第25話巻き戻り

 

 ん……。

 ここは?

 私は死んだの?


 ぴくり、と指を動かす。

 長い間眠っていたみたい。

 ヴィランの声を思い出してドキドキと心臓が煩く音を立てた。


 恐々と目を開けてみたら見慣れた天蓋。

 私……生きてる?


 手足が酷く重い。

 何とか体を動かしてベッドから起き上がり、周りを見渡す。


 どう見ても私の寝室だわ。


 一体どうなっているの?



 寝室のドアをノックする音の後に、メイドが入室してきた。


「おはようございます、お嬢様」


「おはよう……」


 メイドがカーテンを開けると朝日の光が部屋に入ってくる。

 その光景を眺めているとメイドは驚いた顔をして私を見ていた。


「お嬢様、やはりまだ安静にしていた方が宜しいのではありませんか?」


「安静……?」


「はい。昨日漸く熱が引いたとはいえ、やはり無理はいけません。主治医の先生からも無理は禁物と仰っていましたので……その……」


「どうしたの?」


「今日のヴィラン様の誕生日パーティーは取り止めになさった方が宜しいのではないかと思うのですが……」


 誕生日パーティー?

 ヴィランの?

 あら? 

 そういえば……何時だったかヴィランの誕生日パーティーの前日まで高熱で魘されていた時があったけれど。


「旦那様もお嬢様の意向に合わせると仰っております。今回は延期という形にしてはどうでしょう? 体調も万全ではありませんし……無理をなさってお倒れになるのではと……皆も案じております」


「皆に心配をかけてしまったわ。ヴィランには申し訳ないけれど今回は取り止めにしましょう」


「はい!」


 嬉しそうに部屋から出ていくメイドは恐らくお父様に報告にいくのでしょう。もしかしたら、お父様に何か言われていたのかも。部屋の鏡を見ると幼い自分が映っていて私は声が出なかった。


 私……若返っている?

 これは一体……。

 アレは夢だったの?

 全てが夢の出来事だったというの?


 そんなバカな!

 あんなリアルな出来事がただの夢なはずがありません。


 もしかして時間を遡ったの?




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る