第28話 魔力量を増やす方法

「あのっ!!聞きたいことがあるんですけど!!」

「な、何だい!?急に大声を上げて……」

「あ、すいません……でも、どうしても聞きたいことがあるんです」



マオは真剣な表情を浮かべると、バルルは彼の気迫に戸惑う。本当ならば他の客も起きてくるのでそろそろ仕事に取りかからなければならないのだが、マオの真剣な顔を見て仕方なく彼の話を聞く事にした。



「魔力量が少ない事は魔術師にとって弱点になるんですか?」

「そりゃまあ……当然の話だね」

「それなら魔力量を増やす方法はないんですか?」



駄目元でマオはバルルに魔力量を増やす方法がないのか尋ね、もしもそんな方法があるのならばぜひとも知りたかった。だが、彼女は難しい表情を浮かべて腕を組む。



「魔力量を増やすね……まあ、あるにはあるね」

「えっ!?あるんですか!?」

「ああ、だけどこの方法は危険が大きい。それに必ず魔力が増えるとも限らないし、人によっては全く効果がない事もある。それでも聞きたいのかい?」

「はい!!教えてください!!」



バルルの言葉にマオは頷き、そんな彼にバルルは困った表情を浮かべ、仕方なくに彼女が実践した魔力量を増やす方法を教える。



「これは冒険者の間にだけ伝わっている方法なんだけどね……

「えっ……ま、魔物!?」

「そうさ、実際にあたしも体験した事があるからわかるけど、魔物を倒せば倒す程に魔力が伸びていく感覚を覚える時がある。しかも危険度が高い魔物を倒す程に魔力が増えていく気がしたね」



冒険者時代のバルルは魔物を倒した際、時折自分の魔力が膨れ上がる感覚を覚えた。これは錯覚ではなく、実際に彼女の魔力量は冒険者になる前となった後で大きな差があった。


まだ魔法学園に通っていた頃のバルルの魔力量は学園に通う生徒の中では平均よりも少し上程度だった。しかし、冒険者を始めてから魔物を倒す様になった頃から魔力量が増え始め、魔法学園に通っていた頃は扱えなかった魔法も覚える事ができたという。



「魔法学園の教師共は魔術師の魔力量は生まれた時に決まっていて死ぬまで増える事も減る事もないと言い張ってるよ。けどね、あたしは確かに感じたんだ。魔物を倒した時、ほんの僅かだけど確実に魔力量が増えた気がしたんだ」

「じゃあ、もしも魔物を倒し続ければ……魔力量は増えるんですか?」

「理論上はそうなるね、だけど魔力が増える量は人によって差があるんだろうね。あたしの場合は上級魔法が扱えるまで魔力量を伸ばす事には成功したけど、あたしよりも魔物を倒しているはずなのに魔力量が増えない事に悩んでいる奴もいたよ」



バルルによれば彼女は数百匹の魔物を倒した事で魔力量を増加させる事に成功したが、彼女以上に魔物を倒しているはずなのに全く魔力量が増えない魔術師も居た。魔力量が伸びるかどうかは個人差があるらしく、必ずしもマオが魔物を倒しても魔力量が伸びるとは限らない。



「一応は言っておくけど、あんた馬鹿な真似はするんじゃないよ。魔物がどれほど危険な存在なのか知っているかい?あいつらはただの動物じゃないんだ、恐ろしい力を持った怪物なんだよ」

「は、はい……それは知っています」



マオはオークに襲われた傭兵団を思い出し、鋼鉄製の剣すらもオークの肉体には通じず、熊が可愛く思えるほどの圧倒的な腕力でオークは傭兵団を皆殺しにした。あの光景はマオも忘れられず、もしもリオンが助けなかったらマオも殺されていた。


魔物の恐ろしさを知っているだけにマオはバルルが教えてくれた魔力量を伸ばす方法は実践できる自信はなく、他に魔力量を伸ばす方法がないのかを尋ねる。



「他に魔力量を増やす方法は……」

「さあね……あたしが知っているのはこの方法だけだからね。でも、なら知っているよ」

「えっ……?」



魔力を増やすのではなく、魔力の消費を抑える方法ならばバルルも知っているらしく、彼女によると魔法学園では魔力消費を抑える術を学んでいた事を話す。



「あたしが通っていた時の魔法学園は「限られた魔力量で有効的な魔法を使う」という理論を徹底的に生徒に叩き込んでいたね。授業では主に余分な魔力消費を抑えて魔法を発動させる術しか教えていなかったね」

「余分な魔力消費を抑える?」

「要するに自分の魔力を完全に操作コントロールするのさ。特に初めて魔法を覚えた奴等は無意識に無駄に魔力を消費している事が多いからね」



バルルによれば彼女が通っていた時代の魔法学園は魔力を完璧に使いこなすための授業が行われていたらしく、その中に余分な魔力の消費を抑える授業があった。

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