第10話

休み明けの月曜日、俺は学校で授業を受けていた。貰った教科書にはある程度目を通していたので、授業内容で苦戦することはなかった。

「ソワソワ、、、」

隣の席の木辺がなんだかソワソワしている。俺はそんな彼女のソワソワを横で感じながらノートを取る。


放課後、、、


「よう、待たせたな」

俺は再びよろず部の仮部室を訪れていた。

「それで、入部の件は、、、」

木辺が待ってましたと言わんばかりの勢いでこちらを見る。

「ああ、入部することにしたよ」

「ーーー!」

「やったー!これで部員が増えて楽しくなるし、よろず部も存続できるね!」

「良かった、、、」

相良と本田も嬉しそうだった。

「入部届はもう出させてもらったよ。これからよろしくな」

「よろしくね、N君!」

「そうだ、部長はどんな奴なんだ?せっかくだから挨拶しておきたいんだが」

「うん、それじゃあ、、、」

木辺は机に置いてあるノートパソコンを起動し、とある画面を表示させた。すると、、、

「おお、君がN君だね!僕は部長の等辺秀悟(らへんしゅうご)。これからよろしくね!」

pc画面にてアニメーションで美形の男子のキャラクターが喋っていた。これはいわゆる、、、

「なるほど、バーチャルってやつか?」

俺の言葉に等辺は返す。

「そうそう、知ってるんなら話は早いね。パソコンのカメラで君の姿はしっかりと見えているよ。僕自身の姿は直接見せられなくてごめんね。僕はこうやって時々部員のみんなと遠隔で話をして、活動の記録をノートにまとめてるんだ。何はともあれ、入部ありがとう。君を心から歓迎するよ」

「ああ、よろしく、等辺」

俺たちは互いに挨拶を交わし、木辺はパソコンの電源を落とす。

「これで私たち、よろず部が正式に部活として認められるね!それじゃあ早速、今日のお仕事に行こー!」

今日の依頼は家事代行と引越しの手伝いの二つ。木辺と相良は家事手伝い、俺と本田は引越しの手伝いにそれぞれ向かった。


「よっと」

俺は小さな体で冷蔵庫を持って運ぶ。

「ふむふむ、、、」

「どうした、本田?俺をジロジロ見て、、、」

「お前の体の動かし方を見てたんだ、、、なるほど、参考になるな、、、」

一体どこが参考になるんだか、、、

「なあ、N。この前のことなんだが、、、」

「ああ、2人で暴漢の相手をしたときか。それが、どうした?」

「あの時は詳しく聞かなかったが、やっぱり気になるんだ。お前がただの高校生じゃないってことだ、、、」

「う、、、」

「お前、、、」

「、、、」

一瞬の沈黙の後、、、

「特別な身体能力で小学校から飛び級してきたんだろ?」

「、、、は?」

「え?違うのか?」

「違うも何も、俺は大人だぞ!仕事の都合で、、、」

「何?大人?仕事の都合、、、?」

あ、しまった。あまりにも突拍子のないことを言われるもんだから、ついうっかり口が滑ってしまった。

「おm、あなた、大人だったのk、だったんですか!?」

「いや、無理に敬語を使わなくていい。口調がおかしくなってるぞ」

「そ、そうでs、そうか。でも、あなt、お前は年上なんだから一応、、、」

「だめだ、敬語は禁止!お前がこのことを口外しなくても、その言葉遣いでバレるだろ?」

「まあ、そうでs、そうだな。じゃあいつも通りでいく。お前にも遠慮なくタメ口を使うからな」

「ああ、それでいい。ところで、お前、かなり強いんだな。あの大人数を1人でさばき切るんだもんな」

「それはお前もだろ?でも、まあ、俺の通うジムは強豪ぞろいだからいまいちピンと来ないんだよなぁ」

俺たちはこんな感じで会話をしながら荷物を運び、仕事をこなして、依頼を完遂するのだった。


「あ、2人ともお疲れ様!これ、差し入れにどうぞ!」

俺と本田は部室で木辺から缶コーヒーを受け取った。

「おお、ありがとう、木辺」

「サンキュー」

「そう言えば、、、」

相良が口を開く。

「この前、お姉ちゃんが小さな男の子に怖い人から助けてもらったんだって。凄い勇気だよねぇ」

ん?この話、まさか、、、

「へえ、凄いな。1人で悪い奴らに立ち向かったのか、そいつは」

本田は気付いたのだろう。2人にバレないように、俺に軽くピースサインをしてみせた。

「そうなの!カッコ良かったってさー!」

俺はコーヒーを飲み干し、さよならを言って自宅へ帰るのだった。

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