籠の中の原田くん
四匹
「あの・・皆さんはEスポーツのメンバーさんですか」
三人は僕をぼんやり見ているだけ。
段々薄暗さに目が慣れてきて三人の姿形がハッキリ見えてきた。
その内ふたりは制服を着ている女の子。ひとりはびっくりするくらい大きい娘、もうひとりはすごく小さい出っ歯な眼鏡の子。
たぶんもうひとりは男の子。年下なような気もするがいかんせん顔がすごく腫れている、私刑でもされたのかってくらいに。
男の子の顔をみながら何か声を掛けるべきかと迷っていると。
「私たち攫われて閉じ込められたんです」
と、一番小さな女の子が蚊の鳴くような声で喋る。
彼女は大きく迫り出た歯だけを隠しながらワッと泣き出した。
僕はどうすることもできず只黙っていた。
彼女が泣き終わり落ち着いてきたところでそれぞれ自己紹介しようと提案する。
女の子二人は自己紹介してくれた。小さいほうが團さん、大きいほうが船津さん。
男の子の方は黙りだった。
どうしようかと思っていたが船津さんが立ち上がると男の子は怯えたように早口で自分の名前だけ告げた。
僕も自己紹介をし、このわけのわからない状況を整理しようと試みる。
僕たち全員の意見は同じだった。
ハゲの大男に攫われた。
「なんで攫われたのか心当たりはある?」
するとまた團さんが泣き出す。
「何もありません、本当にいきなり襲われて気づいたらこんな所に・・・ウッウッ・・」
眼鏡を外し左手で目を、右手で口を隠しながらしゃくりあげる。
その背中を優しくさすり続ける船津さん、光景は優しいが何もかもが規格外に大きく肩も腕も力士のような彼女は中々の迫力。
目は糸の様に細く頰のニキビは膿んでいる。琢はその二人を見やりながら何やらブツブツ呟いている。
結局、自己紹介でお互いに名前がわかっただけで他に何も進展は無い。
目の前のテーブルには乾パンや水、ビスケットなど日持ちのするお菓子が並べてある。
三人の話によると鉄扉にある小さな窓から投げ入れられたらしい。見ると確かに小さな腕がはいる程の小さな窓が取り付けられている。
ただ食料があったからなんだというのだ。
僕たちは何故閉じ込められているのか。
四人はテーブルを囲み座ったまま項垂れている。
喋ろうとも動こうともしない三人をみていてもしょうがないので、この閉じ込められた家を見て回ることにする。
と言っても玄関からはいって居間。そしてたなりに四畳ほどの部屋。トイレに小さなタイル風呂。それだけだ水は出るし裸電球が光っているので電気はきてる。
そしてすべての窓はご丁寧に鉄板で閉じられていいてどうにもできない。
トイレを開けた時に出てきたのか大きな銀蝿がうなるように飛び回っている。
僕は項垂れた三人に向かって。
「とりあえず皆で力を合わせてここから出る方法を探してみましょう!」
團さんだけがこちらを見ながら。
「そうですね、がんばりましょう」
なんて答えてくれる。
船津さんも頷きはしてくれた。
琢くんだけが以上に僕を睨みつけている。
僕が何か悪いことをしたのだろうか。
その後、四人で窓の鉄板を押したり叩いたり、畳を剥いで床下を覗いたりしてみたがどう足掻いてもこの家からは出られないらしい。
ぐったりと居間に集まり差し入れられているおにぎりやクッキーを水と一緒に流し込んだ。
それから数日、僕たちはただ差し入れられた食料を食べるだけになっていた。
一日一回必ず食料だけは律儀に入ってくる。それを食べるだけ。だって他にやることがないんだもん。
だいたい僕たちを閉じ込めてる理由ってなんなんだろう。
考えても無駄なので僕たちはまた差し入れられた食料を食べ眠る。
そんな無益な日々が数日続いた。
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