第123話 魔石の使用法とマオの属性
「いいかい、マオ!!魔術師は舐められたらそこで終わりなんだよ!!相手が上級生だろうが何だろうが関係ない、売られた喧嘩は買う!!そして完膚なきまでにぶちのめすんだよ!!」
「し、師匠落ち着いて下さい!!」
「どうどう……」
「あたしは馬か!?」
興奮気味のバルルをマオとミイナは宥めようとするが、彼女は自分が嫌うタンの生徒がマオにちょっかいをかけてきた事が許せなかった。先ほどタンは学園の秩序を乱すなとかなんとか言いながら、彼が請け負っている生徒がマオに絡んできた時点でタンに対する不満を爆発させる。
上から目線で説教をしてきた癖に自分の生徒に碌に指導が行き届いていないタンにバルルは我慢の限界を迎え、彼女はバルトがマオに絡んできたという話を聞いて強い対抗心を抱く。
「いいかい!!何があってもあんたはそのバルトとやらに負ける事は許さないよ!!」
「そ、そう言われても……相手は上級生ですよ!?」
「それが何だってんだい!!あたしは学園長を殴った事もあるんだよ!!」
「それ、関係ある?」
「しかもそのせいで師匠は退学になったんじゃないですか!?」
興奮のあまりにバルトは良く分からぬ返事を行うが、彼女としてはどうしても自分の生徒がタンの生徒に負ける事が気に入らなかった。相手がマオよりも上の学年の生徒だろうと関係なく、ともかく彼女はタンの指導する生徒に自分の弟子が負ける事が許せなかった。
「マオ!!あんたは絶対にバルトに勝つんだ!!もしも勝たなければあんたはもう私の弟子じゃないよ!!」
「ええっ!?」
「いくら何でも理不尽過ぎる……」
「その代わりにあたしもあんたがバルトとやらに負けないように特訓してやる!!あんただって今よりも強くなりたいと思ってるんだろう?」
「そ、それはそうですけど……」
どうしてもバルルはマオをバルトに負かせたくはないらしく、彼女はこれまで避けていたマオを強くする方法を教える事にした。
「本当はもう少し後にやるつもりだったんだけどね……ほら、受け取りな」
「え、これは……」
「魔石さ、見るのは初めてじゃないだろう?」
「おおっ……綺麗」
バルルはため息まじりに懐からビー玉程の大きさの「水晶玉」を取り出し、それぞれが緑色と青色に光っていた。魔石という単語を聞いてマオは驚き、少し前に習った事を思い出す。
――魔石とは各属性のいずれかの魔力を宿した鉱石であり、主に魔法の力を強化する効果を持つ。魔石は杖や魔法腕輪に装着すると術者の魔法の力を強化させ、更には一部の
通常の場合、魔術師は杖や魔法腕輪を媒介にして自分の魔力を利用して魔法を発現させる。しかし、自分の力量に見合わない魔法を発動しようとする場合、どうしても足りない魔力を魔石に宿る魔力で補う事ができた。
この方法ならば魔力量が少ないマオでも魔石の力を使用すれば下級魔法以上の魔法を扱える可能性も十分にあった。しかし、どうしてその方法をバルルがマオに教えなかったのかと言うと、それには彼自身に問題があったからである。
「この魔石を杖に嵌め込めば今まで以上の魔法の力を使えるようになるよ」
「え、本当ですか!?」
「但し……あんたの場合は氷の魔法の使い手だからね。だから必要な魔石は二つになるんだよ」
「二つ?」
「普通の魔術師は基本的に一種類の魔石しか持ち合わせていないのさ。あたしとミイナの腕輪を見てみな」
「これ見て」
バルルは自分とミイナの魔法腕輪をマオに見せつけると、どちらも火属性の魔石を腕輪に嵌め込んでいる事を確認する。大きさに多少の違いはあるが、どちらも同じ属性の魔石である事は間違いない。
「基本的に魔術師が扱える属性は一人につき一つまでだからね。だけど、偶にあんたのように二つの属性の間にいる人間の場合、必要な魔石は二つになるんだよ」
「属性の……間?」
「あんたが扱う「氷」は水属性と風属性の中間に位置するのさ。要するにあんたは水属性と風属性の属性を半々ずつ持っている事になる。それはつまり、あんたが普段使用している魔力は二つの属性の性質を持ち合わせているのさ」
「えっと……」
「要するにあんたが魔石で魔法を強化する場合は風属性と水属性の魔石を同時に使用しないと駄目なわけ。それでもって魔石というのは馬鹿みたいに高いんだよ……これ一つでいくらぐらいするか分かるかい?」
「い、いくらですか?」
マオの耳元にバルルは口元を近づけると、彼女が用意した魔石の値段を聞いてマオは顔色を青ざめる。魔石は非常に高価な物であり、しかもマオの場合は属性の問題で二つの魔石を取りそろえなければならず、そのせいでバルルは魔石を利用した訓練を先延ばしにしていた事を明かす。
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