第40話 同じ境遇
「あの時の私は魔力量が全てじゃない、魔力が少なかろうと魔法の使い方を工夫すればいい。そういったのにあの学園長ときたら聞く耳持たずに留年を言い渡しやがって……」
「気持ちは分かるわ、あの時に私が貴女を守れれば……」
「先生は悪くないよ、どうせ留年を言い渡されなくてもいつかはあの馬鹿に手を出していただろうからね……だけど、あいつのやり方は間違っていたよ」
先代の学園長は魔力量が少ない魔術師は「欠陥品」と思い込む古い時代の魔術師の考え方の持ち主で有り、そのせいで授業内容も魔力量が少ない生徒には付いていけない内容だった。
現在は廃止されているが当時の魔法学園では魔力を吸収する魔道具を利用し、それらを身に着けて授業を行う事もあった。この魔道具のせいで魔力量が少ない生徒は早々に体調不良を起こし、授業に付いていけない者は退学にされた。バルルも何度も体調を崩して倒れた事はあったが、それでも彼女は意地でも学園に居続けた。
3年生に上がった時の彼女は魔力量が少ないながらに同学年の生徒の中ではトップの成績を誇り、学園長以外の教師からも評価は高かった。しかし、それが気に入らなかったのか学園長は魔力量が少ないという理不尽な理由でバルルに留年を言い渡し、それに切れたバルルが学園長を殴って退学になったのが事件の真実だった。
「マオはあたしよりも魔力量が少ない。だけど、あいつの魔法は子供にしては見事だっただろう?」
「ええ、それは認めるわ」
「神童と呼ばれたリオン様と比べるとマオは魔力量も少ないし、魔法の腕も未熟かもしれない。それでもあたしはマオをリオン様と肩を並べるぐらいの魔術師に育て上げたい」
「それは貴方の願い?それとも……あの子が望んでいるのかしら?」
「……どっちもだよ」
マリアの言葉にバルルは苦笑いを浮かべ、彼女がマオの事を放っておけないのはリオンからの命令だけではなく、昔の自分とマオを重ね合わせているからだった。魔力量が少ない事で苦労した経験があるバルルだからこそ、マオの事を放っておく事はできなかった。
「話は分かったわ。けれど、具体的に貴女は私に何をしてほしいのかしら?」
「別にそう難しい事じゃないよ。要するにマオの面倒をあたしがみれるような環境を整えてくれればいいのさ。つまり――」
バルルは自分がマオの世話を見るために必要な環境を整えるため、マリアに頼みごとを行う――
――翌日、男子寮のマオの部屋に人が訪れる。その人物は荒々しくマオの部屋の扉を叩き、学生服に着替えていたマオは慌てて扉を開いた。
「は、はい!?」
「よっ、おはよう。昨日ぶりだね」
「えっ……バルルさん!?どうしてここに!?」
部屋の扉を開くとそこにはバルルが立っており、彼女はマオに笑みを浮かべる。マオは男子寮にバルルが現れた事に戸惑い、どうして彼女が訪れたのかを尋ねる。
「バルルさん、ここは関係者以外に立ち入りは禁止されてるんじゃ……」
「そんな事は知っているよ。だからあたしは問題ないのさ……ほれ、この格好を見れば分かるだろう?」
「格好って……」
バルルは自分の服装を指差すと、彼女はマオの担当教師になるはずのマカセが身に着けていたローブと同じ物を着込んでいた。但し、彼女の場合は赤色を基調としており、マカセは黒のローブを身に着けていた事をマオは思い出す。
この学園では学園長以外の教師は服装はローブで統一する事が決まっており、バルルがマカセと色違いのローブを着込んでいるという事は女性教員のローブを身に着けている事になる。その事に気付いたマオは驚いた表情を浮かべて彼女を見上げると、バルルはあっさりと話す。
「今日からはあたしがあんたの担当教師だよ!!よろしく、生徒一号君!!」
「ええええええっ!?」
マオの驚愕の声が男子寮に響き渡り、この日からマオはバルルの元で教えを受ける事になった――
※少し前の職員室
マリア「今日から新しく教師になったバルル先生よ」
バルル「よっ、どうもよろしく!!(´ω`)ノ」
マカセ「!!??(; ゚Д゚)」
※短かめなので今日はあと1話投稿します。
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