第160話 重傷のリオン
――思いもよらぬ赤毛熊の反撃によってリオンは意識を失い、彼はジイに連れ出されて同行させていた治癒魔導士から治療を受けた。治癒魔導士は名前の通りに回復専門の魔導士であり、聖属性の魔法の使い手で怪我を治す事ができる。しかし、今回のリオンが受けた傷は治療までの時間が掛かり過ぎたせいで完全に治す事はできなかった。
「……命に別状はありません。しかし、傷跡の方はもうどうにもできません」
「そんな……何とかできんのか!?」
「も、申し訳ございません……私の腕ではこれ以上の治療は不可能です」
「そうか……いや、気にする事はない。お前のお陰で命は助かった」
リオンは顔面に赤毛熊の攻撃を受けてしまい、片目に爪痕が残ってしまった。奇跡的にも眼球の方は潰れずに済んだので視界の方は問題ないが、顔の方には爪痕が残ってしまう。
同行していた治癒魔導士の腕では完全な治療は施せず、怪我を負ってから時間が経ちすぎていた事もあって傷跡は完全に消す事はできなかった。片目に爪痕を受けたリオンは顔を抑え、自分の未熟さを嫌という程に痛感した。
(馬鹿が……油断し過ぎた。これじゃあ、あいつに合わせる顔がない)
敵の急所を貫いた程度で勝利を確信し、その代償としてリオンは片目に傷を負ってしまった。自分自身の行動にリオンは恥を感じ、その一方である事に気が付く。
(待て、あいつに合わせる顔がないだと……僕は何を考えているんだ。これじゃあ、あいつにまた会いたいと思っているみたいじゃないか)
リオンは自分が無意識にマオと会いたいと考えている事に気付き、その事に異様なまでに恥ずかしさを覚える。これではまるで友達との再会を望む子供同然であり、彼はそんな考えを振り払うために頬を強く叩く。
「馬鹿がっ!!」
「ひっ!?も、申し訳ございません!!」
「坊ちゃま、落ち着いて下さい!!」
「……今のは自分に言ったんだ」
治癒魔導士は自分が怒られたと思って謝罪するが、それに対してリオンはため息を吐きながら自分自身を叱咤した事を伝える。そして彼は片目の爪痕に手を伸ばし、今回の事は戒めに使用と心掛ける。
「この傷は俺の油断が招いた結果だ。お前達が気にする必要はない、もしもこの傷の事で何か言われたら全て俺の責任だと答えろ」
「坊ちゃま、それは……」
「お前が父上に手紙を送っている事は知っている。今更誤魔化せると思うなよ」
「ぬうっ!?」
リオンの言葉にジイは焦った表情を浮かべるが、最初からリオンはジイが自分に内密に父親と連絡を取っている事は気付いていた。リオンの行動は常に監視されており、彼の父親はリオンの行動を常に把握している。
その場に二人を残してリオンは立ち去ると、自分の剣を手にして森の中で素振りを行う。悩み事がある時は一人になって無心で剣の素振りを行い、雑念を消すのが彼の癖だった。
「はあっ!!」
気合を込めた雄叫びを上げながらリオンは剣を振り抜き、まるで素振りというよりも誰かを想像して剣を振っているように見えた。もうこの世にいない相手を想像しながらリオンは無心に剣を振り続け、最後の一太刀は刃に魔力を宿す。
「せいやぁっ!!」
リオンが剣を振り抜いた瞬間、刃から衝撃波が放たれて彼の前の大木が斬り裂かれた。それを確認したリオンは倒れ込む大木に巻き込まれぬように下がり、改めて自分の持つ剣に視線を向けた。
「兄上……まだまだ貴方には及びません」
今は亡き兄の事を思い浮かべながらもリオンは鞘に剣を収めると、彼は空を見上げた。この時にリオンは何故かマオの顔が思い浮かび、彼は鼻を鳴らす。
「……このままだと置いて行くぞ」
確実に自分が成長している事を意識し、その一方で王都の魔法学園に通うマオがどんな風に過ごしているのか彼は少しだけ気になった――
※数分後
リオン「何処だここは……(;´・ω・)」
猟師「ん?おめえさん、こんな森の中でなにしてるべ?」(・д・)←地元の猟師さん
やっぱり迷子になるリオン君(笑)
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