下級魔導士と呼ばれた少年
カタナヅキ
プロローグ
第1話 適性の儀式
――人間が治める国家「ヒトノ王国」この国では10才の誕生日を迎えた子供は教会に赴き、特別な儀式を受ける法律が定められていた。儀式を受けた子供達は将来的にどのような職業に向いているのか判明し、一般人の間では「適性の儀式」と呼ばれている。
儀式といっても簡単なもので台座に設置された水晶玉に触れるだけで儀式は完了する。この水晶玉は触れた人間の能力を把握し、将来的にどのような職業が向いているのかを示す。
この物語の主人公の「マオ」は両親共に農民の出身であり、先祖の中に特別な職業の適性を持った人間は一人もいないはずだった。しかし、彼が12才の時に儀式を受けて水晶玉に触れた途端、水晶玉の反応を確認した修道女が驚きの声を上げる。
「ま、まさか……司教、大変でございます!!」
「どうしたのですか、急に大声を出して……」
「も、申し訳ございません!!ですが、これを見てください!!」
「……これはっ!?」
「あ、あの……」
マオが水晶玉に触れた瞬間、先ほどまで無色だったはずの水晶玉は中心部が青く光り輝き、それを見た修道女と司教も動揺する。いったい何が起きたのか幼いマオは理解できずに戸惑っていると、司教は慌てて修道女に命じた。
「この子の両親を今すぐに連れてきてください!!」
「は、はい!!」
「えっ……」
急に両親を連れてくるように指示した司教にマオは戸惑うが、そんなマオに対して司教は彼の肩を掴んで興奮した様子で告げる。
「いいですか、落ち着いて聞いて下さい。貴方には魔術師の適性があります」
「ま、魔術師……?それって絵本に出てくる魔法使いの事ですか?」
「その通りです。まあ、絵本の魔法使いのようになんでもできる魔術師は滅多にいませんが、貴方は間違いなく魔法を扱える才能を持ち合わせています」
「でも、魔法使いはお父さんかお母さんが魔法使いじゃないと魔法は使えないって……」
マオは両親に聞いた話では魔術師になれるのは先祖の誰かが魔術師だった場合であり、この場合はマオの父親も母親も当てはまらない。しかし、司教によると極稀に一般人の間でも魔術師が生まれる事があるという。
「恐らく、貴方の先祖の中に魔術師が居たのでしょう。私もよく知らないのですが、隔世遺伝とやらで両親とは全く別の職業の適性を持って生まれる子供がいるそうです」
「かくせい……?」
「ですが、これは素晴らしい事です!!貴方は魔術師の適性があるという事は、魔法を扱える才能を持ち合わせているという事です!!ご両親もきっと喜ばれるでしょう!!この国では魔術師は希少ですからね、早速王都に連絡を送って魔法学園の入学の手続きを行いましょう!!」
「ま、魔法学園!?」
魔法学園の事はマオも知っており、噂では魔術師の適性を持つ子供達が国中から集められて魔法の勉強を行うと聞いている。しかし、まさか自分が魔法学園に通う日が来るなどマオは夢にも思わなかった。
12才の誕生日を迎えるまでマオは両親と同じように「農民」として生きていくと思い込んでいた。しかし、急に魔法の才能があるからといって魔法学園に送り込まれるなど夢にも思わなかった。
(僕が魔法使いなんて……何かの間違いじゃないの?)
昨日までは普通の子供として暮らしていたのにいきなり魔法学園に入学なんて言われてもマオは戸惑う。だが、自分が魔法を使える可能性があると知り、彼は期待してしまう。
(でも、本当に魔法が使えるなら……使ってみたい)
絵本に描かれている魔法使いは殆どが「主役」として扱われ、時には悪の黒幕として描かれる事が多い。この国では魔術師は貴重な存在であり、魔術師の適性を持つ子供はどんな身分だろうと関係なく魔法学園に入学させる決まりがあった。
こうして平民の出身のマオは急遽王都に存在する魔法学園の入学が決まる。しかし、この時点の彼は知らなかった。確かに彼には魔法を扱う才能はあったが、肝心の魔法を生み出す力に関しては他の子供と比べて大きな差がある事を――
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