第231話 校舎内の戦闘

「いいかい、くれぐれも無茶をするんじゃないよ!!生徒を避難させたらすぐにあたし達も戻るからね!!」

「はい、分かりました!!じゃあ、上の二人にも伝えてきます!!」

「頼んだよ!!」



氷板を浮上させてマオは屋上に戻ると、その光景を見ていたカマセと他の一年生は空を飛ぶ彼に唖然と見上げる。そして生徒の一人がカマセに尋ねた。



「せ、先生……あの子、空を飛んでる」

「あ、ああ……」

「先生もあんな風に飛べるの!?」

「僕達にも空を飛ぶ方法を教えてください!!」

「え、いや……せ、先生は飛べないから」



空を飛ぶマオの姿を見て先ほどまで怯えていた一年生達は瞳を輝かせて彼に縋りつくが、そんな事を言われてもカマセにはどうする事もできなかった。そんな彼等のやり取りを見てバルルは苦笑いを浮かべ、生徒達に早く避難するように促す。



「ほら、騒いでたらまた魔物どもに襲われるよ。さあ、早く急いで逃げるんだよ」

『え〜っ!!』

「……いいからとっとと逃げろと言ってんだよ!!お尻ぺんぺんされたいのかい!?」

『ひいっ!?ご、ごめんなさい!!』

「バルル、うちの生徒を脅すなよ……」



バルルの言葉に一年生の生徒達は震え上がり、カマセの後ろに隠れてしまう。そんな彼等を庇いながらもカマセは学園の外へ向かう――






――バルルの伝言を受け取ったマオは屋上に移動してバルトとミイナと合流すると、3人は校舎内に戻って様子を伺う。既に廊下の方には倒れている魔物の姿があり、どうやら既に校舎内でも戦闘が始まっている様子だった。



「おい、これを見ろよ……黒焦げだ。多分、火属性か雷属性の魔法でやられたんだな」

「きっと、他の先生達が魔物を倒してる」

「もしかしたら上級生も戦っているのかも……」



魔法学園には腕利きの魔術師が揃っており、戦える力を持つのは教師だけではない。魔法学園の生徒は日頃から魔法の授業で魔物と戦う事もあるため、もしかしたら校内に残っている生徒の中にはマオ達のように魔物を倒している可能性も十分にあった。


3人は周囲を警戒しながら各教室の様子を確認し、魔物や生徒の姿を探す。3人はまずは一番上の階から様子を探っていると、階段の方からオークが姿を現わす。



「プギィイイッ!!」

「オーク!?こんな奴までいたのか!!ちっ、ここは俺が……」

「待って、私が……」

「氷弾!!」



オークが姿を現わすとバルトは杖を取り出してミイナは鉤爪を装着するが、二人が動く前にマオは杖を突き出して氷弾を放つ。発射された氷弾はオークの頭部を貫通し、そのまま壁にめり込む。



「プギャアッ……!?」

「よし、行こう!!」

「「…………」」



一瞬にしてオークを仕留めたマオにミイナとバルトは唖然とするが、そんな二人を置いてマオは先を急ぐ。最初に出会った頃は失禁する程に恐れた相手だが、今のマオにとってはオークなどゴブリンと大差ない存在だった。



「い、いやいや……えっ?今のオークだぞ?そんなあっさりと倒せるなんて……え、マジで?」

「先輩、急がないと置いて行かれる」

「ちょ、待てよ!?」



あっさりとマオがオークを倒したせいで放心していたバルトはミイナに声を掛けられて慌てて追いかけ、先ほどの出来事を思い返す。マオは氷弾でオークを一撃で仕留めたが、彼の魔法はここまで強かったのかと疑問を抱く。


オークの肉体は鋼鉄をも上回り、並の武器は通用しない。そのために魔法金属などの武器でなければ傷つける事もできないが、マオの場合は魔法金属級の硬さを誇る氷を作り出せる事を意味している。



(あいつ、何処まで強くなってるんだ!?)



風の魔術痕を刻まれた事でマオは風の魔石に頼らずとも氷弾を風の魔力を利用して強化させ、オーク程度の相手ならば一撃で倒せる程に成長した。バルトも中級魔法を繰り出せばオークぐらいは倒せるが、下級魔法よりも魔力消費が激しい中級魔法は連発には向かず、彼の場合は数匹のオークを倒すのが限界だろう。


しかし、マオの場合は氷弾自体は魔力を殆ど消耗せず、仮に魔力を消費しても精神鍛錬で鍛え上げたマオの回復力ならばすぐに魔力は元に戻る。



(くそっ……うかうかしているとマジで置いて行かれちまうな)



リオンだけではなく、マオとも力の差を感じ始めたバルトはせめて足手纏いにならないように気をつけながら走っていると、不意にミイナが何かに気付いたように二人に声をかけた。



「すんすんっ……待って、こっちの方から血の匂いがする」

「血!?」

「誰かやられたのか!?それとも魔物の!?」

「そこまでは分からない。けど、こっちの方からする」



獣人族のミイナは常人離れした嗅覚を誇り、彼女は血の臭いを感じ取った方向に駆け出すと、そこには数名の生徒が廊下に倒れていた。それに気づいたマオ達は慌てて駆けつけると、彼等が血塗れである事に気付く。

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