第34話 同世代の魔術師

「マカセ?マカセ……マカセ!?あんた、もしかしてあのマカセかい!?」

「な、何だ!?誰だ!?」

「ほら、あたしの事を忘れたのかい?あんたとは同じ学園だっただろ?」

「なっ!?そ、その声とふてぶてしい態度……まさか、バルルか!?」

「え、知り合いなんですか?」



バルルはマカセの顔を見て自分と同じ学年の生徒だと思い出し、一方でマカセの方は顔色を青くした。二人が知り合いだった事にマオは驚くが、マカセは慌てた様子で否定を行う。



「し、知らん!!お前の様な女なんぞ、私は知らないぞ!!」

「何言ってんだい、さっき名前を呼んだじゃないか?だいたいあんた、昔私にこくは……」

「わあっ!!わあああっ!!だ、黙れ!!」



マカセは昔の事を話そうとするバルルを黙らせようとすると、二人の関係が何となく分かり、どうやらマカセは過去にバルルに告白した事があるらしい。


息を荒げながらマカセはバルルを睨みつけ、マリアに振り返ってどうして彼女が魔法学園にいるのかを問い質す。



「学園長!!何故、部外者がここにいるのですか!?」

「まあ、別にそんな事はいいじゃないかい」

「良くはない!!学園長を殴って退学したような人間がここにいるだけで風紀が乱れる!!」

「学園長を殴った!?」



バルルは退学になった事は聞いていたが、まさか学園長を殴り飛ばして退学になったとは知らなかったマオは驚く。ちなみに学園長といってもマリアの事ではなく、バルルが通っていた時はマリアは教師を務めていたはずなので先代の学園長を殴った事になる。



「あれはまあ、仕方なかったのさ。あんな学園長にこの学園を任せていたらとんでもない事になったからね」

「ふん、格好をつけるな。自分が正義のために戦ったつもりか?」

「正義なんて臭い言葉を使うんじゃないよ。あたしは自分のためにしか戦わないんだ」

「二人とも、昔話はそこまでにしておきなさい」



言い争いを始めたバルルとマカセにマリアが注意すると、二人ともマリアの言葉に黙り込み、ばつが悪そうな表情を浮かべて顔を反らす。この二人の関係はマオは少し気になるが、マリアはそんな事よりもマカセにマオを授業に参加させるように指示を出す。



「マカセ先生、この子も練習させていいかしら?」

「え?いや、しかしこの子はまだ……」

「お願いするわね」

「あ、はい……」



まだ正式に魔法学園の生徒になったわけではないマオを授業に参加させる事にマカセは戸惑うが、マリアに促されると彼女に逆らずに授業内容を説明する。



「い、いいか?あの的に向けて魔法を当てるんだ。魔法を使うのは5回まで、もしも5回連続で当てる事ができれば星の徽章を上げよう」

「徽章?」

「この学園では上の学年に上がるためには評価が必要なんだよ。もしも年内に十分な評価を上げる事ができなかったら留年、最悪の場合は退学だね。星というのは教師が評価した生徒に上げる評価の証さ」

「か、勝手に説明するな!!」



マカセの代わりに学園の仕組みをバルルが説明すると、マオは生徒達を見渡すと確かに「星」のような形をした徽章を身に着けている子がいた。


この星の形をした徽章が生徒の評価に繋がるらしく、徽章を多く身に着けている子供ほど教師からの評価を受けている事になる。但し、年内に一定の評価を得られなかった生徒は留年する仕組みらしく、マオは緊張してしまう。



(星を貰えないと留年しちゃうのか……これは頑張らないと)



マオは小杖を取り出すと他の生徒が狙っていた木造製の人形の的に視線を向けた。この時に他の生徒とマカセはマオがどんな魔法を使うのか興味を抱き、彼が魔法を発動させるのを待つ。



「アイス」

「何っ……!?」

「え、何あれ?」

「氷……か?」

「氷の魔法が使えるの?」



小杖の先端から青色の光が灯ると氷の欠片が誕生し、それを見た生徒達とマカセは一瞬だけ驚く。しかし、マオの作り出した氷の欠片の大きさを見て戸惑う。



「あれ、なんか小さくないか?」

「何だあれ……大きくできないのか?」

「どんな魔法が使えるのかと思ったら……期待して損したな」

「ははっ、そんなので攻撃できるのか!?」

「こ、こら!!お前達、人の魔法を馬鹿にするんじゃない!!」



マオの小杖から誕生した「氷の欠片」を見て幼い子供達は笑ってしまい、自分達と比べてもみすぼらしい魔法を生み出した彼を笑ってしまう。そんな生徒達の姿を見てリンダは眉をしかめ、バルルも苛立ちを抱く。



(笑ってられるのは今の内だよ……みせてやりな、あんたの魔法を!!)



バルルは生徒達に笑われるマオを見て内心苛立ち、その一方で期待していた。彼女だけはマオが宿屋の裏庭で魔法の練習を行っていたのを知っており、彼ならば他の生徒の度肝を抜かせると信じていた。

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