第58話 船旅をしてみた③
――――――――――――――――――――
■ローナ・ハーミット Lv68
[HP:564/564][MP:98120/432]
[物攻:430][防御:3025][魔攻:3877]
[精神:6041][速度:440][幸運:629]
◆装備
[武器:世界樹杖ワンド・オブ・ワールド(SSS)]
[防具:水鏡の盾アイギス(S)][防具:終末竜衣ラグナローブ(S)]
[防具:原初の水着~クリスタルの夜明け~(SSS)][防具:猪突のブーツ(B)]
[装飾:エルフ女王のお守り(A)][装飾:身代わり人形(F)]
◆スキル
[インターネット(SSS)][星命吸収(テラ・ドレイン)(SSS)][エンチャント・ウィング(S)][猪突猛進(B)][リフレクション(S)][水分身の舞い(SSS)]
[魔法の心得Ⅹ(C)][大物食いⅣ(D)][殺戮の心得Ⅴ(D)][竜殺しⅠ(C)][錬金術の心得Ⅴ(D)][プラントキラーⅠ(F)][スライムキラーⅠ(G)][フィッシュキラーⅢ(E)]
◆称号
[追放されし者][世界樹に選ばれし者][厄災の魔女][ヌシを討滅せし者][終末の覇者][女王薔薇を討滅せし者][雷獅子を討滅せし者][近海の主を討滅せし者][暴虐の破壊者][水曜日の守護者][原初を超えし者][大海蛇を討滅せし者]
――――――――――――――――――――
「………………」
ローナのステータスを確認したスパイ少女コノハは、無言でフリーズした。
何度か目をこすったり、石板をぶんぶん振ったりしてみるが、情報は変わらず――。
(…………やばいやばいやばいやばい)
コノハの全身から、どばぁっと冷や汗が出てくる。
いったい、このステータスがなんなのか、コノハにはわからなかったが。
――――見てはいけないものを見てしまった。
ただ、それだけは理解できた。
各能力値は、人類の限界値の999を軽く超えてるし。
もはや、魔王とか邪神とかそういう類のなにかだとしか思えない。
そして、さらに異様なのは称号だ。
(……厄災の魔女? 終末の覇者? 暴虐の破壊者?)
どれもコノハのデータにはない称号だが。
とりあえず、かなりやばいものであることはわかる。
そして、けっして誰にも見られたくない称号であろうことも……。
(もし、ステータスを見たことが、ローナ・ハーミットに知られたら……)
…………消される。
ちょうど、そんな考えが頭をよぎったときだった。
「――あのぉ。コノハちゃん、でしたよね?」
「ひゃんっ!?」
いきなりローナに話しかけられ、コノハが乙女みたいな悲鳴を上げた。
「な、なな、なに? どしたの!?」
「いえ、大丈夫かなーっと心配になって」
「し、心配?」
「はい。なんだか……『見てはいけないものを見てしまった』というような絶望的な顔をしていたので」
「………………」
「コノハちゃん?」
「……ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
「コノハちゃん!?」
いきなり土下座しだしたコノハを前に、おろおろするローナ。
「だ、大丈夫ですか、いきなりうずくまって? 顔色も悪いですが……もしかして、船酔いですか?」
「へ? あ、うん。そうかも」
「あっ、船酔いでしたら、ちょうどいい薬がありますよ!」
「あ、ありがと。それじゃ、もらおっかな」
コノハが混乱しつつも、緑色の液体が入った薬瓶を受け取った。
(……あれ? スパイだとバレたわけじゃないのかな?)
とりあえず、もらった薬を少量ずつ舌に落としてみるが、毒が入っている様子はない。むしろ、飲むそばから体力が回復していくのがわかる。
どうやら、コノハを抹殺しようとしているわけではないらしい。
(いや……てか、回復しすぎじゃない? なんか古傷も消えてきてるような)
こんな薬は、もちろんコノハのデータにはなかった。
「す、すごい効き目だね。ちなみに……なんて薬なの、これ?」
「エルフの秘薬です!」
「ぶふぉぇッ!? げほぉっ! ごほぉっ!」
「わっ、落ち着いて飲んでくださいね。エルフの秘薬はたくさんありますから」
「たくさんあるの!?」
「えへへ。実は……私も乗り物酔いのときは、よく飲んでるんです!」
「嘘でしょ!?」
コノハの薬瓶を持つ手が、がたがたと震えだす。
エルフの秘薬――それは伝説に語られる万能薬だ。
(こ、こんな薬が量産されたなんて、あたしのデータにはないっ! もしかして、あたしは今、とんでもない国家機密に触れてるんじゃっ!?)
万能薬の量産。
それが真実ならば、この世の常識がひっくり返るだろう。
しかし、それよりも謎なのは、万能薬をぽんっとわたしてきた少女の存在だ。
「えっと、ローナってさ……いったい何者なの?」
コノハはつい我慢できずに尋ねてしまった。スパイとしてはあまりに粗末な情報の引き出し方だったが、聞かずにはいられなかったのだ。
はたして、ローナの答えはというと。
「? 私はどこにでもいるフツーの一般人ですよ?」
「んなわけあるかっ!」
それは、監視対象に対するコノハの人生初ツッコミであった。
(う、うぅ……どうしよう。倒すとか言っちゃったけど、こんなのに勝てるわけないしぃ。データはいろいろ手に入ったはずなのにぃ)
ローナ・ハーミットのデータを得れば得るほど、謎が増えていく。
もはや、『大手柄を上げれば、使い捨ての
手に入れた情報をそのまま報告しても信じてもらえるわけもない。それどころか、ガセネタをつかんだポンコツスパイ扱いをされるのがオチだろう。
とすれば、まだまだローナ・ハーミットの監視を続けなければならないが……。
(い、胃が痛い……ど、どうしてこんなことにぃ……っ)
と、コノハがちょっと涙目になっていたところで。
「あっ、コノハちゃん! 王都が見えてきましたよ!」
「へ?」
ローナの声に反応して、コノハが顔を上げると。
船の前方――水平線の彼方から陸地が見えてきた。
陽光を浴びて金色に輝いている広大な街並み。
オライン王国の首都――王都ウェブンヘイムだ。
「わぁ、すごい! 楽しみですね、王都!」
「うん……あたしはもう、帰りたくなってきたけどね」
「?」
ぴょんぴょんとテンション高く跳びはねている
――――――――――――――――――――
本日の更新はここまで。
明日からは1日1回、18時更新でいきます(たぶん)
それと、4月に書籍2巻を出すにあたって、1巻に引き続きレーベル公式サイト書き下ろしSSを書きました。無料公開されているので、こちらもぜひ。
https://magazine.jp.square-enix.com/sqexnovel/series/detail/sekaisaikyonomajo/
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます