かゆい。




始めに感じたのは痒みだった。



くっついたまぶたを剥がすように開く。


そこは暗闇だった。



僕は何故かうつぶせに寝ているようだ。頰をべったりと床につけて。

どうも床は畳らしい。しかも古い畳か。


身体を起こしたときに畳のカスがパラパラと頰に付いてきたのが感じられる。


ここはどこだ。


焦りはなく頭がひどくぼんやりとしている。



やがて目が暗闇になれてくる。どうやら和室?のようだ。


畳敷きに正面に襖がある。



反対側に窓があるがそこには驚愕。分厚い鉄板がはめ込んであり要塞さながらとなっている。押しても引いてもびくともしない。鋼鉄の壁だ。




閉じ込められている。


でも一体何故?



なにがなんだかわからいないが此処に立ち尽くしていてもしかたがない。


正面の襖に手を掛けた。



もし閉まっていたらどうしようかと思ったが襖はすんなり開いた。



 襖の先も四畳くらいの広さ。


天井にぷらんと垂れ下がった裸電球の黄みがかった明かりに照らされた三つの陰。


僕はギョッとして声も出せなかったが相手もこちらを見て吃驚しているのが見てとれた。


 そこには三人の人間が居た。


髪型と服装だけで判断すればひとりは男、後は女だ。


男は短髪に太いフレームの眼鏡をかけている。だまっていても口元が大きくせり出している。結構な出っ歯だ。



女子は二人とも制服だ。


ひとりは細く小柄でお下げ髪、男と同じくウェリントンタイプの太いフレームの眼鏡を掛けている。そして出っ歯だ。


最後の一人は大きい、歩き回っていたものだからその大きさがわかる。男女ふたりより肩幅が大きいのだ。胸も凄い、胸部がはち切れんばかり盛り上がっている。髪はベリーショート、薄暗い明かりの下でもわかるくらいなニキビ顔だ。


なんだこのメンバーは。



皆会話もなく小さな女の子だけが貧乏ゆすりしながら独り言を言っている。


大女は部屋を歩き回っている。その巨体が動くたびに部屋全体が揺れているように感じる。裸電球の揺れに合わせて全員の陰が揺らぐ。


もしかしてこの人達がEスポーツのメンバーなのか。



僕は恐る恐る声を掛けてみる。



「あの、皆さんがEスポーツチームなんですか?」





返事は無かった。

三人はこちらをじっと見詰めるだけだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る