第10話 モブは鑑定を使ってみた

 

 ◇◇◇



 チチチチチチ……



 キーキーキー……



 鳥のさえずりのようなものが聞こえる。




(ん〜〜、……お、もう朝か?)




 俺は目を開け、空を見上げる。異世界の空は地球と同じで青かった。とりあえず、何事もなく夜を越せたようだ。




 グギュルル〜〜……



(なんだか、お腹減ったなぁ)



 考えてみれば、この世界に来てからどれくらい経過したのかは判然としないが、自分の尾以外にはまだ何も口にしていない。

 実際、尾の方は吐き出してしまった? から、何も食べていないというのは間違っていないだろう。



(さて、何処かに何か食べられるものは……)




 俺は谷底をスルスルと滑るようにして進んでいく。




 ◇◇◇




(……お? 何かいるな?)



 岩影の向こうに、他よりも暗くて苔が沢山生えている場所がある。こちらに背を向けてむしゃむしゃと食事をしているのは、ウサギのような長い耳を持った生き物だ。背中には同じく苔が生えており、なんだか汚らしく見える。



(おお……なんだ? ウサギか?)



 俺は目の前の生き物を観察する。




 キュィン……ポワン



 そんな音と共に、ウサギの周りにロックオン表示の様な輪っかがついたと思えば、俺の視界にウィンドウが立ち上がる。



(っひえ!)



 思わず驚いてビクリと震えた俺に気がつくと、ウサギは一目散に逃げていった。



(……ああ、俺の初めての食事が……)



 俺はとほほと肩を落とす。まあ、肩なんてないけどね! 蛇だし!



(さてさて、なんだこれは?)



 ウィンドウの上部には《鑑定結果.Lv1》と表示されている。

 俺は続けて、そこに書いてある情報を読む。



 《鑑定結果.Lv1》

 種族:獣種

 名前:──

 強さ:とても弱い



(情報量少なッ!! びっくりするくらい要らない情報ばっかりじゃねーか!!)



 俺は余りに意味のない情報に呆れつつ、書かれているLv1の文字に注目する。



(これは……もしかしなくてもアレだよな? ラブリエルもあるって言っていたし……)



 そう、コレはおそらくレベルだ。


 それも、所謂いわゆるスキルレベルというやつだ。使用回数やら何かに応じて上がっていくものなのだろう。


 と、いうことは……。



(使いまくるしかねぇッ!! よくわからないけど、もしかしたら経験値貯まって強くなれる可能性があるからな!!)



 ひとまず、今後の方針が決まった。



(とはいえ、アレだな。まずは何か食べたいね)



 

 俺は引き続き、さっきのウサギを探すのであった。




 ◇◇◇

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