第42話 モブが女の子だった件について(その2)

 

 ◇◇◇



 …………



 ……ッゼヒューーーー……ゼ……ヒュー……




 掠れた喉に息が絡まり、呼吸がうるさい。



 視界を埋め尽くしていた光も徐々に収まり、白一色だった世界に色が戻ってくる。



 最初に目に飛び込んできたのは青空。いつの間にか俺は仰向けになって大地に横たわっていた。



(や……やったのか……?)



『ええ、やりましたね萌文様、成功です!! スキル《再構築リビルド》を獲得できました! ステータスをご確認下さい!!』



 ラブリエルの言葉に、俺は自分のステータスを確認する。



 ◇◇◇


 種 族:龍種

 邪龍ウロボロス

 性 別:雌

 名 前:トモエ

 状 態:普通・人型

 レベル:2(58/3000)

 H P:1050(1050)

 M P:1050(1050)

 攻 撃:840

 防 御:315

 敏 捷:735

 技 力:420

 隠 密:630

 魔 力:525

 精神力:420


 スキル:「蛇牙」「丸呑み」「吐き出す」「再構築」「マーキング」「鑑定.LV7」「ステルス.LV6」「空間認知.LV6」「温度感知.LV6」

 加 護:「天使ラブリエル」


 ◇◇◇




 ──《再構築リビルド



 スキル欄には確かにそう表示されていた。



 その三文字を見て、俺は自分のチャレンジが成功したことをやっと実感する。



(ッぶね〜〜。本気で最後はどうなるかと思ったぜ)



『それは私の台詞です!! もう少しで尾を噛みちぎってしまうところでしたよ!? もしそうなっていたら、暫くは本能のまま暴れ回る暴走モードになるとこだったんですからね……??』



(けっこうギリギリだったじゃん!? 最後、ラブリエルが助けてくれなかったらヤバかったな。ありがとう)



 俺はラブリエルに礼を言った。



『いえいえ、これしきのこと。当然ですよ。おっと、もうあまり時間がありません。この後のこともアドバイスしておきます』



(え、ラブリエル今回なんか出来る子になってね!? 別人!?)



『失礼なッ!? いいからちゃんと聞いてください!! 少年の傷を癒すために必要な経験値は、周りの獣人達の亡き骸から得られる量で十分なはずです。彼等のレベルはそれなりに高いですからね。供養にはならないかもしれませんが、朽ちて大地に帰るよりは仲間の血肉に代われて本望でしょう』



(そ、そうか……)



 先ほどコブを飲み込んだ時にも思ったが、やはり人型の生き物を飲み込むのには躊躇われる。しかしラブリエルの言う通り、獣人達のレベルはなかなかなものだ。ここで好き嫌いをしていては俺は強くなれない。



『それと、少年の身体の再生を行っても十分に経験値は余るでしょうから、残りはそのまま取り込んで萌文様のレベルを3〜4まで戻すのがよろしいかと。レベルダウンの反動が少しばかり軽減されますので』



(……わかった)



 俺はラブリエルのアドバイスに素直に従うことを決める。



『では、私はこれで』



(ああ、本当に今回は助かった。ありがとうラブリエル)



『うふふ、いつかお礼をしていただいても構いませんよ??』



 くすくすと、ラブリエルは笑った。



(わかった。考えておくよ)



『楽しみにしていますね』



 そう言って、ラブリエルの声は消えていった。



 ◇◇◇



 ラブリエルの去った後、俺は身体を起こして早速行動することにする。ロッチとセレーネは、まだ荷車から出てきていない。俺の合図を待っているのだろう。



 ……ッヒュー…………ヒュー……



 それにしても、ひどく喉が乾く。



 ズルズルと体を引き摺り、俺は近くに置いてあった桶にと、そのまま頭を突っ込んで水をガブ飲みした。



 プハーーー!!



「うめえ!!」



 桶から頭をあげて、声を上げる。



 スゥーーと大きく息を大きく吸い込めば、意識もだいぶはっきりしてきた。



「……ん?」



 そして改めて桶の中に視線を落とすと、見慣れぬ少女の顔が映っていることに気がつく。



「……あれ? どちらさ……ま……?」



 俺が思わず声をかけると、それに合わせて水に映る少女もパクパクと口を動かしている。



 見れば、灰色の目、を横一文字に走る傷、これって……



 続けて、自然に顔へとが伸びる。水面に映る少女も、ペタペタと自分の顔を触っていた。



 も……もしかして……



 恐る恐る俺は、視線を自らの胸元に向ける。



 そこにあったのは健康的な肌色に、形の良い双丘を備えた……どう見ても、のボディであった。



「……ッえ。…………えぇえええええええ〜〜〜〜!?!?!?」



 こうして俺は、ついに女子高生(?)になったのだった。



 ◇◇◇

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る