まあまあそこそこ強いウィル・ダクソンは妻の本当の強さを知らない
Nick
第1章 マリー・ダクソンの日常
第1話 ハロー!キャティアポーリー
俺の名前はウィル・ダクソン。故郷でもあるこの町キャティアポーリーで門兵をしている。この町は森に囲まれ、少し歩けば海もある。まあ、言ってしまえば田舎だ。
そしてこのキャティアポーリーとは遥か昔に勇者とその仲間でもあり妻でもあった猫人族のポーリーが作った町だと言われている。
愛する妻の名前を町の名前にするとは随分な愛妻家だったのだと俺はそう思う。
愛妻家…俺も負けられぬっ!
「な~ウィル」
「どうした?」
「今日も暇だな~」
少し間延びした話し方をする同僚の言葉に俺も納得する。この町は平和だ。
しかし、魔物が出ない訳では無い。悪人が居ない訳でも無い。この平和がより平和になるように、町の子供達の為に、そして妻の為に俺は門兵としての仕事をしっかりと熟そうと思う。
「そうだな、平和だな…っておい、行商の馬車が来たぞ」
「へいへい」
少しやる気が感じられない同僚だが、俺はこいつの事は嫌いじゃない。剣の腕も中々で、こいつも俺に負けずと愛妻家だったりする。云わば同志!
「は~い、止まってくださいね~。はい、身分証……はい、おっけー。荷物少しだけ見させてもらいますよ~」
悪人をひっ捕らえる権利を与えられている俺だが、その権利を不当に使ったりはしない。人にやさしく、自分なりに丁重に。俺は決して驕らない。
ふむふむ…荷物はあれとこれと…隣町から仕入れた食材などをまた隣町へと……ほおぅ…なるほど……。
「チェック完了。通って良し!(サムズアップ&ナイススマイル)……ってそんな訳あるかこの奴隷商人が!喰らえ!≪一閃!≫」
「ぎゃあああああ~~~~~」
全く、平和ボケで奴隷に気付かないと思ったかこの馬鹿者が。
世界中で奴隷は禁止されているというのに、二重の隷属契約までさせやがって。こういった悪党が減らないのは本当に嘆かわしい事だ。
「ウィルの剣技はやっぱり凄いな~」
「ん、そうか?そんなことよりも奴隷にされてる子を保護するぞ!」
「はいよ~」
こうしてたまにとんでもない事も起きるが、基本的には平和に門兵としての仕事は終わる。そして俺は心を躍らせながら愛する妻が待っている家に帰るのだった。
「ただいま~」
「あらアナタ、おかえりなさ~い」
俺の愛する妻の名前はマリー。マリーが17歳の時に知り合い、結婚してから早くも二年が経つ。が、愛が止まらない!大好きすぎる!
笑顔を見ると心がとろけそうだ。匂いを嗅ぐと全身が悶えてしまう。
愛してるっ!
「ウィル…心の声が駄々洩れよ?」
くっ、漏れていたか!ハズカシー!!!あ、そうそう≪鑑定≫っと。
鑑定結果▼
マリー・ダクソン
レベル:17
状態:良好
スキル:ワンハンドマスター
ふむ、状態は良好か。日々の様子から健康に問題がないのは分かっているが、やっぱり気になってしまう。
それにしてもレベル17とは何度確認しても驚きだ。たまに見る力自慢のゴロツキなんかは高くてもレベル15程だ。
祖父母も両親も早くに亡くして叔父に育てられ、更にその叔父に少し鍛えてもらっていたというだけでレベル17。隣町でフライパンを作っているその叔父には何度も会っているが、戦いの師としてそこまで強い感じには見えない。失礼にあたると思い鑑定はしていないが、もしかしたらとんでもない人物なのかもしれない。
そしてスキルにワンハンドマスター。
ワンハンドマスターとは片手のみの動作が極めて巧みになる。それは片手剣、片手槌の扱い、または裁縫時の針の扱い等もだ。
はっきり言う。俺のマリーちゃん凄すぎ!愛してるっ!
「ウィル…ずっと心の声が駄々洩れよ?もう!また勝手に私の事を鑑定したでしょ?ビビビってするからバレるんだからね?」
「す、すまん。体調に問題がないか気になってしまってつい…本当にすまん」
「はいはい。それじゃあご飯にしましょ。今日は二件隣の奥さんからお裾分けで頂いたウィルが好きなデッドオアデスベアーの唐揚げもあるわよ」
「やったー!」
「ふふふ、ウィルったら」
▽▼▽
私は隣で眠るウィルを起こさない様に静かにベッドから出る。からの―
「≪看破!≫」
鑑定結果 ≪看破結果≫▼
ウィル・ダクソン ≪28≫
≪故郷の守護者、スラムを救った英雄、マリー・ダクソンの騎士≫
レベル:51
状態:幸福
スキル:閃光無双、神器召喚、鑑定、≪軽度の釣り音痴(呪い)≫
私の看破は鑑定と違い、本人すら気付けない情報も知ることが出来る。≪≫内のがそれ。年齢もその人物が持つ称号も知れちゃう優れモノ。
うん、やっぱりうちの旦那さまってレベルおかしいわ。普通の人間がレベル51って。たまに王都から偉そうな騎士が来るけど、その人だってレベル25くらいだし。あとスキルも色々おかしい。軽度の釣り音痴(呪い)って何よ。
でも、人間の中では最強の部類だけど、この世界の存在全ての中ではまあまあそこそこ強いになっちゃうのよね。
「まあいいわ。それよりもウィルにお薬飲ませなくっちゃ。はい、ウィル~お口開けてくだちゃいね~」
と言っても寝ているウィルの口を無理やり開けて一滴飲ませるだけなんだけどね…命の雫を。
「ふふ…ふふふ…ひと月に一滴、それだけで寿命が一年延びる。それを毎月毎月毎月毎月、やがてウィルの寿命は何百、何千、何万となり、ふふふ、ふふふふふ、ふはーっはっはっはっはっは!」
「ん~………マ…マリー?」
「あ、やば、≪スリープ≫」
「…zZZ………」
あーやば、興が乗って高笑いし過ぎちゃったわ。念のために記憶改竄もしておこっか。
「≪ウィルは何も見てない聞いてない知らな~~い≫」
これで良し!
「…マリー………愛してる……」
いったいどんな夢を見ているのかしら。ウィルったら夢の中でも私を愛してくれるのね……ふふ、たまらん!
やだイケナイ。今日は夜の散歩に行こうとしていたのに、ウィルの事を考えていたら疼いちゃう…さっきまであんなに愛し合っていたのに。
「私の可愛いウィル。行ってくるわね…さっきはイケなかったけどね!」
ワンハンドマスターを使ってウィルのウィルを握ったらすぐウィルったらイっちゃうし。それが面白くてウィルウィルしていたら気を失うんだもの。
そんなことはどうでもよかったわね。それじゃ、今日は町から少し離れた森の中まで行ってみようかしら…≪テレポート!≫
←↓→↑☆(瞬間移動中)
「シュタッ!」
さて、今日は夜な夜な一人で何をするかというと久しぶりのステータスチェックよ。
そんなことは家でも出来るだろうって?馬鹿言わないで欲しいわ。月明かりに照らされながら一人で過ごしたい時もあるのよ。
そんじゃま、いっちょステータスチェックするわよ!
マリー・ダクソン≪20≫
≪主婦、創造神(代理)、調停者、ウィル・ダクソンを導く者≫
レベル17 ≪第二偽装≫
状態:良好 、≪不老不死≫
スキル:ワンハンドマスター、≪熱烈オールラウンダー≫
パラメーター値
HP:∞
MP:∞
STR:∞
DEX:∞
INT:∞
MND:∞
AGI:∞
LUK:∞
会心率:∞
回避率:∞
いやいや、相変わらずおかしいわコレ。まず創造神(代理)についてはまた今度ね。なぜ今じゃないのかって?そんなもの何故そうなったのかの回想で一話分使いたいからに決まってるじゃない!後日よ後日!
レベルは…これは後で確認するとしてその次のスキルね。この熱烈オールラウンダーというのはね、何でも出来るのよ、ええ、なんでも。これが創造神の創造の力と言っても良い。ワンハンドマスターも熱烈オールラウンダーの力の一部に過ぎないわ。
で、で、パラメーター値ね。これは普通の人間には絶対見えないモノ。この世界でこれが見えるのは私かもう一人くらいね。言っておくけどHPが∞になっているけど痛いものは痛いわよ。大体HPって何よ。
まあでもこの中で一番なっとく出来ないのが会心率と回避率よね。
率に対して∞って何よって話なわけ。無限に広がる可能性ってことなの?ああん?大体さ、会心率と回避率ってどういうことよ。
これも後に語られる創造神(代理)の話で分かる事なんだけどね。ただね、私は納得していないの。
でもまあいいわ。最後にレベルのことよ。ぶっちゃけて言うと、レベル偽装を解除すると、レベルが高すぎて桁が多いの。
どのくらい多いのかって?ステータス画面からはみ出して地平線の彼方まで届いてしまうくらいの桁なのよ。
とんでもない強さな私はレベルを偽装という名の強制ダウンさせてる訳なの。レベル17の第二偽装時に生命の危機に至ると自動でレベル71の第一偽装に切り替わるの。
ま、私は可愛い奥様でありたいし、のんびりむっつり平和に過ごしたいからこんなことしてるの。たまにセルフチェックして可笑しなことになっていないかの確認よ。
「さてと」
今日はもう一つ他に目的があるんだけど、それはこの辺りの魔物の様子を見に来たの。うっかりスタンピードなんかが発生したら大変よ。殲滅♪殲滅♪
だってそれを放置していたら私の愛する旦那さまの負担が増えるじゃない。そんなことは絶対に許されないわ。
目指せ!しっぽりスローライフ!
さて、たまにはレベルを全開放して周辺チェックするわよ。
「≪万里神眼≫」
万里神眼ってね、どこまでも遠くを見ることが出来るのよ。それから外に居ても建物の内部も見れるの。うん、のぞき見ダメぜったい。ただね、一つ問題があるとしたら、レベル全開放した時に使うと見渡す景色が大気圏突破しちゃって宇宙のその先を見ちゃうのよね。
「≪抑えて抑えて私の力…≫」
あ~もうちょい、も~ちょっと…あ、いたいた、20Km先辺りに魔物の群れが居たわ。あーやだやだ、オークとゴブリンが愛し合いながらキャティアポーリーに向かってるわ。
仕方ない。その愛が誠実なのか不誠実なのかは私に知る余地はないのだけど…私のしっぽりスローライフを邪魔する者は平等に殲滅よ。
「アナタ達に自由は無いわ…≪浄化の炎≫」
突然現れた浄化の炎が魔物達を襲う。彼らには当然抗う術はない。せめて優しく、そっと包み込む様に。
キラキラと輝きながら燃え散る命達。その魔石が魂となり、万が一にでも輪廻に紛れ、そして人間としての来世を掴み取った暁には、私の前に姿を現しなさい。
「その時は私がアナタ達の友になりましょう…≪聖海への導≫」
私の力によって散りゆく命達は大地に還り、魂は空へ舞う。行きつく先は…今の私には分からない。
「たらららら~ら~ら~♪(絶望的な音感)」
私ったらダメね。自ら望んだ行いなのに…。でも、これも愛するウィルのためだもん!負けられない…私っ、負けられない!
「たらららら~ら~ら~♪(悪魔的な音程)」
それでも…分かってる!分かっててやったの!でも…でも…涙が止まらない。
「たらららら~らら~♪(星が散りゆく様)」
鼻うた歌って気を紛らわせようとしていたけど…魔物が絶望しながら死ぬ様って控えめに言って酷すぎて吐きそうだわ。
そろそろいい時間ね。ステータスチェックもしたし、地獄に逝った魔物の事は忘れて私はウィルの下に帰るとするわ。
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