第296話 連携
「ミイナ!!その煙は吸ったらまずいかもしれない、早く離れて!!」
「んっ!!」
「先輩、煙を吹き飛ばせますか!?」
「あ、ああ……任せろ!!」
マオの指示に二人は従い、即座にミイナは煙から離れるとバルトは杖を振るって風を放つ。バルトの魔法によって煙が吹き飛ぶと、そこには既にブラクの姿は見えなかった。
「くそ、逃げられたか!?」
「まだそんなに遠くには離れてないはず……追いかける!!」
「待って、ミイナ!!俺が上から探す!!」
煙が晴れるとブラクの姿が消えている事に気付いたバルトとミイナは彼が逃げたのかと思ったが、すぐにマオは氷板を作り出す。彼は即座に上空に移動すると、周囲を見渡してブラクの姿を探す。
既に時刻は夕方から夜を迎えようとしていたので視界も悪く、ブラクを見つけ出すのは難しいと思われた時、屋上からミイナが跳躍してマオの氷板に乗り込む。
「とうっ」
「うわっ!?ちょ、ミイナ!?」
「落ち着いて、私の方が夜目が効くからすぐに見つけられると思う」
猫型の獣人であるミイナは人間よりも視力も優れ、暗い場所でもブラクを見つけ出す自信があった。彼女は屋上の全体を確認し、そして闇に紛れるブラクを見つけ出した。
「先輩!!そこで倒れている三人にうねうねとした黒いのが近付いてる!!」
「何だと!?」
「ちっ……もう遅い!!」
ミイナの言葉を聞いてバルトは倒れている三人組に振り返ると、いつの間にか地面を伝って影の触手が近付いている事に気付く。それに気づいたバルトは慌てて杖を構えるが、彼が魔法を発動させる前にブラクは三人を拘束しようとした。
このままでは倒れている三人が人質に取られると判断したマオは三又の杖を構えるが、自分の魔法ではブラクには通じない事を思い出す。しかし、それでも三人を守るためにマオは魔法を繰り出す。
(これに賭けるしかない!!)
マオは影の触手を伸ばすブラクに目掛けて残された魔力を注ぎ込み、氷柱を作り出す。そしてミイナに目配せした後、ブラクに目掛けて氷柱を発射させる。
「喰らえっ!!」
「ふん、そんな物が俺に……!?」
「にゃあっ!!」
性懲りもなく氷柱を自分に目掛けて放ったマオにブラクは顔を向けるが、この時に彼の放った氷柱にミイナがしがみついている事を知る。ブラクは慌てて攻撃を中断して避けようとしたが、氷柱にしがみついたミイナはブラクが反応する前に彼に炎爪を叩き込む。
「爆爪!!」
「ぎゃああああっ!?」
「や、やった!!」
「おしっ!!」
バルルの「爆拳」の要領でミイナは相手に爪を叩き付ける瞬間、火属性の魔力を解放して爆炎を放つ。ブラクは全身が爆炎に飲み込まれて悲鳴を上げ、この時に彼の影の触手が消滅した。
爆炎によってブラクは屋上の床に転がり込むと、この時に彼の両手と両足が胴体から離れた。それを見たマオは爆発の威力で彼の手足が吹っ飛んだのかと思ったが、どうやらブラクは最初から義手と義足を装着していた事が発覚する。
「な、何だ!?こいつ……どうなってるんだ?」
「……まさか」
「そうか、そういう事だったのか……最初から影魔法で義足と義手を動かしていただけなのか」
「ぐふっ……ち、ちくしょう……」
どうやらブラクは最初の時から影魔法で自分の胴体に装着した義手と義足を動かし、普通の人間のように振舞っていた事が判明した。先ほどにミイナとの戦闘で彼が人間ばなれした動きをしながらも全く肉体に影響がなかったのは、最初から彼の身体が作り物だったからである。
先の爆炎でブラクは義手と義足が引き離され、残された胴体も酷い火傷を負っていた。これまでにマオやバルトの魔法を無効化していた影の鎧もどうやらミイナの火属性の魔法は防げなかったらしく、恐らくだが影魔法の弱点は「光」だとマオは判断する。
(ミイナが最初に助けてくれた時、炎の光で影の触手が弱まった……でも、僕や先輩の魔法は光を発していないから通じなかったのか)
闇属性の魔力で実体化した影は物理攻撃や衝撃は無効化するが、強い光を受けると消えてしまう。だからこそミイナの炎爪や爆爪は無効化する事ができず、ブラクは正面から攻撃を受けてしまう。
「くそ、くそくそくそっ……この俺が、こんなガキ共に……」
「こいつ、こんな状態でまだ喋れるのか……」
「早く治療した方がいい、このままだと……」
「そうだね……」
ブラクは胴体だけの状態でしかも酷い火傷を負っているにも関わらずにはっきりと意識は残っており、とりあえずは彼を拘束する前に治療を施そうとマオは近寄る。だが、この時にブラクは目を見開いて自分の影を実体化させて触手を放つ。
「馬鹿が!!」
「マオ!?」
「なっ!?」
「ぐぅっ!?」
影の触手はマオの首元に絡みつくと、それを見たミイナとバルトは彼を助けようとした。しかし、その前にブラクは二人に警告を行う。
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