第3話

「お、おい、行かないのか?」


「不測の事態に備えて各自武器や防具になりそうなのを探してくれ」


「わ、わかった」


「何か出るかもしれないってことか」


「わからんけどな。でも例え野犬とかでも十分怖いぞ」


「そうだな。おっ、これなんか良いな」


 近藤は小さなバーベルを持ち上げた。

 鈍器かよ。


 結局俺と他3人は組み立て式の子供用の鉄棒をバラして武器に代用することにした。

 大人用の鉄棒では長過ぎるし、子供用でも武器として丁度いい長さではないが仕方ない。

 長い分にはリーチが稼げるが森の中での取り回しは注意が必要だ。


「あくまで体育館が見える範囲での近場の探索だ。耳から入る音の情報も重要だから余計な会話はしないように。後当然だけど1人で勝手に行動しない事。さぁ行こう!」


 体育館の出入り口で皆に指示して出発した。

 先ほど武器を確保した後で屋上に登り周囲を見渡したが、北には大山脈が連なっておりその山々まではかなりの距離がある。西もそこそこ高い山に塞がれており、東には近くに小高い丘があって視線が遮られてる。唯一南だけが開けてるのだ。もちろん山以外は見える全て森である。

 体育館を中心に円状に細心の注意を払って探索を開始した。



「外山、探索組に2年も参加したほうが良かったんじゃないか?」


「いや、こんな状況だし絡繰には1年をまとめる立場になってもらいたくてね」


「絡繰をまとめ役にするのか? 奴は初心者だぞ」


「部活のことでならこの選択はないが、今はそういう場合ではないだろ?」


「まぁ……な。仕方ないか」


「(それに2年生はなるべく温存しておきたいし)」


「何か言ったか?」


「いや、なんでも。トイレ作りを監督してくるよ」




 夕方に体育コートに全員集まり報告会を行った。


「備蓄物資の中にテントはなかったがブルーシートはあったのでそれでトイレを設営した。入り口から出て近い右手側が女子、左が男だから間違えないようにな。

 それと便器についてだが備蓄の中にマンホール設置型トイレがあったのでそれを使用している。もちろんここにはマンホールなんてないので穴を掘って代用している。直に穴にするよりはマシなはずだ」


 外山部長の報告が終わり次は光源班の番だ。


「見ての通り備蓄物資の中にポータブル蓄電池とLED電球があったのと夜間のトイレ用に電池式ランタンを入り口に置いておく。蓄電池はソーラーパネルを使って充電するのだが、パネルの向きを微調整して常に太陽の正面に向かせないと上手く充電できないので注意してくれ」


 いよいよ俺(探索班)の番だ。


「体育館を中心に半径200メートルを探索しましたが人の痕跡・水場・食料のいずれも発見できませんでした。

 屋上から見た限りでは北と西は山に囲まれていますが、南は森が続いており東には丘がありました。明日は東の丘に登りその向こうに何があるのか探るべきと考えます」


「明日は探索班をもう1班増やすかな。今日はもう食事にして休もうか」









--------------------

===beginning===

--------------------


『皆さん大変お待たせしました! リアルタイムゥギャンブルゥゥの時間がやってまいりました!!』


「久し振りだな」


「40年は結構長く感じたよ」


「色々あったしそんなでもなかったわよ」


「あれ? 足りなくない?」


『gauさんは前回のペナルティを消化できなかった為に今回は参加できませんでした』


「彼は温厚な性格だからなぁ」


「そんなに気にすることかな?」


「gauさんのせいで今回の開催が遅れたの?」


『それももちろんありますが、今回は新しい試みに挑戦していまして……いわば新ステージの構築の為に余分な時間を頂きました』


「ほぉ……」


「いいんじゃない? いつも似たようなのばかりだと飽きちゃうし」


「楽しみだわぁ」


「それで新しい試みとはなんなんだい?」


『それでは発表致します。今回の舞台はなんと……異世界です!!』


「へぇ」


「異世界ってあの異世界?」


『最近流行ってる異世界を新しい舞台にすると決めた時私は大いに悩みました。異なる世界とは何なのか? と』


「ふむ……」


「流行ってるの?」


『どうすれば認識できるのか? どのように接触を試みるのか? などなど数多ある困難を乗り越えまして遂に1つの異世界とコンタクトを取ることに成功しました!!』


「ぉぉ!」


「やったぁ!」


『こちらが今回の出場者です。学生21人、大人4人の計25人!!』


「随分少ないが……大丈夫なのか?」


「前回は150人。その前は確か200人だったわよね?」


「2回か3回で終わってしまうのでは?」


『なにぶん異世界側のほうでこれ以上の人数の受け入れを拒否されてしまいまして……』


「まぁ警戒は当然するわな」


「仕方ないね」


『その分こちらの権限もある程度認められていますので、ご懸念されているようなあっという間に終わるなどということはないかと』


「それなら少し安心かなぁ」


「これだけ待たされてすぐ終わってしまうのもどうかと思うからね」


『さぁ! 第1ラウンドの開始です!!』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る