第75話 オークとの戦闘

「うおおおおおっ!!」

「プギィッ!?」



高速回転しながら放たれた氷刃は森の中に生えている木々を巧みに潜り抜け、標的であるオークの元へ向かう。オークは自分に向かってくる円盤の形をした氷を見て戸惑い、咄嗟に顔面を両腕で覆い込んで防御の態勢に入った。


マオの作り出す氷刃は丸鋸のように周端に小さな刃が並んでおり、更に回転を加える事で切断力を増す。その威力は凄まじく、限界まで加速させれば鋼鉄だろうと切り裂く事もできる。



(行けっ!!)



氷刃はマオの意思に従って軌道を自由に操作し、障害物を避けて標的であるオークの元へ向かう。オークは防御の態勢を取るが、それを見越してマオは軌道を変化させて防御の薄い足元を最初に狙った。



「そこだっ!!」

「プギャアアッ!?」



軌道を変更した氷刃はオークの両足の脛の部分を切り裂き、森の中にオークの悲鳴が響き渡る。鋼鉄の剣を受けても逆に刃の方が折れる硬度を誇るオークの肉体だったが、マオの作り出した氷刃は見事にオークの肉体を切り裂いた。


両足を斬りつけられたオークは悲鳴を上げて地面に膝を突き、何が起きたのか理解できない様子だった。それを見たマオは隙を見せたオークに対して好機と判断し、小杖を動かして離れた場所にある氷刃を操作する。



(まだ終わっていない!!)



氷刃は破壊されるかあるいはマオが解除するまで消える事はなく、彼は氷刃を旋回させてオークの元へ放つ。オークは再び自分の元に迫りくる氷刃を見て怯え、咄嗟に頭を伏せた。



「プギィッ!?」

「避けたぞ!?」

「いや、まだだ!!やっちまいな!!」

「はい!!」



オークが頭を抱えて地面に伏せたせいで氷刃は頭上を通り過ぎたが、それを見たバルルがマオに声をかける。マオは氷刃を操作して攻撃を躱したと思い込んでいるオークの頭上に目掛けて氷刃を落とす。



「終わりだ!!」

「プギャアアアアアッ!?」



避けたと思い込んでいた氷刃が再びオークの頭部に突っ込み、高速回転した刃がオークの頭を切り裂いていく。大量の血を噴き出しながらオークは悲鳴を上げ、地面に倒れ込む。


頭から大量の血を流したオークを見てマオは氷刃の回転を止めると、身体を震わせながら荒い息を吐く。その様子を見てバルルはオークが死んだのかを自分で確かめるように指示を出す。



「マオ……あいつが死んだかどうか、確認しに行きな」

「は、はい……」

「お、おい……大丈夫か?顔色が悪いぞ?」

「確認なら俺達が……」

「だ、大丈夫です。僕にやらせてください……」



マオを気遣ったトムとヤンが彼の代わりにオークの死骸を確かめようとするが、マオは自分の目でオークを倒したのか確認しに向かう。恐る恐る彼はオークの元に近付き、他の者たちは緊張した様子で見守る。



(死んでいる……のか?)



オークは頭から血を流したまま動かず、マオは本当に止めを刺したのか確かめるために近寄る。だが、この時にマオは足元に落ちていた小枝を踏んでしまう。枝が折れる音が響いた瞬間、倒れていたオークが瞼を開いて起き上がる。



「プギィイイイッ!!」

「うわっ!?」

「マオ!?」

「危ない!?」



枝が折れる音を耳にしてオークは何者かが近付いている事を察知し、を辞めて起き上がる。オークはのこのこと近付いてきたマオに視線を向け、両腕を広げて襲い掛かろうとした。



(しまった!?)



迫りくるのオークの巨体を見てこのままでは押し潰されると判断したマオは小杖を構えると、反射的に魔法を発動させた。但し、今回は氷刃を作り出す余裕はなく、を放つ。



「うわぁっ!?」

「プギャアッ……!?」



マオが放った氷塊はオークの顔面に叩き付けられ、頭を怪我していた所に衝撃を受けてオークは身体をふらつかせる。その一瞬の隙を逃さずにマオは後ろに離れ、改めてオークと向き合う。


頭を攻撃された時にオークは嫌がる素振りを見せた事にマオは気付き、先ほどの攻撃でオークも重傷を負っていた。そこを狙ってマオは攻撃を行うために集中する。



(もっと強い衝撃を与えれば……!!)



小杖を構えたマオは再び氷塊を作り出そうとした時、不意にある事を思い出す。それは魔法学園に来たばかりの頃、彼は上級生の授業をこっそりと覗いた日の事を思い出す。




――魔法学園の三年生が訓練場で授業を行っていた際、マオも知っている生徒が一人居た。その人物は「リンダ」であり、彼女は魔法の授業で破壊された木造人形の破片が女子生徒に当たろうとした瞬間、自身の拳に風の魔力を纏わせた。


リンダは拳に「竜巻」を想像させる風の魔力を纏わせ、女子生徒に向かっていた木片を木端微塵に破壊した。その時の出来事を思い出したマオは使

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