戦闘職編
第一話:戦士系
「さて。ここまで色々と話してきたけれど、他に何か聞きたい事はあるかしら?」
「あの、一般職っていうのは何となく想像がつくんですけど、戦闘職ってどんなのがあるんですか?」
「あら? ミサキはその辺りに興味があるの?」
「はい。今はまだ全然そんな事を考える必要ないんですけど、もし元の世界に戻れない時は、和人お兄ちゃんと一緒にいるために、冒険者になろうかなって……」
「それは……危険ではございませんか?」
「アンナ。ミサキなりに覚悟を決めているのよ。あまり不安にさせるような事は止めなさい」
「あ……申し訳ございません」
「いいんですよ。アンナさんの不安も最もですから」
「じゃあ、気を取り直してまずは戦士系について説明しましょうか」
「はい! お願いします!」
───
「戦士系の職業はこの世界の冒険者の中でも、最も種類の多い職業よね」
「はい。単純な下位職だけでも、戦士、剣士、
「そんなに多いんですか!?」
「そうね。その分上位職も多いわ。ちょっと図に書いてみましょうか」
下位職 上位職
───────────
戦士───┬──軽戦士
└──重戦士
剣士───┬──魔術剣士
└──聖剣士
└──
└──
└──
騎士───┬──魔術騎士
├──聖騎士
├──重騎士
└──軽騎士
闘士───┬──武闘家
└──
武芸者
───────────
「うわぁ……結構数多いんですね」
「そうね。ひとつずつ説明したほうがよいかしら?」
「フィリーネさんやアンナさんが面倒でなければ……」
「では、各職業は
───
「下位職だけで八職業ございますが、戦士が最も標準的な戦闘職であり、最も多くの武器、防具に長けた職業と言えるでしょうか」
「え? だとしたら他の職業って意味はあるんですか?」
「勿論でございます。剣士を始めとした武器種を冠した職業は、戦士の中でもその武器に特化した職業。武器種を変更するような汎用的な戦いはできませんが、それ故に該当する武器種に卓越した強さを持っており、その職業だからこそ覚えられる専用の技も多く揃えております」
「騎士は元々戦士とは異なり城で重用される兵科でもあるけれど、職業柄重装の装備が多いのと、馬上戦闘も得意とするわね。闘士は素手やナックル、棍など、独特な武術に長けた職業だから、これもまた戦士とは随分毛色が違うし、武芸者はカズトを見れば分かる通り、唯一全職業の中で、刀を使える独自の職でもあるわ」
「つまり、汎用性を取るか、特化した力を選ぶか。そんな感じなんですか?」
「流石、物わかりが良いわね」
「えへへ。ありがとうございます」
───
「ちなみに上位職って、何か皆似た感じの名前になっていませんか?」
「はい。わかりやすくご説明しますと、『重』と付く上位職は、その職業でもより重い武器や防具を装備して戦います。両手斧等の重いけれど火力の高い武器を使い熟すことに長けておりますし、本来防具である盾も大型のものを装備でき、相手の攻撃を弾いたり、盾自身で攻撃する事もできます」
「何かすごくパワフルですね。じゃあ『軽』って付く場合、軽い武器や防具に特化しているって事ですか?」
「その通りでございます。武器も装備も軽い分、重系の受けを前提とした職業より、その身軽さや素早い連続攻撃を武器に戦いますので、完全に真逆と言えますね」
「ちなみに『魔術』系は文字通り魔術師の使える魔術を駆使できて、『聖』と付く場合には同様に聖術師の使える聖術を駆使できるわ」
「え? それってすごく便利そうですよね。皆さんそれを選んだりしないんですか?」
「残念ながらね」
「どうしてですか?」
「ひとつは、本来の魔術師や聖術師が使えるすべてを術を駆使できるわけじゃない事。それからその特性上、必然的に装備可能な武器や防具が限定されることね」
「武器や防具がですか?」
「はい。武器についてお話しますと、魔術師、聖術師は術を使うため、必ず媒体となる物が必要なのです。本来の術師であれば、魔導書や杖を媒体としますが、術師系の戦士の場合、それを
「それだけだったら別に問題はないんじゃないんですか?」
「いいえ。そもそも術師の媒体以上に、
「そしてそれは防具も同様なのです。術師は術をできるだけ効率よく発動するよう、ローブや革装備のような軽装かつ鉄などの金属系素材を避けているのですが、術系の戦士も近い制約を背負ってしまうのです」
「近い制約ですか?」
「はい。例えば鉄装備なんかも装備はできるものの、重戦士のような重装はできません。また、普通の装備では結局術の効果が落ちてしまうので、結局
「それってつまり、すごく高価な職業って事になるんですか?」
「そうとも言えるわね。まあ、それでも利点も多いからこそ、目指す人もそれなりにいるのだけど」
───
「武闘家は確かミコラさんの職業でしたよね」
「ええ。主に拳蹴に特化した戦いをする闘士の上位職ね。対して
「でも、素手で鎧を着た相手を倒すなんてできるんですか?」
「はい。武闘家にはそういう相手に特化した、闘気を駆使した技もあるのですよ」
「へー。凄いですね! あ、ちなみに武芸者って、見た所上位職がないみたいですけど……」
「この職業は元々
「どうしてですか?」
「大きくは二つございますが、ひとつはその戦い方でしょうか」
「戦い方ですか?」
「はい。武芸者は主に対人戦を想定した戦いを得意としますが、それは言い方を変えれば幻獣などに対しての戦いに不向きであるとも言えます」
「和人お兄ちゃんは術を使ったりしますけど、あれは武芸者の力じゃないんですか?」
「はい。残念ながら」
「後は武芸者の使う刀や薙刀もそうね。この二つは相手を斬る事を目的としているのだけど、前衛の多くは厚い鎧を纏っている事も多いの。鎧毎敵を斬り伏せるのは正直愚策。そういう点では、そういう鎧に対しても力でねじ伏せやすい武器を持つ、他の前衛の方が向いているというのもあるわ」
「何かこう聞くと不遇にかんじますね」
「そうですね。一説では当時の武芸者であった方が強すぎ、その後武芸者となった他の方々が、そこまでの腕に達せなかったという話もございます」
「そして不人気だからこそ、今や戦士系で最も人口の少ない職業となってしまったのよ」
「何か寂しいですね」
「そうね。そういえば、カズトは何故武芸者を目指したのかしら?」
「あ、多分ですけど。私達の世界の住んでいた国には、昔同じような刀を使う職業があったんです。だからお兄ちゃんも、その格好良さに憧れたのかも」
「確かに、カズトの刀捌きは別格にございますし、素晴らしいものですね」
「確かに見惚れる動きをするわね。あれだけ見れば、憧れる人も多いと思うのだけれど。やはりそうもいかないのが現実という事ね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます