第59話暴徒3 

 

 暴徒化した民衆が王宮になだれ込んだという報告を受けたのは、私が出産を終えた数日後でした。


「王宮は暴徒共に占拠されたようじゃ」


「王族の方々はどうなったのですか?」


「王家の奴らは一番に逃げだしたらしいぞ。恐らく秘密通路を通って脱出したのじゃろう」


 祖父の話では、新政権の殆どの者達が逃げ遅れた民衆によって殺されたそうです。国民の怒りは新政権の家族にも及び、幼い子供まで私刑になったようです。


「それはそうと、ヴィラン・ヤルコポルは行方不明となっている様じゃ」


「……そうですか」


 元婚約者は行方不明ですか。


「これで奴からの迷惑極まりないも来なくなるわい」


「あれは恋文などではなく救済要請です」


「ふぉふぉふぉ。ヘスティアと復縁したいと書いてあったではないか」


 そうなのです。

 私が結婚して暫くすると何故かヴィランから手紙が届きました。手紙の内容は、「私と婚約解消になってから両親や兄弟がおかしくなった。毎日が嫌な事ばかりだ。何でこんな事になったのか分からないけれど、婚約を解消した事が原因だ。だからもう一度婚約をしよう、いいだろう」といったものでした。民衆が暴徒化してからは少々内容が変わり、「助けてくれ。何故か平民が襲ってくるんだ。僕達が一体何をしたって言うんだ。まったく分からない。こんな怖い場所にはもう居たくない。母からヘスティアが懐妊したと聞いたよ。僕達に新しい家族が増えるんだね。楽しみだな」といった訳の分からないものでした。



「ヴィランは現実と妄想の区別ができなくなっていましたわ」


 


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