第84話 教師の驚愕

「はあっ!!」

「ガアッ!?」



コボルトが回避した氷刃を旋回させてマオは再度攻撃を行うと、背後から迫る氷刃にコボルトは野生の勘で気づき、慌てて身体を伏せて回避する。


自分の元に戻ってきた氷刃をマオは小杖を構えて留めると、その様子を見ていたコボルトが目を見開く。しかし、コボルトが行動を起こす前にマオは次の魔法を発動させた。



「まだまだっ!!」

「ッ……!?」



二つ目の氷刃を作り出したマオは今度はコボルトの左右に接近する様に放ち、挟み撃ちの形になったコボルトは咄嗟に後ろに飛んで回避する。



「ガアアッ……!?」

「逃がすかっ!!」



逃げ回るコボルトに対してマオは氷刃を操作して後を追わせ、コボルトは闘技台を駆け巡って攻撃を躱す。コボルトはファングよりも動きが早く、氷刃を操作して追撃を行うにも動きが早すぎるせいで当たらない。



(早いっ!?でも、この調子なら……)



コボルトは攻撃を躱すのに精いっぱいでマオに攻撃を仕掛ける余裕もなく、このまま逃げ続けてもいずれコボルトの方が体力切れを起して動きが鈍くなる。一方でマオの方は魔法を二回分しか消費しておらず、まだまだ余裕があった。



(もっと氷塊を増やすか?いや、このまま追い詰めれば……)



マオはコボルトをどのように追い込もうかと考えていると、彼の考えを読み取ったかのようにコボルトは行動を起こす。今まで逃げ回っていたコボルトだったが、唐突に方向を変えてマオに突進してきた。



「ガアアアッ!!」

「えっ!?」



突如として自分の周りを逃げ回っていたはずのコボルトが迫ってきた事により、マオは反応に遅れてしまう。彼の目線では線の動きで動いていたコボルトが今度は点の動きで移動してきた事で頭の理解が追いつかず、距離を詰められてしまう。


コボルトは鋼鉄をも切断できると言われる鋭い鉤爪を振りかざし、マオに目掛けて振り払う。しかし、何故かコボルトは途中で攻撃を止めた。



「ガアッ!?」

「くっ!?」



途中で何故かコボルトは攻撃を止めた事でマオは後ろに飛んで距離を取り、隙を逃さずに氷刃を操作して自分の元に移動させる。コボルトはそれを見て慌てて離れると、その様子を見ていた教師たちが訝しむ。



「な、何だ?今、コボルトが止まったような……」

「学園長!!あのコボルトに何か仕掛けを施していたのですか?」

「いいえ、私は何もしていないわ……助ける手間も省けたわね」



マオがコボルトに襲われかけた時、マリアは彼を助けるために杖を構えていた。しかし、実際はコボルトがマオを攻撃する寸前で止めた事で彼女は助ける必要はなくなった。


結界内に封じ込められたマオを助けるためには結界を解除するか、あるいはする程の魔法を発動しなければならない。ここに集まった教師の中で後者の方法を実行できるのはマリアだけである。



「たくっ、今のは冷っとしたね……」

「な、何だ?どうしてコボルトは攻撃を止めたんだ?あの子が何かしたようには見えなかったが……」

のさ。だから怖がって攻撃を辞めたんだよ」

「は?」



この場に存在する教師の中でバルルだけがコボルトが途中で攻撃を辞めた理由を見抜き、もしもコボルトがあのまま攻撃を続けていた場合、マオも無事では済まないだろうがコボルトは確実に


本来であれば大抵の魔術師は接近戦を苦手としており、敵が近付いてくる前に仕留めるのが魔術師の戦い方である。しかし、今のマオの場合は相手が接近してきたむしろ都合が良い。



(今のは危なかった……になるかと思った)



コボルトが接近してきた時、咄嗟にマオはを使いかけた。こちらの魔法は相手が接近してきた方がむしろ都合が良く、最初からコボルトが近付いてくる事を知っていれば確実に仕留める事ができた。



(さっきので警戒されたかもしれないけど……ここは行くしかない!!)



マオは危険を承知でコボルトの位置を把握し、自分の元に移動させた氷刃を再び放ち、しかも今度はマオ自身もコボルトに目掛けて駆け出す。



「うおおおおっ!!」

「ガアッ!?」

「ば、馬鹿な!?」

「止めろ、何を考えている!?」

「死ぬつもりか!?」



自分に目掛けて突っ込んできたマオを見てコボルトは驚愕の表情を浮かべ、闘技台の外で観戦していた教師たちも驚愕した。魔術師が自ら標的に近付くなど普通ならば有り得ず、の魔術師ならば距離を保って相手に攻撃するのが定跡だった。だからこそ教師たちは彼の行動を見て大声を上げてしまう。しかし、その声は結界内の彼に届く事はない。


しかし、自ら危険に晒す事になると知りながらもコボルトに接近する。自分に向かってくるマオと二つの氷刃を見てコボルトは躊躇したが、今度はマオを仕留めるために鉤爪を振りかざす。



「ガアアアアッ!!」

「うおおおおっ!!」



今度は躊躇せずに確実にマオを仕留めるためにコボルトは腕を伸ばすが、背丈の問題コボルトはマオに目掛けて腕を振り下ろす形となる。一方でマオの方は小杖を握りしめた状態でコボルトの胴体に突き刺し、彼は




※要望があったので急遽投稿しました。ですが、流石にきついので今後は要望があっても続きは投稿できないかもしれません。

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