『運命酒』

やましん(テンパー)

『運命酒』


 あるひ、山の中で、道路脇に、倒れているたぬきさんがいました。


 車を止めて、抱き起こしてみれば、生きています。


 気絶しているようでした。


 ペットボトルのお水をあげたり、さすってやったりしたら、目を覚ましました。


 『やあ。いやあ、しくじったぜぇ。酔って崖から落ちたんだ。介抱してくれたか。ちょっくらついでに、このずだぶくろに、薬いれがある。一粒飲ませてくれ。それだ。』


 ぼくは、昔のきんちゃくみたいな袋から、丸めた泥みたいなのをつまんで、たぬきさんに飲ませました。


 『やれやれ、も、ダイジョブだ。お礼をしたいが、この薬は人間には効かない。そうだ、これ、やるぜ。』


 たぬきさんは、とっくりを首から外しました。


 『これはな、『運命酒』というさけだ。うまく使えば、役に立つ。下手に使っても、まあ、役に立つがな。要するに、この世の中の運勢が、みんな、あんたに有利になる。宝くじ買うときに飲んでみろ。かならずや、一等が当たる。ただ、なんの運を掴みたいか、しっかり決めて、祈らなきゃだめだ。曖昧はだめ。また、効果は、その出来事の2日前にやらなきゃ、でない。例えば、死ぬ2日前に、死なない! と!飲んで祈るんだ。タイミングが問題だ。2合入ってたが、ちょっと飲んだんでな。ま、しばらくしたら、満杯になるがな。じゃ、あばよ。がんばれ。あ、人にあげるのは、二回が限度。それ以上は、利き目がなくなる。それと、とにかく、自分で飲まないと効かないよ。調べたりしたら、お酢になる。』


 たぬきさんは、あっという間に、山のなかに消えました。



 ぼくは、しばらくは、放心してましたが、やがて自動車に乗り、自宅に向かったのです。



     ▲▲‡‡‡‡🍶◇●●●●



 『これが、そのときの、とっくりです。あなたに、分けてあげましょう。あなたが、二人目です。たぬきさんが言ったように、使い方が問題です。なにせ、相手は、たぬきさんだから。ははははは。』


 と、いうわけで、ぼくを、突き飛ばして、崖から転がしたおじいさんは、入院の面倒を見てくれたあと、そっと、ちょっと小さめのとっくりに、『運命酒』を分けてくれました。


 むかしから、きつねさんと、たぬきさんのプレゼントには、いかにも怪しい雰囲気がつきまといます。


 一方、ごん、のような律儀なきつねさんもありました。


 この、おじいさんは、まもなく、200歳になると言います。ほんとかしら。免許証を見せてくれましたが、たしかに、1820年生まれ、と、なっています、です。


 あやしいなあ。怪しいよ。


 ちなみに、ぼくは、まだ、60半ばです。


 『あんた、今のうちに飲んだ方がよいな、では、援助しよう。生き延びる、と、強く願いなされ。』


 ぼくは、かなり怪我がひどく、話せませんでした。

 

 体も動きません。でも、老人は、ぼくの、吊り下げられた、腕のわきに、とっくりを挟み、無理やり飲ませたのです。


 うわ、まず〰️〰️〰️〰️😃げっ。いたあい〰️〰️〰️〰️。

 


 くっそう。これで死んだら、やつらに、復讐もできない。生きてやる、絶対に。

 

 翌日、ぼくは、一旦は、意識不明になりました。


 しかし、なぜだか、その翌日には目が覚めて、ぐんぐん、快復したのです。

 

 老人は、消えました。


 考えてみれば、ぼくを、崖から突き落としたんではないか、と、思います。



 まてまて、免許証は偽造として、あれは、誰だったんだろう。


 なんだか、むかし、見たような気がするな。


 復讐、されたのかしら。


 いやいやあ、絶対に、あり得ない話だ。


 でも、ぼくは、訴えませんでした。



 それ以来、ぼくは、とっくりと、にらめっこの毎日です。

 

 結局、ぼくは、その程度なのです。


 あすで、150歳です。


 部屋は、花束だらけです。




       🍶 🍶 🍶



           おしまい

 

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『運命酒』 やましん(テンパー) @yamashin-2

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