18話 爆ぜる気持ち
バドさんたちが去って、わずかに時間が経過した頃。
頼もしい背中がすっかり見えなくなっちゃった。
その間、ノルくんはただ震えて耐えていた。
今すぐにでも駆け出してあとを追いたい気持ちをぐっと堪えて。
そんなとき、近寄ってきたのはセイマネだった。
私とグラさんに目もくれず、真っ先にノルくんの方へと近寄った。
「よかったです、ノーブルくんになにもなくて。私、最初にダンジョン攻略へ向かおうとしたとき心配していたんですよ?」
私たちが向かおうとして──っていうか、ノルくんがバドさんのあとを追うことを心配しての言葉。
後ろのファンの子たちも、セイマネの言葉に静かに頷いている。
あの子たちも言い争っていたけど、結局のところはみんなの意見はこう。
〝サグズ・オブ・エデンがいなくなってよかった。〟
今まで自分たちがかけてもらった恩を忘れ、そんな思いを抱いていることは表情と態度が物語っていた。
この数日間で彼らの意図しないところで、得体の知れないなにかに操られているとも知らずに。
あの人たちの本質を見ないで、表向きの部分だけで判断をしているんだ。
そんなこと──
「いいわけ……ないだろッ!!」
──ノルくんが望んでいるわけないじゃん。
「セイマネ──みんなは、なにもわかってない!」
感謝……それか、同調の言葉を期待してたのかな。
怒号に次ぐ怒号に、セイマネはすっかり固まっていた。
そりゃそうだよね、推しから名指しで否定されるような言葉を告げられたんだもん。
「みんなはなんとも思わないのかよ!? あの人たちは、自分から全部背負って行ったんだぞ!?
嫌われようが、疎まれようが。
自分たちに正直に生きたいと願う人たちが集まったのが、サグズ・オブ・エデンっていうパーティー。
そんな彼らの生き方に憧れて、救われたのがノルくんなんだよ。
ノルくんの中で、確かな核となる存在を真っ向から否定されたんだよ?
抱える思いが、どんどん膨れ上がっていく。
「危険なんか顧みないでダンジョンに行ったんだぞ!? ついこの前、酷い言葉をかけた奴を助けるために!!」
吐き出し、吼える。
ノルくんの言葉は、少しはみんなの心にも響いたんじゃないかな。
彼の言葉で、周りの人たちの空気が変わり始めていた。
「これじゃ、バドさんたちが浮かばれないって……!」
最後に、涙混じりにノルくんが告げた。
「やっぱり、なにもしないでジッとしてるなんて耐えられない。……行こう。コヤケさん、グラフィス」
振り返ることなく、ノルくんが先頭を歩いていく。
このとき、気がついていたのは私だけだったんじゃないかな。
セイマネが、悔しそうに顔を歪めていたことに。
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