第29話 魔力の制御方法

「魔法学園の教師共は生まれ持った魔力量を増やす事は絶対にできないと言い張っていたからね、だから授業の内容も限られた魔力でどのように有効的に魔法を使うべきかを教えていたのさ」

「授業はどんな感じでしたか?」

「そりゃきつかったよ。拷問にしか思えない酷い授業もあったね……」

「えっ!?」



拷問という言葉にマオは驚き、魔法学園に通うのは10代前半の子供達であるため、子供に対してそんな物騒な授業を行っていたのかと戸惑う。



「あたしが受けた授業は魔力を吸い込む特別な魔道具を身体に取りつけて、何処まで耐え切れるのか試す事もあったね。この授業が一番嫌だったね……魔力を根こそぎ奪われるまで魔道具を取り外す事は許されなかったからね」

「そ、それって大変なんじゃ……」

「大変なんてもんじゃないよ!!実際、この授業のせいで魔力を吸い上げられ過ぎて死にかけた生徒もたくさんいたからね……流石に今の時代では廃止されているだろうけど、あの時は本当に教師共が憎くて仕方なかったね」



昔を思い出しながら語るバルルの表情は引きつっており、彼女にとっても辛い思い出だった事が伺える。だが、どうしてそんな危険な真似を当時の教師が実行したのかマオは気になった。



「どうしてそんなに酷い真似を……」

「まあ、魔法学園に通うガキ共は当然だけど魔法が使える。あんたも分かるだろう?この魔法の力がどれほど危険な物か……」

「あっ……」

「魔法はだよ。もしも魔法を使えるガキが誰かと喧嘩した場合、魔法の力を使ったらどうなる?当然、大惨事になるだろう。だから教師共は魔法学園の生徒に魔法の恐ろしさを伝えるために厳しく躾けようとしてたんだろうね。まあ、どんな理由があろうとあたしを退学したくそ教師共に感謝なんてしないけどね」



バルルの時代の教師が生徒に拷問紛いの授業を行っていたのは、生徒たちが魔法の力を悪用する事を阻止するため、厳しく彼等を取り締まっていた。しかし、あまりに厳しすぎたせいで生徒たちから反感を抱かれる事も多い。


学園を退学されたバルルは今でも魔法学園の教師を嫌っているが、それでも彼女なりに教師の指導法はともかく、魔法を悪用させないという理念は納得はしている。それでも彼女は教師のやり方を全て認めたわけではなく、未だに恨みに思っている。



「魔法学園は魔法の技術を磨くだけじゃなく、魔法の危険性を教えて悪用しないように指導する場所だと教師共は言っていた。だけど、そんなのはあくまでも表向きの言い訳に過ぎないね。要するにあいつらは怖がってるんだよ」

「怖がっている?」

「魔法を扱える人間が悪人になる事を恐れているのさ。一流の魔術師ならたった一人でも千を超える兵士を倒せるぐらいの力があるからね。だから王国の連中は魔法の適性を持つ子供を集めて教育し、悪党にならないように指導を行う。要するに国の秩序を守るために魔法を使える子供を集めているのさ……たく、あたしらしくもない話をしちまたね」



バルルが王国が魔術師の適性を持つ子供を王都の魔法学園に集める本当の理由は国の秩序のためであり、魔法を使える子供達が魔法の力を悪用させないために教育するのが魔法学園が作られた本当の理由だと語った。


話を聞かされたマオも納得し、魔法学園が単なる魔法の技術を磨くだけの施設ではない事を知る。だが、マオの場合はその魔法学園にもまだ入学しておらず、本来の目的を思い出したマオは慌ててバルルに問い質す。



「あ、しまった!!バルルさん、魔法学園は何時から開いてるんですか!?」

「え?あ、ああ……今の時間帯ならもう開いてるんじゃないかい?」

「良かった……それじゃあ、今から行ってきます!!朝食はいいです!!」

「ちょ、ちょっと!?急にどうしたんだい!!」



今日中に魔法学園で入学手続きを行わなければならず、マオは慌てて宿屋を飛び出して魔法学園へ向かおうとした。昨日も一昨日も通り魔のせいで結局は魔法学園へ辿り着けず、今日こそは魔法学園で入学手続きを行わないと明日からマオは路頭に迷う事になる。



「急がないと……うわっ!?」

「おっと……大丈夫ですか?」



玄関から出て行こうとしたマオは扉を開いた瞬間、向かい側から現れた女性とぶつかってしまう。この時にマオは女性の胸元に顔を突っ込み、女性は彼を抱き留める形になった。



(うわっ……柔らかい、それに凄い美人だ)



マオは女性の胸元に挟まれながら相手の顔を見上げ、彼が今まで出会った女性の中でも一番美しいと思った。相手の女性はマオが飛び込んできても特に怒りはせず、彼の頭を撫でながら優しく語りかける。



「急に飛び出したら危ないですよ」

「あっ……す、すいません!!急いでたのでつい……」



女性の言葉にマオは頬を赤く染め、慌てて謝罪する。そんな彼に女性は微笑み、ある事に気が付く。少年の容姿を見て女性は驚いた表情を浮かべ、一方でマオの方は自分を見つめてくる女性に戸惑う。

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