第369話 マリアの腕輪
『捕まえたぁっ!!』
「にゃっ!?」
「ミイナ!?」
片足を掴まれたミイナはブラクの元に引き寄せられ、咄嗟に彼女を助けようとバルルが腕を伸ばす。その腕をミイナは掴もうとしたが、彼女は炎爪を発動させたままである事を思い出して引っ込めてしまう。
咄嗟の事だったので炎爪を解除する考えも起きず、そのままバルルの腕を掴む事ができずにミイナはブラクに引き寄せられた。ブラクはミイナの身体を背中から生えた黒腕で掴み取ると、彼女を黒腕で拘束した状態で向かい合う。
『ひひっ……死ねぇっ!!』
「……断る」
ミイナは黒腕に拘束された状態で笑みを浮かべ、彼女は掴まれていない方の足をブラクの顔面に構える。何のつもりかとブラクは訝し気な表情を浮かべると、彼女の足に浮かんだ魔術痕を見て目を見開く。
『まさか!?』
「爆爪!!」
両手だけではなく、両足にも魔術痕を刻んでいたミイナは爆炎を生み出す。至近距離から爆炎を受けたブラクは吹き飛び、この際にミイナも一緒に吹っ飛んで慌ててバルルが受け止める。
「ミイナ!!」
「あうっ!?」
「ぶ、無事ですか!?」
「し、信じられない……」
とんでもない方法でブラクから逃れたミイナにバルル達は唖然としたが、ミイナはバルルに受け止められた際に頭に痛みを覚えて文句を告げた。
「ううっ……バルルの胸は大きけど柔らかくない。これはおっぱいじゃなくて胸筋……」
「失礼なガキだね!!たくっ……けど、よくやったよ」
ミイナが無事だった事にバルルは安堵するが、彼女はミイナの攻撃をまともに受けたブラクに視線を向けた。普通の人間ならば即死してもおかしくはない一撃だったが、倒れたはずのブラクの身体から黒腕が出現して壁や天井に張り付いて肉体を引っ張り上げる。
『ご、ごのぉっ……殺すぅっ!!』
「ちっ……本当に不死身なのかい」
「あの爆発を受けて生きているとは……いえ、もう死んでましたね」
「……化物」
爆炎をまともに受けたにも関わらずにブラクは起き上がり、その様子を見たバルル達は冷や汗を流す。最早ブラクの肉体は見るも無残な状態だったが、既に肉体は死亡している彼を倒すには闇属性の魔力を浄化させる以外の方法はない。
夜明けまでは30分は切ったが、それまでの間はブラクをどうにか取り押さえなければならない。しかし、バルル達はここまでの戦闘で全員が魔力を使い果たし、疲労も限界を迎えている。これ以上の戦闘は不可能だったが、かといって逃げ切れる相手ではない。
「ミイナ、あんたの火属性の魔石を寄越しな。そいつでどうにかこいつを……」
「……無理、今ので丁度魔石の魔力を使い切った」
魔石を利用してブラクを再び爆破させようと考えたが、残念ながらミイナが所持する魔石は先ほどの攻撃で魔力を使い切ってしまった。完全に対抗手段を失ってしまったバルル達は後退すると、ブラクは身体をふらつかせながらも彼女達に迫る。
『殺す!!貴様等全員、殺す!!』
「同じことを何度も……聞き飽きたんだよ!!」
「せ、先生!!挑発するのは控えてください!!」
「くっ……まだ私は戦えます!!」
「私はもう無理……疲れた」
バルルとリンダは拳を構え、エルマはそんな二人に逃げるように促す中、ミイナは疲れた表情で座り込む。この状況で座り込んだミイナを見て全員が驚き、抵抗するのを諦めてしまったのかと思われたが、ミイナは笑みを浮かべた。
「だから後の事はマオに任せる」
「何だって……!?」
『何っ!?』
ミイナの言葉にバルルは驚愕し、ブラクは咄嗟に後方を振り返った。しかし、廊下にはマオの姿は見当たらず、その隙を突いてミイナは隠し持っていた腕輪を取り出す。
「引っかかった!!」
『なっ……!?』
ミイナが取り出したのは学校に入り込む前にマリアから受け取った腕輪であり、彼女は腕輪を投げつける。ブラクは咄嗟にミイナが投げつけた腕輪を払いのけようとしたが、彼の背中から生やした黒腕が触れた途端に腕輪が光り輝く。
『ぐぎゃあああっ!?』
「うわっ!?」
「ま、眩しい!?」
「これは……!?」
腕輪の光は廊下中を照らし、そのあまりに強烈な光にブラクは悲鳴を上げて倒れ込む。他の者達も目を開けていられずに閉じてしまい、ただ一人だけミイナは嗅覚で状況を把握した。
マリアから受け取った腕輪には彼女の魔力が込められており、その腕輪から放たれる魔光だけでブラクに纏っていた闇属性の魔力が消失する。腕輪の光が収まる頃にはブラクは廊下の床に倒れて動かなくなっていた。
「た、倒したのかい?」
「……大丈夫、もう嫌な魔力は感じない」
「や、やったのですか……」
「ふうっ……助かったわ」
ブラクが倒れたのを見てバルル達は安堵の表情を浮かべ、マリアの腕輪のお陰で命拾いした。ミイナは立ち上がってマリアの腕輪が落ちた場所へ向かおうとした時、不意に彼女の鼻に異臭を感じ取った。
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