暗殺者ですが捕まってしまったので転職することになりました〜糾弾のクロニクル〜
ふぃるめる
Prologue
―――ソーウェン港―――
深夜、港の倉庫裏。
異国の貿易船が港内に滑り込んでくると静かに停船した。
停船した船からは、ほんのわずかな明かりがこぼれていたがよく見ないとわからない程度の明るさだ。
しばらくすると、縄梯子や縄などが船から投げられる。
それをどこから見ていたのか、数台の荷車が船の前にやってきて何人かが縄梯子を登り乗船していく。
後方の荷車からは用心棒として雇われたのか八人余りの傭兵たちが降りてくる。
堅気ではない空気感を纏っている男たちだ、傭兵というよりは傭兵崩れといった方が正しいのかもしれない。
傭兵の中でも犯罪行為に手を染める者たちのことを一般的に傭兵崩れと言う。
その一部始終を倉庫の壁にある小窓から見ている者たちがいた。
「いくぞ」
小声で黒色のジャケットを羽織った青年がわきに控えている同じような服装の少女たちに告げる。
二人の金と銀の髪は月に照らされて光り輝く。
「はい…」
「イエッサー!」
二人の少女の片割れの銀髪は静かに、そして一方の金髪少女は、ビシッと敬礼をして応じた。
「静かにしろ……声がでかい」
そんな少女を青年はたしなめる。
そう、これは極秘任務なのだ。
完全に縄梯子を登り切って乗船したタイミングを見計らって隠れていた倉庫の中から影を闇を伝って荷車へと近づく。
「
「ああ、わかってるってばよ!タイチョーさんの分も殺っとくからよ安心して荷車の中身を調べな」
金髪は舌なめずりしながら剣を鞘から抜いた。
「私も行ってきます。すぐに片づけて船に乗り移れるようにしますから」
「ああ……頼む」
銀髪は金髪とともに傭兵崩れの中へと飛び込んでいった。
闇に甲高い音が響く寸刻の間の剣戟――――二人はジャケットを血で汚して戻ってきた。
「あんなに弱いとつまらんな、タイチョーさん、暇だったら相手してくんねーか?」
「今、俺が何をしているかを見てから言え」
荷車の運んでいたブツは大量の粉だった。
目の前にあった袋に剣先を当て破り中の粉を少量、指にのせて舐める。
「美味いのか、それ?」
金髪は青年をまねて指に少量の粉をのせて舐める。
「麻薬だな」
「これが麻薬の味なのか? 初知りだぜ」
青年はそのうちいくつかを服の内側にしまい込んだ。
「家で楽しもうってか?」
「証拠品として提出するためだ。無駄口たたかずにさっさと船の中の人間を始末するぞ」
青年は長剣を片手に縄梯子を登っていく。
「今度こそはマシな奴がいるといいな」
「後がつかえてますよ」
銀髪は金髪の尻を剣先でちょんちょん突ついた。
「ばかやろーあぶねーじゃねーかよ」
青年は甲板のへりから注意深くあたりをうかがい甲板上へと上がった。
そのあとに続いて金髪の銀髪も甲板上へと上がる。
さすがに騒いでいれば気付かれるか十人ほどの異国の見慣れぬ武器を手にした男たちに前方を塞がれた。
「なるべく早く済まして帰還するぞ」
「あいよ」
「はい」
青年の名はレナード。
金髪はルカ、銀髪はイゼリナという。
三人が三人ともに裏の世界では名のある者たちだった。
彼らは意図せず息を合わせて各々の得物を手に突っ込んでいく。
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