第2話 これが戦争
我らフラウ隊、赤軍の女兵士一人を捕虜とす。
捕虜の今後の待遇を打電す。
特殊戦闘部隊命令第3条5項に則り銃殺とす。
ハイルヒトラー
「ランゼーツェ、報告が終了次第、奴の元へ行くぞ。」
「ッ....、了解しました....」
アンナ中佐はランゼーツェを連れてフィーナの居る元場所へ歩き出した。
私の横にいる捕虜、"フィーナ ロマネヤコフ"とそれなりに交流を深めた。
互いに言葉が通じないので、物々交換を交えながらコミュニケーションを取る。
「これは本国のタバコだ。」
一本手に取り口に加える。
「苦手なのだがな。」
火を付け、煙を肺に届ける。
「ゴホッ!」
急に吸い過ぎて噎せてしまった。そんな私をみてフィーナが微笑む。
「あんたにもやるよ。」
口に加えてたそれを彼女に渡す。
「ごほっ!」
彼女もまた噎せて、胸を叩いている。
後方からアンナ中佐とランゼーツェの足音が近づいてきた。
「それ以上話すな。敵兵に情が湧くかもしれん。」
彼女はそう言うと、拳銃を捕虜の頭に近づける。
「え....」
再び死の感情が呼び起こされた彼女は涙を溜め、ガチガチと歯を震わせながら必死に叫ぶ。
「.....!! .....!!!」
何を言っているかはわからないが、何を訴えているのかはわかる。
私は今までにない感情を知る。
眼前の光景に胸が苦しくなる。知らない。こんな感情初めてだ。
捕虜は私の方を向き、涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔を見せる。
「フィーナ....!」
彼女は私の名前を叫んだ。
「ッ!!」
「パァン」
と乾いた銃声が草原に響き、同時に頭から多量の血を流したフィーナ ロマネヤコフが倒れた。
「アンナ中佐ァ!!」
「何もここまでしなくても!」
私はアンナ中佐に怒りをぶつける。
胸のざわめきや苦しみが怒気に変わった。
「彼女は交戦の意志などありませんでした! 赤軍の後退に遅れ、己の意志で降伏したのですよ!?」
アンナ中佐は軍帽を深く被り直しながら呟く。
「特殊戦闘部隊命令第3条5項」
我らの中でも悪名高い3.5(ドラィフュンフ)。
「捕虜は政治将校等有益な情報を持ってない者は即刻処刑せよ。」
「我らはあくまで規則に則っただけだ。」
彼女は拳銃を腰にしまいながら、部隊の元へ戻る。
「これは私見的意見だが。」
「後方部隊にソイツを回したところで尋問や拷問、暴力、凌辱を受けるのは目に見えている。」
「フィーナ ロマネヤコフを一人の女性として考えた時、この場で銃殺した方が彼女の幸せだと考える。」
ランゼーツェが遺体に駆け寄り、胸の前で十字を切る。
目を閉じながら彼女は呟く。
「フィーナ、すまない。」
その言葉の対象に困惑した....。
1941年7月4日。
捕虜の銃殺から2日が経過した。
我らフラウ隊は最前線の町でポーランド軍を吸収したソ連軍の激しい抵抗に遭っている。
アンナ中佐が手信号で散開している我らに命令する。
「「敵機関銃陣地を潰す。」」
「「フィーナ、イリゼは横の建物をつたい、接近」」
「「ゾルゲは敵狙撃兵の排除。」」
「「ランゼーツェ及びマイコは機関銃で弾幕を張れ」」
通りの戦いではより多くの弾幕を張った方が有利だ。
MG34の援護射撃は単なる援護ではない。
敵の注意をランゼーツェ達に引く為にも必要だ。
ゾルゲの横で無線機を持ち、他部隊と連携を取りながら、双眼鏡で戦況の把握と狙撃兵の捜索をするアンナ中佐の能力が末恐ろしい。
「フィーナ、 私が手柄を取るからあんたは援護しなさい。」
「私の戦果は攻略の役に立ち、その報はいずれ総統のお耳に入る!」
私はイリゼを制する。
「今はそんなこと言ってる場合じゃない」
MP18の弾倉を替え、息を整える。
敵機関銃陣地は建物から出てすぐ右にある。
M24手榴弾の雷管を引き抜き、投げる。
陣地無いのソ連兵が何か叫んだ後、爆発する。
爆発と同時にランゼーツェ達の掩護射撃が止む
「今だ!!」
建物を抜け、陣地内にいるソ連兵に鉛玉を発射する。
陣地制圧、と気を緩めた瞬間、倒れていたソ連兵が私に覆いかぶさる。
「くっ!!」
「....!!!!.....!!」
軍靴に刺さっているナイフで敵兵の横腹を2回刺突する。
兵士は声無く崩れ落ちた。
戦場のフラウ 桜子 さくら @Someiyosino
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