第11話 もう1つの真実と…絶望?
「な…なんだって⁉」
僕は手紙の内容を見て、虚無感に襲われた。
父さんの手紙にはこう記されていた。
1.壁画や書物によると…? 何持たぬ民は、ジョブは得られずにスキルしか取得出来ない。
2.何持たぬ民は、スキルの取得が完遂出来れば長命だが、スキルの取得が完遂出来ないと短命で終わる。
3.スキルは身近な物から取得出来る…が、それは予め用意しておかなければならない。
4.何持たぬ民は、少量のスキルで簡易に取得出来る物しか選ばない。
だが、テッドが入っていたオーブの近くには、魔剣シーズニングしかなかった。
なのでもしかすると…テッドは魔剣シーズニングに影響される能力を持つのではないかと思う。
5.スキルの完遂とは、身近な物…テッドの場合は魔剣シーズニングかもしれないが、全てのスキルを取得しないと………で死に至る可能性がある。
「まてよ…? この話が本当だとすれば、魔剣シーズニングって…調味料鑑定・魔剣シーズニング!」
【魔剣シーズニング】
シーズニングとは調味料の事である。
この剣の所有者の覚えた調味料を刀身に変化して攻撃手段として戦う事が出来る。
封印を全て解除すると、人知を越えた力を手に出来る可能性もあるが…そこまで至った者はいない。
ちなみに、魔剣シーズニングに宿るスキルの数は………種類である。
僕は虚無感に加え、絶望感も感じていたのだった。
それを見ていたテスタおじさんは、僕に声を掛けた。
「どうした? おい、テッド!」
「テスタおじさんに聞きたいんだけど…人類が最高到達レベルって最高幾つだった?」
「なんだ? 急に突然…」
「良いから、答えて!」
テスタおじさんは腕を組んで考えていた。
そして答えが出て、僕に言った。
「過去の勇者とかのレベルまでは分からんが…人類で到達した最高レベルは、確か86だ!」
「あ…僕は死んだ………積みだ。」
「死ぬって…どういう事だ⁉」
「テスタおじさんも、父さんの手紙は読んだんだよね?」
「あぁ…」
「なら、スキルの完遂という欄も見たよね?」
「あぁ、見たが?」
「魔剣シーズニングを調べたら、スキルは全部でレベル100まであって、スキル数は全部で110種類必要なんだよ。」
「という事は、成人になるまでにレベル100にしないと死ぬって事か⁉」
どう考えても、到達出来るとは思えない。
人類がレベル86が最高なら、それ以上となると…?
魔王の幹部クラスを2人仕留めても、レベル50までしか上がらなかった。
仮に分配されていたからと考えても、1人でも大した量は望めない。
「今僕は12歳だから…残り3年半か。」
「テッド…もしもお前が本当に何持たぬ民なら…6の項目は読んだか?」
「6?」
僕は父さんの手紙の残りの項目を読んでみた。
【6.何持たぬ民の成人年齢は、およそ14歳とされている。】
「はぁ⁉ 14って…残り1年半しかないじゃないか⁉」
たった1年半で、もうレベル50を上げろって…ムリじゃん!
それに…これ以上の調味料ってあと何があるんだよ?
この街の店の調味料屋ですら僕の覚えた調味料は遥かに超えた数を覚えたというのに…
やばい…考えが纏まらない!
「ごめん…ちょっと出て来るね。」
僕はそう言って家を出ようとした。
だが、心配そうな顔をしたリットは言った。
「お兄ちゃん、私もそばに…」
「ごめん、1人で考えたいんだ。」
僕は夕方の街を当ても無く彷徨っていた。
各家庭の夕食の匂い、冒険者や近所のおじさん達が集い賑わう酒場、帰路を急ぐ者達…
僕はただそのまま歩いているしかなかった。
「どこか落ち着ける場所は無いものか…?」
僕は1人で考えられる静かな場所を探していた。
すると、神託の儀を受けた神殿の前を通った。
僕の祈りは神には届かない…だけど、祈る事くらいなら。
僕はそう思いながら神殿の扉を開けてから、女神像の前に進み…跪いてから祈りを捧げた。
「女神アルテナ様…僕はどうすれば良いでしょうか? 僕はスキル調味料を授かった時、貴女を心から憎みました。 ですが、それは全くの間違いだったことを先程知りました。」
僕が懸命に祈りを捧げていると、奥から神殿長が姿を現した。
「おや? 英雄殿…こんな時間に祈りですか?」
「あ、神殿長…僕はこれからどうしたら良いのかを祈っておりました。 ですが、やはり声は聞こえない物ですね。」
「何やら困り事のようですね? 私で良ければ聞きましょう。」
そして僕は神殿長と僕の経緯を話した。
「何持たぬ民ですか…彼らの種族は滅んだという話でしたが、テッド君はその生き残りだったのですね。」
「なので、これからどうしたら良いかを祈っていたのです。」
「うむ…? なら、こう考える事をお勧めしますよ。 どうしたら良いかを考えるのではなく、何をしたら良いかを考えるのです。」
「何をしたら良いか…ですか?」
神殿長は、奥の部屋から経典を取り出した。
その経典には、様々な事が書かれていた。
「テッド君に覚悟があるのなら…もしも生を望むのなら、各所に点在する魔獣の討伐をお勧めします。 魔王の配下を倒したテッド君なら恐らくは…それで人類未到達のレベル100を目指すのはどうですか? 簡単な道のりではありませんけどね。」
「では、死を望むとしたら?」
「死を望む…それは簡単な選択でしょう。 ですが、貴方が死んで残された者はどうしますか? 貴方には大切な人がいるでしょう?」
「はい…妹達やギルドマスターにライラさん、冒険者の仲間の皆とか…」
「なら、その者達の為にテッド君の生きた証を残してあげるのです。 妹達なら、将来を見据えた物とかを…」
「例えば、どんな物が良いでしょうか?」
神殿長は考えてから言った。
「それは…私にも解りません。 成人まで働かなくても余裕のある位の資金を残すとか、成人になる迄の間は信じられる者に妹達を任せる為の何かをする…とかでしょうか?」
「わかりました、もう少し考えてみますね。」
僕はそう言って、神殿の扉に手を掛けた。
すると、神殿長が微笑みながら言った。
「また困った事があれば、いつでも相談しに来てくださいね!」
僕はお礼を言ってから神殿を出た。
なのだが…まだ考えが纏まらなかった。
僕は街の出口を目指して歩いていた。
僕は街の門に着くと、出ようとした時に声を掛けられた。
「子供がこんな遅くに外には…これは、英雄様!」
「やはり、街の外には出られませんか?」
「貴方位のお子様なら止めるでしょうけど、英雄様なら問題ありません。 どうぞ、お通り下さい…」
僕は街の外に出ると、夜の草原を歩いていた。
とはいえ、外はもう暗かったので…ラードセイバーにトリガーを引いてからフレイムセイバーにして進んで行った。
そして以前、ルットとロットが初めて外に出た時にお弁当を広げた岩を見付けてから、油を垂らして火をつけて周囲を照らしたのだった。
「妹達に何かを残せるとしたら…やっぱりお金かな?」
妹達は素晴らしい上位ジョブを取得した。
だが、年齢的にはまだ子供の年齢だ。
そう考えると、成人までは戦いの世界では無く日常に身を置かせたい。
そして僕は、自分の死が遠くない未来に迫っている事を考えていると、自然と涙が出ていた。
「やっぱり…死にたくないなぁ。 でも…レベルを考えると?」
僕はそんな事を考えていると、空から声がしたのだった。
『魔剣シーズニングの所持者よ! よくも…我が主たる魔王ヴァルサリンガ様にキズを付け折ったなぁ⁉』
声の主は地上に降り立つと、物凄い地響きを立てて大地を震わした。
話が出来て、魔王を主というという事は…コイツも幹部の1人なんだろう。
見た目は…伝承に出て来る天災クラスの魔獣のベヒーモスだった。
「悪いけど…今は考え中で戦いたい気分じゃないんだ。 後日相手をしてやるから、今は帰れ!」
『どこまでも自分本位の身勝手な理由を…貴様がどうであろうと、知った事か‼』
ベヒーモスは闘牛みたく、前足を蹴ってから突進してきた。
「テクニカル…モード・マーベラス、カイエンデスソースセイバー!」
魔剣シーズニングに、マーベラス調味料のカイエンペッパーとデスソースを組み合わせた刀身を作った。
そして突進してくるベヒーモスを見ると、鼻の頭にある角に光るものを見て…近付いてから鼻の上に角を切り取ってから鼻を滅多切りにした。
ベヒーモスは、鼻を抑えて地面を転がりまわっていた。
「やはりこれが…宝石だったか。」
僕は大きな腕輪らしき中心から宝石を取り出すと、魔剣シーズニングに近付けた。
すると、4つ目の宝石がはめ込まれたのだった。
そして魔剣シーズニングから溢れ出す力を感じると、ベヒーモスに接近して行ってから百撃近くの傷を付けたのだった。
【封印の第二段階が解除されました。 構えて念じろ! アメージングセイバー!】
僕はアメージングセイバーを念じると、マーベラスの2種類は解除されて青い刀身に変わった。
だが、テクニカルの様に素早く動けるとかは無かったので、接近してから斬った。
すると、斬った場所から氷が広がって行ったのだった。
そしてあらゆるところを斬っていくと、ベヒーモスの体が首以外を全て氷に包まれて行った。
『う…動けん! 貴様…何をした⁉』
「さて、ここで問題です! 凍った場所に強い一撃を入れるとどうなるでしょうか?」
僕はミドルソードの峰でおもいっきり氷に衝撃を与えた、
すると体は砕け散ってから、頭が落ちてきて…地面におちた。
のだが、まるで地面が体化と言わんばかりに顔が上を向いていた。
「それにしても…魔王の幹部にしては弱いね? こんな子供に倒されるなんて…」
『ただのガキの貴様なら、ここまでの遅れは取らん! 貴様…シーズニングの封印を解いただろ?』
「そういえば、第二の封印がどうのって言っていたなぁ。」
『何ぃ⁉ あれで第二の封印解除なのか⁉ 貴様…一体何者だ⁉』
「何持たぬ民…の生き残りらしいよ。」
『人種の事は良く解らんが…まぁ、いい! 我の負けだ、トドメを刺せ‼』
「え? 何言ってんの?」
僕はアメージングセイバーを解除してから、デスソースセイバーに切り替えた。
「僕は気分じゃないって言ったのに、おたくから仕掛けてきて…敗れたからってトドメを刺せって…」
僕はカイエンペッパーをベヒーモスの両目に振り掛けた。
ベヒーモスは手足が無いので、もがいているしかなかった。
そして表面を切り刻んだが、穴はちゃんとある鼻の右側にマスタードを左側に山葵を突っ込んでから、口の中にデスソースを流し込んだ。
*危険ですので、絶対に人にはやらないで下さい!
「ほら、ごめんなさいは?」
『ゴボッビョボボビョボッボボッボッボ!』
「はぁ? 聞こえないよ?」
『グボォビョボブボスソ!』
ベヒーモスは、デスソースを口から噴き出した。
するとマーベラス調味料に新たなる炭酸水という物を覚えたので、口の中を満たした。
すぐに吐き出してから、ゴホゴホと咳き込んでいた。
*辛い物の後に炭酸の刺激がきついのはマジで死ぬのでやめましょう!
『き…キサ…マ! ふざけ…るな…よ!』
「おや? まだ喋れる元気があるのか? ならくたばる迄の間…全ての香辛料を試そう!」
僕はそう言ってから、山椒、花椒、ハバネロ、ジョロキア等を順に口の中に入れたり目に掛けたりした。
どの攻撃も悲鳴を上げながら叫んでいた。
そして最後の調味料を試そうと思った時、ベヒーモスは灰になっていった。
すると…レベルが70まで上がったのだった。
「ふむ…中々の経験値だったな。 これなら、魔王を倒せば100まで行くかな?」
僕は大きな腕輪らしき物をマジックバックに入れた。
だけど、魔王の幹部と魔王を倒したとして…100まで上がらなかったら?
僕は少し離れた場所にいるキングディライノスの巣に向かった。
そして朝まで掛かった戦いで、シーズニングの封印の第三段階が解除されて、キングディライノスを倒す事に成功した…のだが、レベルが10しか上がらなかった。
僕は頭をマジックバックに入れてから、冒険者ギルドに戻ったのだった。
「買取をお願いしたい…ってあれ? ライラさんは?」
「ライラ先輩はまだ出社していません。」
「では、アマンダさん査定をお願いします!」
僕は大きな腕輪とキングディライノスの頭をマジックバッグから取り出した。
「この大きな腕輪は、魔王軍の幹部の3人目のベヒーモスの…そういえば名前なんだっけ?…と、キングディライノスの頭です。 お願いします!」
「へ?」
すると、ギルドの奥から男性職員が3人出て来てキングディライノスの頭を調べ始めた。
キングディライノスも懸賞金が掛かった魔獣だった。
その額は…冒険者ギルドの資金では払えない程の量だった。
「間違いない…キングディライノスだ!」
「ギルマスはまだか⁉」
「はい、まだ来ておりません!」
「テッド君、査定の結果はギルマスが来てから行いますので、また後日来てくれませんか?」
「わかりました。」
そして僕は家に帰ると、妹達は一晩中起きていたみたいで…3人共泣きながら抱き付いてきた。
僕は3人を抱きしめてから、部屋に入ってベッドに横になった。
ギルドカードを確認していたが…途中で眠りに落ちていた。
そして…?
【条件が揃い…封印が解除されました。】
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