第359話 解放術式
「貴方達、これを装着しなさい」
「これは?」
「……魔法腕輪?」
マリアは金色に輝く腕輪を取り出し、それをマオとミイナに装着するように促す。マオは杖を所持しており、ミイナは自分の魔法腕輪を装着しているので新たに渡された腕輪に戸惑うが、マリアによると彼女が渡した腕輪は只の魔法腕輪ではないという。
「その腕輪には私の魔法を封じ込めているの。万が一の場合、この腕輪の力を使って脱出しなさい」
「えっ!?学園長の魔法?」
「どういう意味?」
渡された腕輪を装着したマオとミイナは学園長の言葉に驚き、魔法が封じられているという言葉に疑問を抱く。マリアによれば二人に渡した魔法腕輪は彼女が独自に作り出した魔道具だと語る。
「その腕輪には解放術式と呼ばれる特別な魔法陣が刻まれているの。解放術式は装着車が合言葉を告げると腕輪に封じられている魔力が解放されて魔法を発動する仕組みになっているのよ」
「そ、そんな事ができるんですか!?」
「まだ試作段階の代物だけど、効果は私自身が試してある。合言葉を今から教えるけど、決して不用意に口にしては駄目よ」
「……気をつける」
マリアは二人に渡した腕輪に封じ込められた魔法の内容と発動条件に必要な合言葉を伝えると、マオとミイナはマリアから伝えられた言葉をしっかりと覚える。
校舎内に侵入して窮地に陥った場合、マリアが封じ込めた魔法を発動すれば窮地を抜け出せる。但し、魔法腕輪は一度使用すると効力を失うため、使い所を誤らないようにしなければならないとも注意された。
「今動けるのは貴方達だけなの。気をつけて行動しなさい」
「わ、分かりました」
「マオ、私から離れないで」
マオとミイナは正面玄関に近付くと、二人はマリアが用意したランタンを手にして扉に近付く。ちなみにマリアが用意してくれたランタンは特別製であり、普通のランタンは火で照らすがマリアが用意したランタンには光石と呼ばれる魔石が収められている。
光石は聖属性の魔石の一種で名前の通りに常に光り輝く鉱石だった。また、マリアが用意してくれたランタンも魔道具の一つで取っ手の部分に細工がある。この細工を利用すると光量や光の向きを調整する事ができる仕組みになっていた。
「二人とも中に入る時は常にランタンを手放さないように気を付けなさい。暗闇から出現する黒腕に捕まらないように気をつけておきなさい」
「は、はい!!」
「分かった」
扉の前に立ったマオとミイナはマリアの注意を聞いて頷き、二人は扉を開け開く。その瞬間に無数の黒腕が暗闇の中から飛び出して二人を捕まえようとしてきた。
「うわっ!?」
「マオ、落ち着いて……こんなの怖くない」
「その通りよ。恐れずに光を当てなさい」
飛び出してきた黒腕に咄嗟にマオは杖を構えようとしたが、ミイナが彼の肩を掴んで止める。様子を見ていたマリアもマオに冷静に対処するように促すと、二人の言葉にマオは頷いて彼はランタンの光を向ける。
黒腕はランタンが放つ光を浴びた途端に消失し、黒霧とかして消えてしまう。やがて全ての黒腕が消え去るとマオとミイナは安堵した。
「ふうっ……びっくりした」
「気を付けなさい、中に入ればいつまた襲い掛かってくるのか分からないわ」
「大丈夫、もしもマオが捕まりそうになったら私が助ける」
「あ、ありがとう……」
ミイナの言葉にマオは感謝の言葉を口にしながらも自分も役に立てるように頑張り、彼女と共に校舎の中に入り込む――
――校舎の中は暗闇に覆われ、二人は正面玄関から中に入り込むと扉が勝手に閉じてしまった。これも先ほどの苦労での仕業であり、どうやら二人を逃がさないとばかりに勝手に扉を閉じたらしい。
「うわっ……何だこれ、全然見えない」
「ただの暗闇じゃない……この校舎は黒霧に覆われてる」
扉が閉じ切った途端にマオとミイナの周囲は暗闇に覆われてしまい、ランタンの光が届かない場所は全く見えなかった。現在の二人は校舎内に拡散した黒霧に取り囲まれた状況であり、いつまた黒腕が襲い掛かってくるのか分からない。
ランタンを手放した瞬間に暗闇から黒腕が出現して襲い掛かる恐れが高く、中にいる間は決してランタンを手放さないようにしなければならない。幸いにも二人のランタンは普通のランタンよりも光が強く、自由に向きや光量を調整できる。
「マオ、離れないように手を繋ぐ」
「え?そこまでしなくても……」
「駄目?」
「うっ……駄目じゃないけど」
ミイナの言葉にマオは少し照れながらも彼女と手を繋ぎ、決して離れないように二人は行動を開始する。暗闇の中をランタンを頼りに二人は進み、何処かにいるはずのバルル達を探す。
バルル達が校舎内に閉じ込められてから数分程度しか経過していないが、広い校舎の中で彼女達を見つけ出すのは困難を極める。とりあえずはマオとミイナはマカセが眠っているはずの医療室へと向かう。
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