第246話 マオVSリオン
「――ど、どうしてこんな事に……」
「おい、マオ!!負けるんじゃないぞ!!」
「頑張って、応援してる」
「ふっ……こうしてお前と競い合う日が来るとはな」
学校の屋上に移動するとマオはリオンと向かい合い、少し離れた場所ではバルトとミイナが見学していた。リオンはマオの腕を確かめるために試合を申し込み、半ば強制的にこんな場所まで連れ出された。
別にマオとしてはリオンと戦うつもりはなかったが、何故か彼よりもバルトの方が反応してマオとリオンの試合を勝手に受諾してしまう。
『上等だ!!こいつの強さを舐めるなよ、この俺と引き分けたぐらいだからな!!』
『お前と引き分けだと……ふんっ、それじゃあ大して期待はできないな』
『何だと!?おい、マオ!!絶対に勝てよ!!』
『え、いや……』
『この子、生意気で可愛くない……マオ、やっちゃえ』
『何で!?』
マオは結局は他の三人に押し切られる形で試合を行う事になり、お互いに「小杖」を取り出す。生徒間の試合の場合は学園で支給する小杖を使用する事が決まっており、バルトとの試合の時は特別にお互いの杖を使えたが、今回は小杖での戦闘となった。
(リオンと戦う事になるなんて……でも、いい機会かもしれない)
リオンに自分が成長した事を証明するためにマオは気合を込め、一方でリオンの方は小杖に視線を向けて考え込む。彼は数か月前までは小杖で戦っていたが、今の彼にとっては懐かしく思う。
「またこれを使う時が来るとはな。まあいい、何時でも来い」
「へっ……余裕こいていられるのも今の内だぞ」
「じゃあ、私が審判役。このコインが落ちたら勝負開始」
ミイナはコインを取り出すと二人の間に移動し、彼女はコインを天高く弾く。それを見たマオとリオンはコインに視線を向け、床に落ちた瞬間に二人は小杖を突き出す。
「まずは小手調べだ……ウィンド!!」
先手を打ったのはリオンであり、彼は小杖を突き出すと三日月状の風の斬撃を放つ。その攻撃を見たマオは冷静に小杖を構えて無詠唱で氷塊を作り出す。
「くっ!!」
「ほう、あの頃と比べると随分と大きな氷を生み出せるようになったな」
氷塊を作り出したマオは盾代わりに利用すると、風の斬撃を受け止めた瞬間に氷塊は砕け散った。その光景を見たリオンは素直に感心した様子を浮かべた。彼と別れた時はマオは氷の欠片程度しか扱えなかったが、この数か月の間に自分の身を守れる程の大きさの氷塊が作れるようになっていた。
自分の攻撃を受けたマオを見てリオンは彼が成長している事を認めるが、それでも彼は容赦なく攻撃を続けた。今度は杖を天に構えると、それを見たバルトは驚く。
「あいつ、まさか!?」
「スライサー!!」
バルトが得意とするスライサーもリオンは習得していたらしく、彼は杖を上空に構えた状態で円を描くように振り回すと、風の魔力で形成された渦巻が誕生した。風の渦巻はマオに目掛けて放たれ、それを見たマオは目を見開く。
(大丈夫だ、前の時とは違う……この魔法の弱点は分かってる!!)
マオは小杖を構えると迫りくる渦巻にではなく、足元に氷塊を作り出す。それを見たリオンは訝し気な表情を浮かべるが、マオは氷塊を足場にして空中に移動を行い、渦巻を避ける事に成功した。
「
「何だと!?」
「へっ、生憎だったな……その程度の魔法はマオには通じないんだよ!!」
スライサーの弱点は細かな操作ができない事であり、上空に回避された場合は渦巻は通り過ぎてしまう。短時間ではあるが氷板で空を飛べるマオにはスライサーは通じず、着地すると今度は自分から仕掛けた。
(ここで終わらせる!!)
リオンが次の魔法を繰り出すためにマオは小杖を構えると、それを見たリオンは攻撃に備えて杖を構えようとした。しかし、マオの狙いはリオンの身体ではなく、彼が武器として扱う杖を狙う。
「氷弾!!」
「なっ!?」
小杖からマオは小規模の氷塊を作り出し、それを弾丸の如く高速回転させて発射した。加速した氷の弾丸はリオンが手にしていた小杖に衝突し、粉々に吹き飛ぶ。
自分の手にしていた小杖が破壊されたのを見てリオンは驚き、杖を破壊された以上は彼はもう魔法を使う事はできない。それを確認したマオは冷や汗を流しながらもリオンに告げた。
「これで魔法は使えない……僕の勝ちだ」
「……負けただと、この僕が?」
「おっしゃあっ!!流石はマオだ!!」
「格好いいっ」
マオの言葉にリオンは唖然とした表情を浮かべ、一方でバルトとミイナは肩を組んでマオの勝利を祝う。マオ自身もまさかリオンを相手にこうもあっさりと勝てた事に戸惑うが、これで自分の成長を証明できたかと内心喜ぶ。
(勝った!!あのリオンに勝ったんだ!!)
小杖を破壊した以上はリオンは魔法は使えず、試合は続ける事はできない。マオは自分の勝利を確信するが、リオンは折れた小杖を握りしめ、怒りのままに床に叩き付けた。
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