………へ?」


 と、バニーガールが一瞬フリーズする。


「え……ええっ!? よ、よろしいのですか!? いつも負けてるくせに!?」


「はい! あっ、それと……」


 ローナはインターネット画面を見ながら。



「キーワード――“王は金なり”」



 その言葉を告げた。


 これは、“VIPルーム”という、1ランク上のカジノルームに入ることができる合言葉らしい。

 VIPルームだとさらにカジノを楽しめるということで、半信半疑で言ってみたが。


 その言葉の効果は――劇的だった。





「……………………へぇ?」





 バニーガールの顔に貼りついていた営業スマイルが、すぅっと消えていく。


「…………では、こちらへ」


「え? あ、はい!」


 バニーガールにうながされて、ローナは『スタッフオンリー』と書かれた扉へと入っていく。

 それから、しばらく階段をおりていき――。


「…………こちらです」


「わぁぁっ!」


 やがて通されたのは、ローナが慣れ親しんだカジノよりも、さらに豪華なカジノだった。


 宝石がふんだんに使われたシャンデリア、金糸の刺繍が入ったふわふわの赤絨毯、乱れ舞うトランプ、天井まで積み上げられたコインタワー……。


 さらには、なぜか屋内なのに噴水や滝まである。

 さすがはVIPルームといったところか。

 そこにいる客たちも、見るからに大富豪という感じの人たちだ。


(やっぱり、インターネットに書いてある通り!)


 と、ローナは少しテンションを上げつつ、VIPルームに足を踏み入れると――。




「「「………………」」」




 じっと品定めするような目が、客たちから向けられた。


(……? なんで見られてるんだろ? もしかして、ドレスコードとかあるのかな……? でも、インターネットにはそんなこと書いてなかったし……)


 と、ローナはきょとんと首をかしげる。



 ……ちなみに、ローナはまだ知らなかった。


 この“VIPルーム”が、『国の重要人物VIPたちが集まる場所』であるということを。


 そして、今この瞬間にも、この場所で――大商人が破産をし、貴族の勢力図が塗り替えられ、この国の新たな支配者たちが誕生しているということを。


 ここはいわば、VIPたちの主戦場であり、政治的な殺し合いの場であった。



「…………それでは、ごゆるりとおたのしみください」



「はい! 楽しみます!」


 こうして、バニーガールが去ったあと。


(とりあえず、今日はルーレットをやるから……)


 と、ローナは迷いなく歩みを進めていき、ルーレットの台にちょこんと着く。

 その瞬間、同じ台についていた多くの者は、びくぅっと体を震わせ……。

 

 そして、残りの者は――どっと笑いだした。


「ははははっ! 嘘だろ、こんな子供がVIPだと?」

「おいおい、ここは嬢ちゃんみたいなのが来るようなところじゃ――」


 しかし、彼らの笑い声は、ローナのたった一言で霧散した。





「――――赤の3に全賭けオール・イン





「「「………………は?」」」


 ローナがカジノコインの山を置きながら、ディーラーに向けて宣言する。


 しばしの静寂。そして――。

 周囲の客たちが一斉に、ざわ……ざわ……と動揺の声を上げた。


「……お、おい? 聞き間違いじゃないよな……?」

「あれだけのコインを全賭けオール・インっ……!? そ、それも、一点賭けストレートアップだとっ……!?」

「っ……! あ、ありえねぇ、正気じゃねぇっ……!」


 そう、VIPルームでは一度に賭けられるコイン数に上限がない。

 だから、自分の財産を“全賭けオール・イン”ことさえもできてしまう。


 しかし、もちろんこんな賭け方をする者がいるはずもない。

 いるとすれば、それはただの大馬鹿者か、あるいは――――。


「み、見ろ、あのなにも考えてなさそうな顔をっ……! 俺にはわかるっ……! あれは、生まれながらの勝負師の顔だっ……!」

「お、俺たちは“殺される”んだぁああっ……!」


 と、たちまち混乱におちいる客たち。

 緊張に耐えきれなくなった者が椅子から転げ落ち、あるいは悲鳴を上げてその台から逃げだし――。



(……? なんか、騒がしいなぁ)


 一方、その混乱の元凶であるローナは、ぽけーっとした顔で首をかしげていた。


(まあいっか! とにかく、今日こそは絶対に勝つぞぉ!)


 そう……ローナの賭け方は、どう考えても大馬鹿者の賭け方だったが。

 しかし、ローナにはこのやり方で勝てるという“確信”があった。

 なぜなら――。




(――だって、「わざ○ぷ」って攻略サイトに書いてあったもんね!)




 インターネットに書かれていることに間違いはない。

 それは、いわば神々の書架。

 そこに記されているのは、全て――この世界の真実なのだから。


(えへへ♪ まだかな、まだかな♪)


 そして、誰もが固唾をのんで見守る中……。



 運命のルーレットが、ゆっくりと回りだしたのだった――――。




⇐To Be Continued…



――――――――――――――――――――

■裏技/【カジノ必勝法! 色違いカジノコインゲット!】


簡単です!

まずはじめに、所持金を全てカジノコインに換えます。

このカジノコインをアイテムボックスの一番左上にしまいます。

(※注意! 必ず所持金を0シルにすること! 最後にお金はちゃんと戻るので安心してください!)


VIPルームに入ったらルーレットの台につき、左上のマス(赤の3)に全てのコインを賭けます。

うまくいくと、アイテムボックスの左上が色違いカジノコインになっています! このカジノコインには、なんと通常コインの1億倍の価値があります!



結果:カジノで勝てる!

――――――――――――――――――――






――――――――――――――――――――

公式サイトの書き下ろしSS(無料公開)もぜひ~。


1巻SS「エゴサ」

https://magazine.jp.square-enix.com/sqexnovel/special/2022/sekaisaikyonomajo01_ss.html


2巻SS「掲示板に降臨してみた」

(もともと本編に入れる予定だった回で、本作の世界観について触れています)

https://magazine.jp.square-enix.com/sqexnovel/special/2023/sekaisaikyonomajo02_ss.html


ちなみに、ノベル1〜2巻特典SSも頑張って書いたんですが、

(「クリスマス」「お土産選び」「キャンプ」「海水浴」「エイプリルフール」の5本)

もしどこかで手に入りそうならぜひ~。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る