我が焔炎にひれ伏せ世界
角川スニーカー文庫から出ているすめらぎひよこ先生著作『我が焔炎にひれ伏せ世界 ep.1 魔王城、燃やしてみた』を読了しました。
この作品、カクヨムコン6の参加作品でしたが読者選考に残る事が出来ず、その後の第27回スニーカー大賞に出したら12年ぶりの大賞を受賞した作品です。
自分がこの作品を知ったのは拙作をスニーカー大賞に出そうと思って調べていた時なので、既に大賞を受賞した後でカクヨムからは非公開になった後でした。
ですので、書籍化されたら是非読んでみたいと思っていたのです。
読んでみた感想を書きたいのですが、ネタバレを含む内容になる為、まだ読まれていない方はこの先を読まずにそっとブラウザを閉じて頂ければです。
さて、感想なのですが、先に結論から申し上げてますと、前半は微妙、後半はたいそう面白うございました。
そんな上から目線で良いんですか?あなたスニーカー文庫編集さんのプロットコンテスト出してますよね、それはきっと物凄く面白いんでしょうね……なんて言われたら違うんですごめんなさいと言うしかないのですが、自分への戒めも込めて分析してるので拙作はもっと面白いよなんて訳ではないことをご了承頂きたく。
まず始まり方ですが、よくあるテンプレスタートしています。
いきなり主役キャラ5人全員が出てきて、異世界に旅立ちます。
そして最初の戦闘で各々の個性的な異能を発揮し、敵を倒します。
ここまではよくあるテンプレです。
テンプレそのものは悪くないと思います。
ただ、12年ぶりのスニーカー大賞と言う肩書きで期待感を煽りまくってハードル爆上げした後にあまりに普通のテンプレなのがなんだかもったいなく感じます。
ここはキャラクター紹介だからと割り切るには、そのキャラクターの特徴もセリフで語られるだけなので、もう少し捻っても良かったのでは感は感じました。
無職転生やこのすばだって同じようなテンプレスタートじゃないですかと言われれるとたしかにそうなのですが、無職転生はもう5年以上も前、このすばに至っては10年前です。そして、無職転生やこのすば、回復術師や盾の勇者、まおゆうなどテンプレで有名になった作品たちは、それまでのテンプレ作品の良いところをきっちり取り入れて更に盛って行く事で人気を得、そして後続達はまたその遺伝子を受け継いで行く事でより成熟して行ったおかげで今日のテンプレWeb小説があるのです。
その意味で言うと、テンプレにするにしても女神の部屋、理由はわからないけど魔王討伐、異世界に転生と、これだけだとどこに12年ぶりの大賞要素があるのか分かりません。
それならば序盤はサクッと終わらせて、個性的なキャラクター達の無双を堪能できる作りなのかな……と思いきや、話の展開はゆっくりしています。
グトルフというおっさんが、明らかに最初の方だけ出てくるモブだろうな感を出しつつ登場しますが、やり取りが妙に長いです。
じゃあ重要キャラクターかと言うと、後半は出てこないので、やっぱりそんな扱いのキャラです。
それならばその辺りはサクッと終わらせて早く主人公達の活躍を……と思いますが、なかなか活躍してくれません。
と言うか、意外と敵が強いです。
テンプレなのに展開はゆっくり、そして個性的なキャラクター達なのに雑魚が意外と強くて苦戦する……そんな序盤。
5人のキャラクターは個性が強いのですが、個性の強いキャラがテンプレ異世界に迷い込むなら相当な無双になるのでは……敵の方が基本強いです。
と言うか、敵も味方も主人公達より脇役の方が圧倒的に強い。
そして意外と描写がエグい。
なんかモヤモヤする前半でした。
そして、この5人の主人公がいきなり最初から出てきているのですが、これが活かしきれていない感じがします。
5人それぞれに独特の異能を持っているのに、全員の特技を活かせないまま一巻は終わってしまいます。
チェーホフの銃という、話に銃が登場したならば、その銃は話の中でちゃんと使われないといけないという法則に乗っ取るならば、ツツミの毒とプロトは完全にチェーホフの銃になってしまっています。
ジンの刀はホムラ達を守ったり時間稼ぎにはなっているものの、ルパン3世で言えば五右衛門的な立ち回りのキャラであるジンの刀がちゃんと活躍してる場面も無いので消化不良感があります。
もちろん一巻は顔見せで、二巻以降で一人づつ見せ場を作るから待っててくれと言う事なのだと思うのですが、無理に全員頭から登場する必要はないです。
ここまで辛辣な書き方になってしまいました。
普通にライトノベルとしては全然面白いのですが、やはり12年ぶりの大賞と言う期待感が無駄にハードル上げまくってしまった感はあります。
きっと、この作品が12年ぶりに出すだけの超逸材という意味合いよりは、これまで大賞を出してこなかったからこれから大賞をもっと出していくよの先陣という意味での今作なのだとは思いますが、逆に今作失敗したらまた暫く大賞出ないかもしれないと、老舗のレーベルの大変さをふと垣間見た気がします。
でも安心して下さい。、後半になると急に面白くなって来るのです。
インタビューによると元々作者さんはホラーを書かれていた方らしく、随所にB級ホラー映画オマージュが散りばめられています。
そのせいか、テンプレ展開の前半はなんか煮え切らない感じなのですが、テンプレから外れ出してB級ホラー映画テイストな戦闘場面になると、途端に筆が生き生きとしてきます。
とにかく、悪趣味なスプラッタの場面に入ると、描写が素晴らしいです。
主人公達のブラックユーモアも冴え渡っています。
自分はホラーとか苦手なのでそんなに読みませんが、B級映画は好きなので見れます。
そんなB級映画好きに伝わるようなスプラッタ&ブラックジョークの描き方はとても良いです。
最初から、異世界ファンタジーの皮を被ったB級ホラー映画オマージュ小説を書きたかったのではないでしょうか。
それなら納得が行きます。
そして、クライマックスの主人公覚醒はおそらく何度も何度も書き直したのではないでしょうか。
すごく良かったです。
褒めすぎでしょうか、いえ、そんな事はありません。
敵が強い分、ちゃんと主人公が覚醒して倒すのはカタルシスがあります。
そして、普段は一番まともなのがホムラでヤバいのがサイコなのに主人公が一番ヤバくなるとサイコが一番まともになるのは良い組み合わせです。
そんな訳で、なんだかんだで満足でした。
前半で読むの一度辞めて、もう一度読み始めるまでの間に別のライトノベル『冴えない
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